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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

ストライカーとウインガーは4戦連続ノーゴール…今のアーセナルに足りないのは9番?10番?

右サイドのユリエン・ティンバーがマズラウィと対峙したのは74分。縦にいくと見せかけたSBが切り返すと、ブルーノ・フェルナンデスが釣り出され、カゼミーロは下がりすぎていました。ニアでデクラン・ライスがフリー。ティンバーの優しいラストパスをダイレクトで叩いた一撃は、左のポストの内側に当たってネットを揺らしました。

7発圧勝のPSV戦があまりにも鮮烈だったため、ついつい忘れがちですが、アーセナルはプレミアリーグで257分の沈黙を強いられていました。レスター戦でトロサールのアーリークロスを押し込んだのは、本来は8番のミケル・メリノ。前線の選手のゴールシーンとなると、5週間前のマンチェスター・シティ戦のイーサン・ヌワネリまで遡ります。

つまりアーセナルのストライカーとウインガーは、レスター、ウェストハム、ノッティンガム・フェレスト、マンチェスター・ユナイテッドの4試合をノーゴールで過ごし、その惨状は今も続いているということになります。ヌワネリはカットインを警戒され、トロサールが入り込めるスペースはなく、スターリングの定位置はベンチです。

今のアーセナルの課題が前線だけではないということは、マン・ユナイテッド戦の後半に投入されたマルティネッリが証明しています。32分の出場でクロス成功は1本、チャンスクリエイトはゼロ。81分に右から放った強烈なシュートが、唯一の彼らしいプレイでした。引いた相手を崩せず、カウンターを喰らうシーンが増えているのは、新たな問題が発生しているからでしょう。

ひとつは「プレーメイカーの不在」、もうひとつは「不安定な左サイド」。この2つはリンクしています。単調なアタックに緩急や意外性をもたらす10番の役割は、本来ならマルティン・ウーデゴーアが担うべきでしょう。しかし最近の彼は、いわば「6.5番」で、セーフティなパスが中心のつなぎ役と化す時間が長くなっています。

その原因は、左サイドにあるのではないでしょうか。アルテタ監督の偽SBを最もうまくこなしていたのはジンチェンコで、彼がアンカーの脇で中盤に厚みをもたらすと、8番は後ろを気にしすぎずにプレイできていました。ジンチェンコがレギュラーから外されてしまったのは、背後を取られたりあっさり抜かれたりするシーンが多かったからで、戦術的な問題ではありませんでした。

しかし現在のカラフィオーリは、前線に飛び出していく姿が目立っています。これがうまくはまると、PSV戦のような破壊力を生み出すのですが、引いて対応されると、左サイドは相手のカウンターの起点となります。ハマーズ戦の失点は、自陣からドリブルで上がったワン=ビサカのクロスをボーウェンがダイビングヘッド。マン・ユナイテッド戦は、ガルナチョとマズラウィを何度もフリーにしていました。

左サイドが常時スクランブルで、トーマスへのサポートが足りなくなると、ウーデゴーアが下がりがちになります。後方でキープしたキャプテンが、ロドリやフラーフェンベルフのような前線を動かす鋭いパスを出さないのは、誰かに預けて自らが上がろうとするからです。右サイドで短いパスをやり取りするだけの時間が増えれば、10番は6.5番に堕してしまいます

ゴールが減ると、9番が批判の矢面に立つのが通例ですが、点取り屋がいればOKという簡単な話ではありません。クロップのリヴァプールで、センターにいたのは誰か。クリスティアーノ・ロナウドが復帰したマン・ユナイテッドは、マルシアルとラシュフォードが決めまくっていたときより強くなったのか。ペップのチームは、ハーランドが加わってもゴールは増えていません

もしかすると、今のアーセナルに足りないオプションは、偽SBとして攻守のバランスを取れる冨安健洋や、10番としてプレイできるスミス・ロウ、ファビオ・ヴィエイラなのかもしれません。いや、カラフィオーリを前線に走らせているのがアルテタ監督だとすれば、原点に立ち返って3‐2-4-1の強みを活かす戦い方を思い出したほうがいいでしょう。

ジェズスが長期離脱となった今、アーセナルの9番の強化には異論はありません。しかし獲得するべきは、純粋なフィニッシャーではなく、自在性があって周囲を動かせるイサクやギョケレスのようなタイプでしょう。そして、プレーメイカー。スビメンディの獲得が、ウーデゴーアを再生するためのプランでもあることを願ってやみません。中盤の3人を、全員6番にしないために。


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