偏愛的プレミアリーグ見聞録

「フェラーリ10台、ダイヤモンドの時計20個、飛行機2機がなぜ必要なのか。世界に何をもたらすというのか。 私はハングリーだった。畑で働き、裸足でプレイした。学校には行けなかった。今の私は人々を助けることができる。貧しい人たちのために学校を建て、食べ物や服を届けるほうがいい」

2019年10月に、スペインメディア「アス」が紹介したサディオ・マネの言葉です。プレミアリーグ通算185試合80ゴール。2016年の夏に移籍したリヴァプールではプレミアリーグ118試合59ゴールという数字を残し、レジェンドになりつつある10番は、新型コロナウイルスに苦しむ母国の人々のために41000ポンド（約530万円）を寄付しました。「BBC」が配信した「Coronavirus: Sadio Mane makes donation to Senegal health」と題する記事によると、セネガルでは27人が罹患し、うち2人が回復したとのこと。「状況に応じて、自発的に寄付を行う」と代理人を通じて語ったマネは、SNSを通じて「少なくとも30秒かけて手を洗い、消毒してほしい」と呼びかけています。

サウサンプトンからリヴァプールにステップアップしたアタッカーが否定しているのは、高級車や時計ばかりではありません。「自ら進んでパーティーに行ったことはない。そんなことは考えないよ。サッカーにすべてを捧げなければ、何も達成できない」「プレーステーションは好きじゃない。やったことないね。時間のムダだろう。何の見返りもないのに。自分の力を浪費したくない」。持てる力と時間の大半をフットボールに振り向けているマネが、唯一大胆にお金を遣うのは、母国の貧しい仲間たちを幸せにするためのチャリティーです。

2018年5月、レアル・マドリードとチャンピオンズリーグ決勝を戦った際には、故郷のバンバリに300枚のユニフォームを送付。2019年にはモスク、スタジアム、学校などの建設を支援するべく、25万ポンド（約3200万円）を寄付しています。学校を建てるための寄付を行ったときは、「名前を売りたいわけじゃない」と自らのインタビュー記事にエピソードを載せられるのを拒否したそうです。「自分にできるのは、故郷を忘れないこと。彼らは支援を必要としている」。引退後には、病院の建設に私財を投じたいと考えているようです。

「この素晴らしいクラブの一員になれたのはとてもうれしい。できれば、永遠にここにいたい。いくつかのクラブでプレイしてきたけど、リヴァプールは特別。まるで家族みたいだね」。
「故郷のバンバリにいる人たちが、どれほど自分のモチベーションになっているかを説明するのは難しい。彼らはいつも背中を押してくれる。彼らが誇らしく感じられるようにするために、もっとがんばろうと思える。よくしてくれた人たちに、恩返ししたいんだ」

リヴァプールのレジェンドになりたい。故郷の人たちの誇りになりたい。クラブと母国への愛を語り続ける10番が、夏にスペインに渡る姿などイメージできません。私にとってサディオ・マネは、アンフィールドに詰めかけた熱狂的なファンが歌う「you’ll never walk alone」を聴きながら、スパイクを脱いでほしい4人のうちのひとりです。ジョーダン・ヘンダーソン、ヴィルジル・ファン・ダイク、トレント・アレクサンダー＝アーノルド…。ウイルスの猛威が鎮まり、プレミアリーグが再び始まったら、仲間とともにトロフィーを掲げるマネの姿を追いかけたいと思います。今、このとき、バンバリの人たちも彼がそこにいることを誇らしく思い、歓喜の声を挙げているのだろうと想像しながら。