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グーナーが行った!ELプレミアリーグ対決inバクー現地観戦レポート【決戦前夜編】

なぜバクー!?と叫びたくなるような組み合わせとなったヨーロッパリーグファイナル。アーセナルのエミレーツスタジアムと、チェルシーの本拠地スタンフォード・ブリッジは14kmしか離れていないのに…。とはいえ、プレミアリーグのクラブが欧州のビッグタイトルを争う機会などそうそうあるわけではなく、しかもそれがビッグロンドンダービーとなれば、サポーターの血は騒ぐものです。相方のグーナーが、無理やりスケジュールをこじ開けてバクーに行ってまいりました。現地観戦レポート、さっそくスタートです!

「ヨーロッパリーグのアウェイは魅力的」ということに気づいたのは、アーセナルがヨーロッパリーグに回ってしばらくしてからのことでした。ベラルーシ、スウェーデン(の北極圏)、セルビア……チャンピオンズリーグの行き先と違って、なかなか行けない、というかわざわざ行かない旅先ぞろい。だから、今季の決勝がバクーと聞いたときから、「これは行きたい」とどこかで思っていたのです。ましてやアーセナルの初めてのヨーロッパ制覇の瞬間が観られるなんて!(と、行く前は完全に思っていました……)

アゼルバイジャンの首都、バクー。カスピ海の西岸のいわゆる「カフカス」とか「コーカサス」とか呼ばれる地域にあり、30年前にはソヴィエト連邦の一部で、地理の教科書には石油の産地として載っている街です。UEFAには所属しているものの、位置的にはほとんど中央アジア。カスピ海の対岸は、カザフスタンとかトルクメニスタンとか、日本代表の遠征先としてよく名前を聞く国々です。

航空券や海外旅行保険の区分でもだいたいアジアに入っているほどで、ヨーロッパから見ればまさに辺境中の辺境。ヨーロッパ主要国からのアクセスやインフラの成熟度を考えれば、ここでの決勝開催が物議をかもしたのも無理からぬことですが、「こういうところで決勝が開催されるのもヨーロッパリーグならでは」とも思います。

「まあ日本から行くのであればヨーロッパ主要国よりは近いわけだし」とタカをくくっていたのですが、真面目に調べてみると、直行便がないバクーまでの道のりは、モスクワ、イスタンブール、ドーハ、ドバイあたりで乗り継いで最短でも16時間ほど。ヨーロッパに行くより時間がかかるじゃないか!しかも、さすがに事前に航空券を確保する勇気はなく、アーセナルが決勝進出を決めてから探したら、いい路線、いい日程はすでに価格が高騰。経済と効率を考えた結果、フライトはドバイ経由の全19時間、試合の前々日の27日から現地4泊という日程になりました。

ヨーロッパのアウェイの楽しみの一つは、その地に大集結したアーセナルサポに出会うこと。案の定、乗り継ぎ地のドバイですでに、同じバクー行きの便に乗るアーセナルシャツの集団を発見!とくに今回は、「この便(27日の便)に乗るということは、君らもいい航空券が取れなかったクチだな!」と勝手に共感がわいてきます。通常のアウェイとちょっと違うのは、同じ便にチェルシーシャツの面々も乗っていること。中立地で開催される決勝ならではの光景です。

そんな19時間の移動を経て到着したバクー、ヘイダル・アリエフ空港は、コンパクトながら超現代的で快適そのもの。装飾もEL決勝一色で、到着後真っ先に目に入る特大エジルの前ではアーセナルサポが次々にセルフィーを撮っていました。柱の4面を覆う写真がエジル、ラカゼット、オーバメヤン、パパスタソプーロスであるところにちょっと複雑なものを感じたけれど(だっておそらく、普通なら4人目はラムジーかミキあたりだよね……)盛り上げようという気持ちは何だか嬉しい。しかも試合のチケットを持っていると、空港からのシャトルもタダ!あとで聞いた話では、地下鉄やバスも試合のチケットでフリーパスだったそうで、思い切った待遇だなと感じました。

サポとの出会いといえば、予想外に楽しかったのが試合前の1日を過ごすために入れたバスツアーです。公共交通機関では行きづらい観光地を網羅した英語ガイド付きツアーで、待ち合わせのショップには数十人がごった返す人気ぶり。二言目には「試合を見に来たの?」という会話が交わされ、どうやら参加者の大半が試合前の1日を活用しての参加のよう。考えることはみな一緒というわけですね。興味深かったのは、「Arsenal or Chelsea?」と続くお約束の問いかけに対しては、「どちらでもない」という答えも多かったこと。サポにとっては「アーセナルの世紀の一戦」であっても、たとえばトルコやアラビア半島など、バクーから比較的近いエリアに暮らすサッカーファンにとっては、ヨーロッパのトップレベルを現地観戦できる貴重な機会でもあるのだということに気づかされました。

そんな中でなぜか私に「コンニチハ」と日本語で話しかけてきたイギリス人のおじさまが。なにやら貿易関係の機関に勤めていて熊本に3年住んでいた、濟々黌(熊本の名門校です)でも教えていたなどとのたまうのですが、聞けばゴリゴリのリーズファンというじゃありませんか!「前にリーズが1部(当時はプレミアリーグ創設前)で優勝したときのスコアを知ってるか?●対●だ!(数字は聞き流してしまいましたすみません)なぜ私がそれを知っているかって?その場にいたからだよ!」など滔々と語りつつ、EL決勝については「たまたまバクーに来たらやるっていうから見る」と……ここまで来て、そんな人もいるのだなあとびっくりしました。

いい機会だと思って「ビエルサについてはどう思ってるの?」と聞いてみたら、「とてもいい」と大絶賛。そうかあ、結果的に昇格できなかったとしても、これだけうるさ方のファンが納得しているって凄いことだなあ…などと思いつつ続きを聞いていたら、「ただ問題が2つだけある。まず、現有のディフェンスラインをうまく使えているかというと……」と大演説が始まったのですが、そこでバーレーンの大学で教えていたというサウジアラビア人の先生に話しかけられてしまい、最後まで聞くことはできませんでした。残念!

本拠地から遠すぎるがために本国のアーセナルサポが少ないのか、あるいは彼らはあくまで試合が目的だからわざわざ観光ツアーには来ないのか。理由は定かではありませんが、とにかくこのツアーは多国籍。もちろんその中には、遠くからわざわざやってきたアーセナルサポもいました。バスで隣の席に座った2人組がバックパックにアーセナルのバッジをつけていたので話しかけてみると、彼らはインドからアーセナルの応援のために来たとのこと。後ろの席に座っていたアメリカ人青年もなかなか熱いアーセナルサポで、バスが舗装されていないガタガタ道にさしかかると、「24時間フライトのあとにこれはツラい……」とぼやくのです。

24時間!空港でロンドンから来たサポに、「私は日本から来たんだよ。19時間かかった!」とドヤ顔で語っていた自分が恥ずかしくなります。その青年、フェルナンド君は言っていました。「だってアーセナルが決勝に出るなんて、こんなチャンスないんだから!never,ever!」その気持ち、めちゃくちゃ分かるよ!さらに彼、アーセナルを応援するようになったきっかけを聞くと、なんとベルカンプだというではありませんか。それも分かる!こうなるともうサポトークは止まらず、先ほどの2人組やその他のアーセナル派を巻き込んで、エミレーツでいつどんな試合を見たとかなんとか次々と話が広がります。

集まっているのがロンドンのサポが中心であれば、また短時間で移動できる場所であれば、ついでの観光などせず試合だけ見て帰る人も多いはず。前日の観光ツアーでのこうした出会いは、バクーならではの貴重な体験だったのかもしれません。

長くなりますので、次回「グーナーが行った!ELプレミアリーグ対決inバクー現地観戦レポート【哀愁のファイナル編】」に続きます。

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“グーナーが行った!ELプレミアリーグ対決inバクー現地観戦レポート【決戦前夜編】” への3件のフィードバック

  1. Macki より:

    更新ご苦労様です。
    毎度現地観戦記はゲームだけではなく、開始前の内容もてんこ盛りなので楽しく読んでます。
    バクーは遠い地でしたが、筋金入りのサポーターはどんな地であっても集まるものですね。バスに中で話が広がるシーン良いですね!「哀愁のファイナル編」も楽しみにしております。

  2. グーナーです より:

    ほえー。。
    僕、済済黌の出身です笑
    今も済済黌の隣で働いてます笑
    周り巡ってこんなところで母校の名前を目にするとは。
    初めてアーセナルと済済黌が繋がった瞬間です笑
    後編も楽しみに(いや、楽しめないかも。。)読ませていただきます!

  3. とくはいん より:

    Mackiさん、いつもありがとうございます!
    本当に、バスツアーがあんなにサッカー一色になるとは思っていませんでした。全地球上のの「筋金」君たちの存在をお知らせできて私も嬉しく思います。

    グーナーですさん、さっそくご出身の方がいらして嬉しいです!
    最初はリーズおじさんがなんと言っているかわからず、「セイセイコー知ってる?」と言っているとわかったときには、「ああ濟々黌!もちろん!!!」と盛り上がりましたよ。人は思わぬ場所で思わぬ単語が出てくると固まってしまうものですね。まさかバクーで、リーズファンのおじさんの口からこの名前が出てくるとは…笑
    というわけで後半も多少は楽しんでいただけていれば幸いです…汗

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