「フットボールの世界に残ってほしい」…アーセン・ヴェンゲルをリスペクトするモウリーニョの言葉。
「もし彼が今回の決断に納得し、人生の次章を楽しみにしているのなら、私もうれしい。彼が悲しみを感じているなら、私も悲しく思う」。トッテナムと戦うFAカップ準決勝前日のプレスカンファレンスに出席したモウリーニョ監督は、去りゆく指揮官の足跡の素晴らしさを率直に称賛。「彼の功績は、プレミアリーグ優勝3回、FAカップ優勝7回に留まらない。日本とフランスでも成功している。クラブの転換期とスタジアム移転が重なり、アーセナルがプレミアリーグで優勝を逃し続けた時期も含めて、すべてが功績だ」。ヴェンゲル監督との間で過去に起こったことのなかで、後悔していることはあるかという意地の悪い質問に対しても、時折言葉を探しながら丁寧に返していました。
「その質問は、われわれと同じサイドにいない人間のものだ。監督でも選手でもなければ、われわれがお互いをリスペクトし合っていることを理解できない」「選手は攻撃的な行動や暴言によってイエローカードやレッドカードをもらうが、監督も同じだ。そんななかで、問題を抱えていたような間柄の方が、最終的にはリスペクトし合えると思う」「パワー、クオリティ、野心のぶつかり合いだが、同じ世界の人間同士はキャリアを尊重し合うものだ」
過去のことには拘泥しない、ヴェンゲル監督を尊敬していると語った指揮官の言葉を聞いて、私は11ヵ月前の彼のコメントを思い出しました。エミレーツに「Wenger OUT」のプラカードが舞う苦難のシーズン。4試合を残していたアーセナルはプレミアリーグ6位で、全勝しても4位に届くかどうかわからない厳しいポジション。ヴェンゲル監督の契約更新が注目され、解任を噂するメディアが後を絶たないなかで、モウリーニョ監督は敢然とライバルをリスペクトし、アーセナルにいてほしいと語りました。
「正直にいえば、アーセン・ヴェンゲルがアーセナルで仕事を続けてくれることを望んでいる。 クラブが彼を信頼して、よくなっていければ、と。 おそらくアーセンは、”長きに渡ってクラブに一貫性をもたらした監督”の最後の例になるだろう。サー・アレックス・ファーガソンはマンチェスター・ユナイテッドでそれをやってきた。彼は離れるべき時が来たと感じて、クラブを離れた。アーセン・ヴェンゲルも同じようになってほしいと思う」 (2017年5月9日「偏愛的プレミアリーグ見聞録」より 翻訳は筆者)
マンチェスター・ユナイテッドを率いるクレバーな指揮官は、ヴェンゲル監督が去る日がそう遠くないことを予感していたのでしょう。彼が望んだように、退任を発表した功労者は自らの意志で決断したのでしょうか。1月には契約を全うすると語り、エジルの新契約締結に満面の笑みを浮かべていたヴェンゲル監督が、ヨーロッパリーグが終わる前に発表に踏み切った背景が気になります。終始顔を曇らせて記者の質問に応えていたモウリーニョさんの胸に去来していたのは、契約を1年残しながら舞台を降りる同業者に寄り添うような「悲しみ」だったのかもしれません。
ありがとう、ジョゼ・モウリーニョ。思わずそんな言葉が、脳裏に浮かびました。彼の顔を見ていると、「ひとつの時代が終わるのだな」という懐かしさにも諦めにも似た気分が押し寄せてきます。オールド・トラフォードでの最後のゲームを終えた瞬間、2人がどんな表情と仕草でお互いを称え合うのか、しっかり見届けようと思います。
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初めてコメントさせていただきます。
いつも楽しく興味深く読ませていただいています。
アーセナルファンです。
今回の記事は、途中で切なくなりまだ全文読めていません。あれだけやりあってきたモウリーニョの言葉、胸にはしみます。
ヴェンゲル退任はこの成績では当然と思っていましたが、現実になると受け止めるのが難しいですね。
更新ありがとうございます。
鎬を削ってきたモウリーニョからの言葉は重いですね。読んでいて涙が溢れてきました。