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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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解任ブーストはなぜ起こらない!? リュングベリ暫定監督が巻き返すための処方箋を考察。

ウナイ・エメリが去った後、アシスタントコーチのフレディ・リュングベリが暫定ヘッドコーチに就任すると聞いて、いわゆる解任ブーストを期待したグーナーは多いのではないでしょうか。ある人は、レジェンドの失敗を見たくないという願いを込めて。またある人は、不振に陥ったクラブを鮮やかに立て直した先人たちのエピソードの再現を夢みて。ガナーズのレジェンドに何が期待できるのかをイメージするべく、プレミアリーグのビッグクラブにおける、解任ブーストの歴史を振り返ってみましょう。

この話題になると、最初に名前を挙げたくなるのはチェルシーです。フース・ヒディンクとロベルト・ディ・マッテオ。2008-09シーズンにルイス・フェリペ・スコラーリ解任の後を継いだ前者は、プレミアリーグ13戦11勝1分1敗という素晴らしい戦績で3位フィニッシュ。チャンピオンズリーグでも、セミファイナルでバルセロナに0-0、1-1と互角に渡り合い、納得のいく惜敗で大会を終えています。プレミアリーグでは6位と順位を上げられなかったディ・マッテオは、クラブ史上初のビッグイヤー制覇という偉業を達成。前任者ヴィラス・ボアスの下でアシスタントコーチを務めていたと聞けば、リュングベリに同様の成功を期待したくなる人もいるでしょう。

ヴィラス・ボアスといえば、2013-14シーズンのトッテナムでブーストに成功したティム・シャーウッドを思い出します。8勝2分5敗でプレミアリーグ7位だったチームは、指揮官交代後の10試合を7勝2分1敗で駆け抜け、5位にジャンプアップ。その後不振に陥り、最終的には13勝3分6敗で6位に落ち着きましたが、前任者を上回る勝率を合格点としても違和感はないでしょう。スパーズの事例をもっと極端にしたのが、ジョゼ・モウリーニョをフォローしたオーレ・グンナー・スールシャールです。クリスマス直前の就任から、プレミアリーグ12試合を10勝2分の快進撃で、CLでもパリを撃破。これで燃え尽きてしまったのか、最後の9試合は2勝2分5敗という絶不調で、バルサとのCL準々決勝はノーゴールでダブルを許しました。

解任ブーストを成功させるために必要な要素は、「前任者否定」「キーマンのモチベーションUP」ではないかと思います。2009年のヒディンクは、軽すぎると不評だったスコラーリのトレーニングを全面的に刷新し、出番が減っていたドログバをアネルカの相棒に指名。シャーウッドは、ぬるま湯化していたチームにフェアな競争を持ち込みました。「われわれはマンチェスター・ユナイテッドだ。攻めなければならない」と宣言したスールシャールは、ラシュフォードを真ん中に移し、守備的な戦術に不満だったポグバのリフレッシュに成功しています。とはいえ、解任ブースト効果はどうやら10試合程度というのが相場のようで、成功者としてチームを去ったヒディンク以外は、全員揃って戦績も評価も落としています。

今季は、ビッグクラブでは久々の解任連鎖が起こり、ポチェッティーノとエメリがクラブを去りました。スパーズで2勝1敗のジョゼ・モウリーニョをブーストと評するには時期尚早ですが、「デル・アリの完全復活」「後方からのロングフィードの有効活用」と、ポチェッティーノが忘れかけていた以前のストロングポイントを思い出させる采配は期待大です。一方、リュングベリのほうは、ノリッジに引き分け、ブライトンにホームで完敗と最悪のスタート。ブーストが起こらない理由は、「前任者の頃と何も変わらないから」ではないでしょうか。

レジェンドの最大の不幸は、エメリがいじり倒した後に引き受けたことでしょう。エジルもジャカもムスタフィも復帰させ、ティアニーやルーカス・トレイラもそこそこ出ているチームは、誰かの抜擢で新しい風を吹かせることはできません。課題の最終ラインを変えるにも、手駒は足りず。クリステンセンやフィカヨ・トモリのような若いタレントがいるチェルシーや、ゼップ・ファン・デン・ベルフとキ・ヤナ=フーフェルに全く出番がないリヴァプールが眩しく見えます。

選手の入れ替えや個々のモチベーションUPが難しければ、戦い方を変えるしかありません。リュングベリらしい策として提案したいのは、「ヴェンゲルのインヴィンシブルズ・リターンズ」です。プレミアリーグを無敗で駆け抜けたあのチームを、今のメンバーで再現してしまおうという趣向ですが、いかがでしょうか。「そんなの無理…」という抗議は、メンバーを紹介させていただいてからお聞きすることとしましょうか。さて。

最前線は、プレミアリーグ15発コンビのオーバメヤンとラカゼットで文句なしでしょう。中盤はフラット4。ピレス役にはメスト・エジル、リュングベリの後継者には運動量豊富なグエンドゥジを指名します。中盤センター…ここが肝なのですが、現在の最大の課題であるバイタルエリアのカバーリングを改善すべく、ダヴィド・ルイスとルーカス・トレイラを置きたいと思います。

アシュリー・コール役は、夏に補強した彼が楽しみです。そう、キーラン・ティアニーがチームにフィットすれば、ロバートソンをうらやましがることもなくなるでしょう。CBは苦しいのですが、ダヴィド・ルイスとルーカス・トレイラが前にいれば、チャンバースとムスタフィでもがんばれるのではないかと思います。私の推しはホールディングとマヴロパノスですが、現実的にはパパスタソプーロスとホールディングを並べるのが無難です。

「インヴィンシブルズの再現」というと、若干ふざけている感があるかもしれませんが、ダヴィド・ルイスの中盤へのコンバートと、「期待感創出によるブースト促進」が狙いといえば、荒唐無稽ともいえないと見直していただけるでしょうか。ハマーズとのアウェイゲームで、リュングベリ暫定監督はどんな打開策を見せるのか。大胆な実験をするなら、ここしかありません。マンチェスター・シティ戦ではさすがに無茶はできず、それ以上時間が過ぎてしまえば新鮮味が目減りし、ブーストどころかバーストの懸念が…!

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“解任ブーストはなぜ起こらない!? リュングベリ暫定監督が巻き返すための処方箋を考察。” への5件のフィードバック

  1. ひとっちゃん より:

    フラットな4-4-2とは面白い意見ですね。
    逆に当時のメンバーの能力の高さ、特に中盤4枚の高さががわかりますね。
    攻撃型はピレスのみ、攻守ハイブリッドがビエリ、シウバ、エドゥ、リュングベリと4枚もおり、
    パーラーも控えとしては十分なレベルであり、この6枚でローテできるって今じゃとんでもない
    ことですね。

    翻って今のメンバーを見た時、能力的にはエジルが達しているぐらいで、他はパーラーレベル
    すらいないぐらいの中盤の陣容です。昨シーズンであれば8番の正統な後継者がいたんですけどね。
    過去を美化しすぎかもしれませんが、選手個々のレベルが落ちていることは否めないですね。

    あと、私もブログ主さんが押しているロブとマブロパノスでⅭBを固めてほしいと考えています。
    少なくとも、今の5番20番21番29番で組むCBよりかはマシと思います。

  2. XA より:

    いつも楽しく拝見させていただいています。
    解任ブーストについてですが私は、1)前任者の成功したシステムを維持したまま、2)課題となっているメンタリティの改善ができるということなのではないかと推測しています。モウリーニョやビラスボアスの後任達や、近々でいうとコンテの後のサッリ、サッリの後のランプスなどが解任ブーストできているのは解任前のシステム自体に大きい欠陥がなく、選手のモチベーションのコントロールなどに問題があったためではないかと、、
    そういう意味で考えると戦術やスタイルが確立する前に解任されてしまったエメリの後に解任ブーストを期待するのは難しいのではないかと思います。
    サーアレックスやヴェンゲルの後はどうなのかと聞かれると困ってしまいますが、モイーズは選手のメンタリティを向上できなかったこと、エメリはヴェンゲル時代にそもそも戦術が他チームに比べ遅れ始めてしまっていたことが理由かなあと定性的に考えています。
    ガナーズファンではありませんが、以前のパスワークからの美しいゴールに心奪われかけた他チームファンは私だけではないと思いますし、情熱と魅力的なフットボールがエミレーツに帰ってきてくれることを期待しています。
    長文しつれいいたしました。

  3. ガナーズぺろ より:

    いつも読ませていただいています。

    ルイスの利用方法についてですが
    彼はCBとして今の地位を気づいていますが
    多くの人も気づいているようにロングパスの名手ですね。
    ルイスの青のユニフォームのときの前線へのパスはため息が出るほどの制度であって羨んだことは隠しようがありません。

    今ではそのなりをひそめてしまっていてますが
    アルデルヴァイトからのロングパスを他チームで利用しているように、使える戦術に間違いないです。
    ただ、CBは駒が足りず、毎回2失点してしまっているので主がおっしゃるように底に置くのならばルイスは活きると思いますよ。
    とくに潰しやとしてルーカスが機能してくれるのなら鬼に金棒でしょう。

  4. エミリー より:

    現有戦力をなるべく余さず作用させようとするなら、間違いなく442だと私も思います。
    中盤の中2枚とCBのコンビは色々意見が別れる所かと思いますが、フレディも慣れ親しんだ442が、ザ・アーセナルで、見てみたいし、面白いです!

    ただ、今季は、と言うか、下降線を描き出してからのアーセナルは、こいつが上がったら、ここのカバーはどうする?とか、ここが開いたら、どうケアをする?という、チームの規律の無さが常につきまとうように大問題なので、フォーメーションうんぬんより、そろそろこの約束の無さを改善してほしいですね。
    自由過ぎる不自由に溺れているという感じが強くします。
    エジルなんか、これの典型なのでは?
    フォーチームの精神が無さすぎます。

  5. プレミアリーグ大好き! より:

    メンタリティの向上、思い切っていじくれること。
    スールシャールがルカクを切って、ラッシュフォードとポグバを前で並べたのは見事でしたね。いまは不調ですが、やはりポグバの不在は痛いはず。

    現在のアーセナルのメンバーでフラット442は守備強度考えても難しい気がしますが。アトレティコの半分も守備意識ないのに。
    ルイスとトレイラを前に置いても、さらにその前にオバメとエジルがいたらバランス保てるとも思えないですし。

    むしろ本格的に3バック導入するほうが現実的かなと。
    思い切ってオバメとラカを縦に並べてみるとか。
    あるいは3バックの3センターの2トップでカウンターシフトとか。
    大事なのは全員を活かそうとしすぎないことじゃないかと。
    切るべきところは切り、強みを絞り出して凝縮したものを戦うくらいの意識で。

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