偏愛的プレミアリーグ見聞録

ルーカス・トレイラ、セアド・コラシナツ、エインズリー・メートランド＝ナイルズ、エクトル・ベジェリン、リース・ネルソン、ルナル・アレックス・ルナルソン。残り6日となったトランスファーマーケットで、アーセナルは彼らの売却先を探していると報じられています。ピエール＝エメリク・オーバメヤンも、オファーがあれば移籍を容認するといわれており、アレクサンドル・ラカゼット、エディ・エンケティア、モハメド・エルネニーとの契約は残り1年。いずれもフリーで手離すわけにはいきません。

売却候補に関する記事を随時配信する「スカイスポーツ」に対して、「エクスプレス」は他にも放出が検討されている人物がいると主張しています。ミケル・アルテタ、そしてエドゥ。2年連続でプレミアリーグ8位となったクラブは、25年ぶりに欧州のステージに立つ資格を失っており、新たなキャンペーンでも最悪のスタートとなりました。スペイン人指揮官には、当然プレッシャーがかかっていますが、チーム強化を担うテクニカルディレクターは、現場のTOP以上に危機的な立場にあると報じられています。

トニー・バンクス記者がリリースした記事のタイトルは「Pressure rises on Arsenal chief Edu as Mark Overmars lined up as replacement（マルク・オーフェルマルスがが後釜候補として挙がっているため、アーセナルのチーフであるエドゥへのプレッシャーが高まっている）」。アーセナルを立て直すために必要となるグローバルな知識と人脈を持っていると称賛され、2年前にディレクターをまかされた41歳のブラジル人は、不振の元凶のひとりと見られているようです。

「エドゥの登場以来、アーセナルは3億ポンド以上を選手に費やしてきたが、肝心の回収額は8000万ポンドにすぎない」。売却が下手と指摘した記者は、1ポンドも残さずに出ていったタレントたちの名前を並べています。アレクシス・サンチェスとのスワップで加わったムヒタリアン、1770万ポンドで手に入れたパパスタソプーロス、バレンシアに3500万ポンドを支払ったムスタフィは、サラリーの負担を軽減しただけでした。

レアル・マドリードから4250万ポンドで買ったエジルは、7月まで給与の一部をもらっていたといわれています。コリンチャンスに移籍すると目されているウィリアンには、週給22万ポンドという高額サラリーを払い続けました。オリンピック・リヨンから4650万ポンドで連れてきたラカゼットは、新たな契約を結ばなければ10ヵ月後にはフリーエージェントです。

批判されているのは、売却の失敗だけではありません。補強についても、場当たり的という声が挙がっています。2年前に2700万ポンドで引き入れたウィリアム・サリバを1度もプレイさせないまま、5000万ポンドのベン・ホワイトを獲得。1700万ポンドで手離したエミリアーノ・マルティネスがヴィラで大活躍し、コパ・アメリカを制したアルゼンチン代表でゴールデングローブを受賞するのを横目で見ながら、2年連続でプレミアリーグからの降格を経験したラムズデールに2400万ポンドを投じています。

ウィリアム・サリバVSベン・ホワイト、エミリアーノ・マルティネスVSラムズデールで投票したら、前者に2票というグーナーも多いのではないでしょうか。4400万ポンドVS7400万ポンド。こちらについては、売買を担当したテクニカルディレクターだけでなく、可能性を秘めた選手にトライする機会を与えなかったアルテタ監督を非難する向きもあるでしょう。このうえは、夏に獲得した新戦力に誰もが納得するパフォーマンスを見せてもらうしかありません。

「エクスプレス」の記事は、エミレーツのビッグロンドンダービーで2-0完敗を喫したチェルシーとは、フットボールだけでなくクラブ運営においても大きなギャップがあると指摘しています。ロメウ・ルカクに9750万ポンドを投じたクラブは、1億ポンド以上の売却益を得ています。ローマ移籍のタミー・アブラハムが3400万ポンド、ACミランに行ったフィカヨ・トモリは2500万ポンド、クリスタル・パレスに売ったマーク・グエイが1800万ポンド。ジルー、ヴィクター・モーゼス、パンティッチも既に「Done Deal」です。

プレミアリーグの開幕節10試合のうち、チェルシー出身の選手がいなかったのは2試合のみだそうです。この夏放出した24人（ローン移籍含む）のうち、フリーで出ていったのはたったの4人。ジョー・ウィロックしか売れず、締め切り1週間前まで構想外の選手を大勢抱えているアーセナルは、クラブOBのポール・マーソンさんに「怠慢」と酷評されています。

マルク・オーフェルマルス、ラルフ・ラングニック、マイケル・エメナロ。「エクスプレス」「ミラー」など複数のメディアが後任候補の名を挙げているというのは、なかなかしびれる状況です。指揮官とTDが経営ボードの信頼とメディアの沈黙を得たければ、ひたすら勝ち続けるしかありません。日曜日はエティハドでマン・シティ、火曜日はいよいよデッドラインデー。崖っぷちに追い込まれた彼らにとっては、濃密な3日間となりそうです。