イングランドのプレミアリーグ(ときどきチャンピオンズリーグ)専門ブログ。マンチェスター・ユナイテッド、アーセナル、リヴァプールetc.

偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

思い残すことはないのだと信じたい…アーセン・ヴェンゲル監督の退任発表に寄せて。

「エミレーツに行っておいたほうがいい。きっとボスは最後だから」。相方のグーナーに強く勧め、プレミアリーグのチケットの手配とエアの予約が完了したのは、数日前のことです。アーセン・ヴェンゲル監督に、来季はない。そんな確信めいた気分が芽生えたのは、ピエール・エメリク・オーバメヤン獲得の報に触れたときでした。プレミアリーグ6位と苦しいシーズンを過ごしているとはいえ、冬のトランスファーマーケットの存在に疑義を呈していたガナーズの指揮官が、この時期に大物ストライカーに大枚をはたくなどということは考えられません。2017年12月に、スヴェン・ミスリンタート氏がスカウト部門の責任者に就任したと聞いて、潮目が変わったと感じていたのですが、1月の補強はクラブの体制の変化を明確に物語っているように思えました。

マーケットの最終日には、オリヴィエ・ジルーがチェルシーに移籍。これもまた、抱えている選手を大事にする老将のジャッジではないはずです。自らの意志でチーム作りを進められなくなったとき、ヴェンゲル監督がどんな決断を下すかは容易に想像できます。2月に入ると、名古屋グランパス時代から応援し続けてきた稀代のマネージャーを描くのに時間がかかるようになりました。「ヴェンゲル監督は、どこで間違えたのか…アーセナルの停滞への軌跡を辿る」「『時が経てば理解される』…未来が感じられないアーセン・ヴェンゲルの重い言葉」。取り上げるテーマも、今までになかった陰鬱なものが増えていきました。

2018年4月20日、アーセン・ヴェンゲル監督が、22年という長きに渡って指揮を執ったアーセナルを今季限りで退任すると発表しました。プレミアリーグ823試合、473勝199分151敗。イングランドサッカーの改革の旗手ともてはやされた豊穣の10年、エミレーツの建設費の返済が重くのしかかり、チェルシーやマンチェスター・シティに先を越された苦闘の12年。3回のプレミアリーグ制覇とチャンピオンズリーグ準優勝は、すべて2006年までの古き良き時代に集中しており、晩年はFAカップを制するのが精一杯でした。

最も悔やまれるのは、夏にチェフしか獲らず、レスターに屈してプレミアリーグ2位に終わった2015-16シーズンです。カソルラ、ウィルシャー、アルテタ、ロシツキを長期間失いながら、2月まで優勝を争っていたこのシーズンは、何が何でも勝たなければならなかったのだと思います。マンチェスター・シティが強くなってからのヴェンゲル監督は、「大金を使わなくても勝てる」と証明しようとしているかのようでしたが、明快なコンセプト、継続性、一貫性をもってビッグクラブを沈黙させたのはクラウディオ・ラニエリでした。この年、ヴェンゲル監督が4度めのビッグタイトルを手にしていれば、直近2年の停滞はなかったのではないでしょうか。ウェルベックの劇的なゴールでレスターに競り勝った瞬間の高揚感と、その後の落胆は、今も昨日のことのように蘇ってきます。

「議論を重ねた結果、今季限りで身を引くべきだと感じました。長い間、クラブに奉仕する特権を得られたことに感謝しています。あらゆるコミットメントと誠実さをもって、このクラブを率いてきました。アーセナルを愛するすべてのみなさん、クラブの価値を大事にしていってください」(アーセン・ヴェンゲル)

しばらくの間、この日をどんな気分で迎えるのだろうと想像していました。心の準備はできていたはずなのですが、思いもしなかった喪失感のようなものがこみ上げてきます。アーセン・ヴェンゲルはやりきったのだ、思い残すことはないのだと信じたい…。欧州制覇の夢を追うアトレティコ・マドリードとの決戦は26日、数々の名シーンが浮かんでくるマンチェスター・ユナイテッドとの最後のプレミアリーグは29日です。われわれプレミアリーグファンを、22年も楽しませてくれた素晴らしい指揮官に感謝の意を表すのは、最後の試合を終えてからにしましょう。5月16日、パルク・オリンピック・リヨンで、はにかんだガッツポーズが観られることを信じて。

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“思い残すことはないのだと信じたい…アーセン・ヴェンゲル監督の退任発表に寄せて。” への11件のフィードバック

  1. トマシュ より:

    ボス、お疲れ様でした。
    そしてありがとうございました。
    本当に寂しくなります。

  2. GSM より:

    残り数試合になりましたが、しっかりと目に焼き付けていきたいですね!

    ぜひ有終の美を飾って欲しいです!!!
    ヴェンゲルの笑顔が観たいです!!!

  3. プレミアリーグ大好き! より:

    ボスとアーセナルの22年間に、心からの敬意と謝辞を。

  4. ヤンガナ大好き! より:

    遂にこの時が来てしまいました。書きたいことは沢山ありますが、今はボスの勇姿を目に焼き付けたいので、ELのアトレティコ戦、魂のフットボールでボスのこれまでの功績に応えて欲しいです!本当にありがとうございます、ベンゲルさん!

  5. Macki より:

    更新ご苦労様です。
    ついに来ましたね。「クラブに価値を大事にしてください」重い言葉ですね。ELの戴冠を掲げてほしいと思います。

  6. stotina より:

    いつか来る時であったのですが、いざ来てみるとこみ上げてくるものがありますね…

    ベンゲル監督にいろいろ言いたいことはありますが、選手には一言「ELは何が何でもとれ!ボスを漢にしろ!」です。ベンゲル監督が勇退と言われるかどうかはELを制覇にかかっています。

    できれば、EL制覇のスタメンにウィルシェアやラムジー、ベジェリン、コシェルニー、イオビといったベンゲル監督が見いだした選手達が並んでいてほしいです。

    —–
    更新おつかれさまです。

    昨季、今季は、率直に言えば、「ボスのアーセナル」の限界を感じることの多いシーズンでした。
    今季はとくに、「このまま来季に臨めばクラブの競争力が大きく落ちるのでは…」と懸念することが増えました。

    戦術面はもとより、戦略面でも限界を感じつつある一方で、私は契約が残っている以上ボスの続投を一貫して支持する、という屈折したファンでありました。
    ボスは現行の契約を全うするであろう、それはクラブにとって問題をもたらすかもしれない、でもラストチャンスに華麗に変化してほしいと思っていました。というか、思いたかったのでしょう。
    これは、いわゆる「信者」と揶揄される類の姿勢なのでしょうが、やはりボスこそがまごうことなき「special one」です。
    ボスの決断の報を受け、改めてその思いを強くしております。

    「はにかんだガッツポーズ」、見たいですね。

  7. デリック より:

    アーセナルが立ち直るには解任しかないと思ってました。ただ、いざ退任となると寂しくてしょうがないですね。今できる最高の終わり方をしてほしいです。

  8. だしまる より:

    ベンゲル監督。ありがとうございました。

    イングランドの古豪だったクラブを世界で有数のビッグクラブに育て、
    生活習慣を改善し、幾多の選手を育て上げた功績は大。

    それだけに、ベンゲルアウトをアピールされると、
    我が事のように心が痛みました。ベンゲル監督の心中、選手たちの心中。
    そして、それを掲げるサポーターの心中・・全てが痛かった。

    それぞれ、愛するゆえの苦しみや憎しみ

    その中で、最後まで、ベンゲル監督は、成績が落ちても、空席が目立っても、
    ベンゲルアウトのキャンペーンが起きても

    私が責任を取るという立場を崩さずに、主導権を取り続けましたね。
    なかなか出来ることではありません。

    確かに、ミスリンタート氏の就任は、ベンゲル後を見据えた複数合議後継体制だったのでしょう。

    彼の知性を重視した監督スタイルこそ、ペップ、モウリーニョそして流行しはじめたラップトップ監督の魁でした

    愛と感謝を込めて、さよなら・・・ミスターベンゲル・・・そして、5月16日・・・獲ろうぜ!

  9. タムコップ より:

    レスターに負けずに優勝出来てれば後年の失敗のイメージを払拭出来たのに…本当に悔やまれます。

    美しいパスワークから点をとるという見ていて楽しくそれでいて強いチームというイメージを植え付ける事に成功し、タイトルという目に見える功績を挙げた前期

    後期はスタジアム建設費の借金返済の中で選手をやりくりしなければならなかったタイミングにオイルマネーの参入が重なった事が痛過ぎました

    後期は目に見えない部分での評価の話になりますが、スタジアムを建設する厳しい期間、クラブの格を守り続けた事が再評価される日を願っています。

    —–
    昨日もコメントさせてもらったのですが、退任発表から1日経つ中で振り返りながら、あらためてヴェンゲルという稀代の名将によって築かれた「アーセナル」というクラブの未来的なブランド力、プレミアリーグが世界規模で、特にこの日本での認知度が爆発的に広まったことを再認識させられました。
    レッズファンなのでもちろん他チームに負けてほしくないのですが、「ヴェンゲル=アーセナル」に敗れた時は、なぜか潔く敗戦を受け入れられた唯一のチームでした。
    と同時に、グーナーの方々をちょっと羨ましいなと感じさせられることもしばしばありました。
    確かに近年のアーセナルには往時の迫力は感じられなくなりましたが、それでも対戦するとなると1人のフットボールファンとして観たくなる相手でした。

    このタイミングでのアナウンスは諸事情あるでしょうが、個人的には、ヴェンゲルがグーナーの皆さん、そしてクラブと選手に対して残された最後のタイトル〜ヴェンゲル体制下初のヨーロッパタイトルを勝ち取る為の最後の激でもあり、最後に見せてくれた一軍の将としての褪せない野心表明だと受け止めてます。

    ヴェンゲル、アーセナル、EL勝ってくれ!!!

  10. Motsuki909 より:

    ライバルチームの監督ですが、尊敬の念でいっぱいです。EL制覇、全力で応援したいと思います。ヴェンゲル監督と全てのガナーズサポーターが、気持ち良く今季を終えられる事を心から願っています。

  11. makoto より:

    みなさま>
    それぞれのご意見に、共感しながら読ませていただきました。ありがとうございます。特別な監督が特別なチームを離れるという、特別なことが起こったのだなとあらためて思いました。2日経って、むしろ寂しさが募っています。現在のプレミアリーグのおもしろさは、ヴェンゲル監督あってこそというところが多く、強みと弱点がわかりやすく共存する愛すべき指揮官でもありました。

    残り8試合です。今日の試合も、精一杯応援しようと思います。

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