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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

ヴェンゲル監督は続投か、退任か…厳しい状況に追い込まれたアーセナル、2016-17シーズン苦闘の足跡。

「自分の将来はわかっている。みなさんには近いうちにお知らせする」。プレミアリーグ20年めの指揮官の言葉を聞いて、「辞任」を連想した方が多いのではないでしょうか。直近のプレミアリーグ5戦で1勝4敗。これほど厳しい状況に追い込まれたのは、開幕3戦めにマンチェスター・ユナイテッドに8-2で敗れ、2勝1分4敗と出遅れた2011-12シーズン以来です。ヴェンゲル監督が続投意欲を失ったとすれば、サポーターの声と戦績が主な理由でしょう。「自分の存在がアーセナルのためにならない」と思えば、クラブ愛が強い名将は去るという結論を選ぶはずです。WBAに3-1で完敗した直後も、ヴェンゲル監督はこう語っていました。「われわれは今、この20年で1度も経験していない困難な時期を迎えている。私の去就より、敗戦が続いていることの方が重要。巻き返すのは大変だが、試合に集中しなければならない。しっかり回復させて、いい準備をしたい」。おっしゃるとおり、ここからの4位確保は、過去最高に難しいミッションとなりそうです。

昨季までのアーセナルは、ゴールという終着駅までの路線が、大きく2つありました。ひとつは、「エジル経由ジルー本線」。そして今ひとつは、「アレクシス本線」。ジルーがプレミアリーグ16ゴール、アレクシス・サンチェスが13ゴール、エジルが19アシストを積み重ねた攻撃陣は、優勝したレスターから7ゴールを奪って唯一のダブルを記録。2人のワールドクラスと勝負強いストライカーが、それぞれの持ち味を発揮することで攻撃の幅が生まれていました。年明けから2ヵ月の3勝3分3敗という停滞が響き、悲願のプレミアリーグ優勝には届かなかったものの、最後は10戦無敗でスパーズをかわして2位でシーズンを終えています。

今季はジルーが出遅れたものの、アレクシス・サンチェスを中央に置くゼロトップという新機軸が当たり、エジルとウォルコットがゴールを積み上げていた12月上旬までは、チェルシーと3差の2位をキープ。当時のチームを「プレミアリーグ最強クラブのひとつ」と表現しても、違和感はないでしょう。私は、今季こそヴェンゲル監督のチームはビッグタイトルに手が届くかもしれないと思っていました。エジル最後のゴールは15節のストーク戦、ウォルコットは17節のマン・シティ戦。フィニッシュのバリエーションを失ったチームは、それでもジルーが公式戦5戦連発と当たり始めた年末年始は持ちこたえておりましたが、ストライカーが負傷がちになり、プレーメイカーが体調を崩した1月末以降、エジル路線は運転休止。ゴールへのチケットを買えるのは「アレクシス経由あるいはアレクシス本線」のみと7番への依存度が急速に高まります。

エジル、ジルーと自身の3つの軸が均衡を保ち、相互に機能していたときはポジティブだったアレクシス・サンチェスは、周囲が思うように動かないことに不満を露わにするようになり、チームは完全に失速しました。FAカップでは3戦5ゴールと絶好調のウォルコットは、なぜかプレミアリーグでは不発。年明けに復帰したウェルベックは、未だ完調とはいえません。ジャカの出場停止、ラムジーやエルネニーの負傷などが重なったアーセナルは、攻守とも不安を抱えたままバイエルン戦に突入。2戦とも後半にコシールニーがいなくなり、終盤に集中力を切らして1-5、1-5で敗退しました。サポーターがヴェンゲル退任を求めるプラカードを掲げ始めてからは、ノンリーグのサットンとリンカーンにしか勝っておりません。

アーセナルが勝てなくなった理由として、主力の不振・不在以外で見逃せないのは、「ゲームプランの崩壊」です。ワトフォード戦は20分にラムジーが消え、チェルシー戦は17分にベジェリン。バイエルン戦はコシールニー、コシールニー、リヴァプール戦の前半はアレクシス・サンチェスを使わず、WBA戦はチェフとアレクシス。元々、選手交代で課題解決するのが得意とはいえないヴェンゲル監督は、トラブルで戦術変更を余儀なくされる試合を続けています。シーズン後半戦でプレミアリーグ6位に留まっているのも、これだけのアクシデントがこの時期に集中するのも、初めてではないでしょうか。次戦、プレミアリーグ30節のマンチェスター・シティ戦にエミレーツで敗れれば、3位の背中は見えなくなります。

ここまで、今季のアーセナルの足跡を辿ってまいりましたが、ヴェンゲル監督はどんな将来を明言するのでしょうか。「ユーヴェのアッレグリ監督と合意」「ドルトムントのトゥヘル監督に就任要請」という話が出ている一方で、「ザ・サン」は「土曜日に対戦したWBAのピューリス監督が、本人から続投と聞いたとコメントした」と報じています。続投発表ならサポーターの抗議は過熱必至。一方、シーズン中に監督が辞任発表したり、その噂が流れたりすると、ペジェグリーニさんやレドナップさんのチームのように調子を落とすケースが多いのも事実です。去るも地獄、残るも地獄。アーセナルが今季もプレミアリーグ4位をキープすると予想できる根拠はなかなか見つかりません。あるとすれば、「EL重視のマンチェスター・ユナイテッドがアウェイの上位対決を3つ残している」「リヴァプールが”苦手の”下位との対戦だけになった」、そしてもうひとつは「それでも勝ってきたのがアーセン・ヴェンゲル」…3つめが、いちばん説得力が高い気もします。

せめて気持ちだけは負けない、続投でもひとたび決まったらエミレーツが応援モード一色となる…来季もチャンピオンズリーグに出場するためには、戦術戦力云々もさることながら、選手とサポーターがポジティブな気持ちで戦うことが最も重要なのではないでしょうか。私は、「アッレグリなど適切な後任を招聘できると決まったうえでなら、ヴェンゲル退任がベター。ただし心情的には、ボスはプレミアリーグかチャンピオンズリーグを勝って勇退してほしい」と考えており、「心折れて辞任」「CLを逃して退任」という結末だけは見ないですむよう祈っております。20年、素晴らしいサッカーを披露し続け、他クラブがうらやむアーセナルのカラーを創ってきた指揮官の最後として、あまりにも悲しい結末だけは。

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“ヴェンゲル監督は続投か、退任か…厳しい状況に追い込まれたアーセナル、2016-17シーズン苦闘の足跡。” への4件のフィードバック

  1. むん より:

    更新ご苦労様です。

    最近は公私共にバタバタしておりなかなかアーセナルの試合が見れなかったのですが、久しぶりに見たWBA戦を生で見ました。が、とにかく球離れの悪さと横パスの多さが目につき、パスの精度も低い。攻撃の合図となる縦に刺さるパスが出ないし、出ても前の選手が収められない。

    全体的なスキルのクオリティ低下に加え、気持ちも入ってない(ように見えました)ようでは今のプレミアは勝てないですよね。

    ウォルコット、ギブス、ラムジー、ウィルシャー、チェンバレンの伸び悩みに加え、ウェルベックの長期離脱。ブリティッシュコアの大誤算が、今のヴェンゲル監督を悩ませている気がします。

    サンチェスとエジルの去就も気になりますが、コシェルニー、ジルー、モンレアル、それからカソルラ、この4人がピークを完全に過ぎてしまう前に、何とか後継を育ててもらいたい。今、私から願うのはそれかなと思います。「チーム崩壊」だけは見たくないです。

    失礼しました。

  2. だしまる より:

    更新&考察お疲れ様です。

    すみません、超長文になってしまいました。<(_ _)>

    プレミアの優勝争いがほぼ固まった今、最もホットな話題がこれですね。
    ベンゲル監督好きな私としては、サポーターが目の前の勝利や今シーズンの目標よりも、
    この話題に注力しているのがとてもつらいです。

    理想的な事を言わせてもらえば、もう一年続投していただいた上での退任をお願いしたいところです。

    ベンゲル監督の功績&サポーターの不満が高まる一方なのは、十二分に理解できます。

    セスク・ペルシ他、ヤングガナーズの崩壊時は、次々に現れる若手戦の将来&スタジアム建築という言い訳がありました。
    しかし、ブリティッシュ・コアの伸び悩みと毎年のように同じ成績を繰り返す近年に愛想を尽かすサポーターの気持ちは十二分に理解できます。
    プレミア&CLは、シーズン最後まで優勝争いに加わった年は、シナプスの切れかけた私の脳細胞には酷な程、昔。

    経営としては良くても、歓喜や絶望というジェットコースター・カタルシスという非日常を体験できません。
    常に85点の監督ではなく、20点や40点の年があってもいいから、100点を取ってくれる監督カモンと要望したくなります。

    とはいえ、ここまでの功績と実績を残した監督です。
    ならば、アーセナルでのラストイヤーを宣言し、退路を断った上での一年を過ごして頂きたい。
    その結果が惨敗であろうと、優勝に手を掛けながらの敗戦であろうとドラマを見せられると思います。

    ワールドカップを最後に現役引退したジネディーヌ・ジダンの美しくも悲しい物語のように。
    あのワールドカップの主役は優勝したイタリアではなく、ジダンでした。
    彼自身はゲームに敗れることなく、真っ赤な眼をしたまま、カップの横を通り過ぎていきましたね。

    最後にもう一つ言うならば、1選手がクラブを超える存在になってはならない。
    この言葉を少し変えると、1監督がクラブを超える存在と化したのがアーセナルのベンゲル監督。
    アレックス・ファーガソン監督は、それ以前から多くのエピソード・レジェンドに恵まれていたクラブであり、
    ベンゲル監督程、クラブ=監督ではなかったのではないかと考えています。

    ところが、アーセナルの場合は、ベンゲル監督以前と以後で全く違います。
    伝説(最強)のチームや選手を選べば、ほとんどがベンゲル監督以後になってしまうでしょう。

    ここまでの存在になってしまったがゆえに、退任後のクラブがどうなるか心配です。
    大株主も二人いるだけに、権力争いが勃発するリスクもあります。

    様々な意見があると思いますし、それぞれの意見をリスペクトした上で、
    私の希望は、早期のラストイヤー発表です。

    できれば、最後のシーズンは、CLにも挑戦してもらいたい。そのためには残り試合を大事にして4位以上の確保です。

  3. 朱大砲 より:

    大半のグーナーはわかってたと思いますけどね、勝負は二月だ、と。
    シーズン前半好調のことはこれまでもあれど、いつもそこを乗り越えられない。
    やはり今年もまた起きてしまった。それだけの話。

    シティ、スパーズ、ユナイテッドとの戦いぶりを見るまで待とうと思っていたら、その前のWBAにあっさり負けるとは…。
    それでも勝ってきたのがアーセナル…ですから、残りのリーグ戦無敗で終えるようならベンゲル一年続投にも納得ですかね。
    とりあえず代表ウィーク明けのシティ戦で立て直してこれるのか。ベテラン監督の流石の手腕を見たいところですが、嫌な予感しかしない…。

  4. makoto より:

    むんさん>
    気持ちの問題が大きそうですね。ラムジーとウィルシャーが、特に誤算だったのではないかと思います。一時器、よかっただけに。

    だしまるさん>
    ラストイヤー発表は、選手もサポーターも盛り上がりそうですね。最近の停滞は、メンタルの問題が大きそうなので、選手たちがボスを勝たせようとなれば、今までになかったような力が働く可能性があると思います。CL出場権は必須ですね。

    朱大砲さん>
    チェルシーが独走態勢に入って12月末に既に勝ち点9差をつけられてますので、その頃、多くの方が「勝負は今だ」と認識していたと思われます。2月というのは、どういう意味でしょうか。混戦のシーズンとそうではないシーズンでは違うので、「いつも」とおっしゃる中身がわからず…。マラソンの30キロのように、一般的に「後半戦が半分終わったぐらいからが勝負どころ」というような意味なら、マンチェスター・ユナイテッドファンも2月はがんばらなきゃねと思ってます。

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