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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

プレミアリーグ重視か、欧州か…ELシフトは時期尚早と語ったヴェンゲル監督に感じる不安。

「アーセナルは既にヨーロッパリーグを優先しなければならない状況にいる。マンチェスター・ユナイテッドが昨シーズンそうしたように。彼らはよい前例だ。ヨーロッパリーグを制してチャンピオンズリーグの出場権を獲得した。重要なトロフィーであり、チャンピオンズリーグ出場権を得る最後のチャンスだ。プレミアリーグの順位テーブルを見ると、TOP4フィニッシュは難しいといわざるをえない」(ロベール・ピレス)。

レジェンドの意見は、一理あります。残り11試合となった現在、プレミアリーグ3位のリヴァプールとのギャップは9ポイントとなっており、4位のチェルシーと8差、5位トッテナムとは7差。3者のうち2つが崩れてくれるという都合のいいシナリオにはリアリティは感じられず、3月1日に控えているエミレーツのマンチェスター・シティ戦を落とせば、通常ルートからのCL出場権獲得は実質的にジ・エンドとなる可能性すらあります。しかし、同郷のOBの言葉に対して、アーセン・ヴェンゲル監督は同調しませんでした。

「彼(=モウリーニョ監督)がそうしたのは、終盤戦になってから。ヨーロッパリーグで準決勝に進出した後だ。まだ、そんな時期ではない。プレミアリーグに集中しなければならない」「ヨーロッパ・リーグはわれわれのプライオリティのひとつだけど、長い道のりがある。まずは明日を乗り切り、その後で何を得られるかを見極めなければならない。いずれそこにフォーカスするかもしれないが、プレミアリーグによってチャンピオンズリーグ復帰を果たすのが理想だ」

シフトチェンジは時期尚早というわけですが、大丈夫でしょうか。ちなみに昨季のモウリーニョ監督も、FAカップ準々決勝のチェルシー戦の前までは「プレミアリーグで4位以内をめざしており、ヨーロッパリーグもある」と、そこはかとなく国内優先というニュアンスではありました。「ヨーロッパリーグのタイトルを獲りたい。チャンピオンズリーグに出場できるし、名誉とUEFAスーパーカップの出場権まで得られる」と欧州のプライオリティを上げたのは3月中旬以降で、FAカップを落とした後です。このとき、4位リヴァプールと勝ち点4差ながら消化試合が2試合少なく、翌シーズンのCLのチケットに手が届きそうだったマンチェスター・ユナイテッドは、その後の7試合を3勝4分と勝ち点を伸ばせず、5月にアーセナルに完敗。モウリーニョ監督が、ELへの完全シフトを表明したのはこのタイミングでした。

早い時期にELシフトなどというメッセージを発信すれば、プレミアリーグに対するモチベーションが下がり、後々勝ちたくなるであろうELにまで悪影響が出かねない。ヴェンゲル監督は、そんなふうに考えているのではないかと想像します。マネージャーとしてのスタンスは理解しつつも、私が懸念を抱いているのは、ヴェンゲル監督のプレミアリーグ重視の姿勢ではなく、「ヨーロッパリーグを獲るといわないこと」です。

昨季のモウリーニョ監督は、「当初はELを要らないといっていたのに、プレミアリーグ4位以内が危なくなると宗旨替えした」と揶揄されましたが、これはマスコミの意地悪です。マンチェスター・ユナイテッドの指揮官が、9月に「ELはわれわれにふさわしくない」と発言したのは事実ですが、その後にこう続けています。「しかし、これが現実だ。大会に敬意を表して戦う。優勝をめざす」。プレミアリーグ、EFLカップ、FAカップですべて勝ち残っていた時期も、モウリーニョ監督はすべて獲りにいくという姿勢を崩しませんでした。翻って今季のヴェンゲル監督は、ヨーロッパリーグを勝とうとしているようには見えません。

ラウンド32のエステルスンドには、勝つでしょう。心配なのは、ラウンド16と準々決勝です。早期に難敵とぶつかるドローとなったとき、ヴェンゲル監督は選手のモチベーションを一気に高めることができるでしょうか。セリエAでユーヴェと優勝争いを続けているナポリは、CLでグループステージ突破を果たせなかった落胆と国内重視の姿勢をそのまま試合に乗せてしまったかのように、本拠地スタディオ・サンパオロでライプツィヒに1-3で敗れました。グループステージでブンデスリーガ最下位のケルンに1-0であっさり負けたアーセナルが、次のラウンドで同じ轍を踏むのではないかと心配しているのです。

ナポリだけでなく、オーバメヤンを失ったドルトムントもホームでアタランタに3-2と苦戦。イタリアやドイツの難敵が消えてくれれば、アーセナルの視界は一気に開けます。最も手強いのはアトレティコ・マドリードですが、ラ・リーガでバルサをひっくり返せる可能性があるうちに当たれば、本気度の違いで上回ることができるかもしれません。厳しいシーズンを過ごしているヴェンゲル監督には、EL優勝という大きな果実を手に入れていただきたいと思っています。それがビッグイヤーでなくても、決勝戦の厳かな雰囲気と欧州戴冠という恍惚感は、選手にとってもサポーターにとっても格別です。モウリーニョ監督が、ELを勝つといい続けてくれて本当によかった…冴えないセヴィージャ戦を観ながら、私はあらためて実感しています。

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“プレミアリーグ重視か、欧州か…ELシフトは時期尚早と語ったヴェンゲル監督に感じる不安。” への3件のフィードバック

  1. めるてぃ より:

    今シーズンは夏、冬の補強どちらでも中盤の選手を獲得せず、前線の入れ替えに終わりました。来シーズンの補強でアーセナルに足りないワールドクラスのボランチを獲るにはCL出場権は間違いなく必要です。しかしELに徹したからといってELを獲れるとも思えません。昨季のモウリーニョはモウリーニョだからこそできたことで、ヴェンゲルがそんな器用なことが出来るとはどうしても思えないんですよね。純粋に戦力的にもチームの成熟度的にも明らかに低いことを考えると、なんでもないところにコロっと負けそうで…
    とにかくファンとしては勝つことを願うしかないです。もしELを獲れたらヴェンゲル退任のいいきっかけになりますしね。

  2. stotina より:

    更新おつかれさまです。

    以前も書いたかもですが、クラブや選手の成長・成熟にとっての「タイトルを獲ることの価値」を、ヴェンゲルさんは低く見積もりすぎているように感じています。
    次の試合にフォーカスする視点、中長期的にクラブを発展させる視点については非常に感じるのですが、その両者を架橋する「シーズンでの成功」を求める視点がほとんど欠落している(ように見える)ことは、正直不満です。
    ヴェンゲルさん一流の「美しき攻撃サッカー」というロマン主義は支持したいのですが、ロマンも勝者を目指す中でしか達成できないのではないでしょうか。
    今シーズン、そのロマンもすっかりなりを潜めてしまっているのが心配ですが、思い切って欧州のタイトルに舵を切って、クラブに勢いをつけてほしいところです。

  3. ミィ より:

    ラカゼットは手術をして離脱中、オーバメヤンはELでは起用できない、EL優勝という大きな果実をもぎ取るには腕力も足らなそうです。

    本命はアトレティコですが、ライプツィヒが優勝しそうな気がします。

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