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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

オーバメヤン、ジャカ、ムスタフィ…アルテタ就任が転機となったアーセナルの精鋭たち。

シュート数は9対17、オンターゲットは4対5。スリリングな試合展開にテンションが上がり、彼らの気迫のこもった戦いぶりに感動さめやらぬまま、眠りに就いたのですが、あらためてスタッツを見ると苦しいゲームだったのは間違いありません。プレミアリーグ27節、アーセナルVSエヴァートン。27分に素晴らしいクロスでエンケティアのゴールをお膳立てしたサカが、セカンドハーフの半ばからミスを連発するようになり、ガナーズの最終ラインは必死に耐える時間を強いられました。

疲労困憊のダニ・セバージョスに代えてルーカス・トレイラを投入しても劣勢は変わらず、グエンドゥジに前線からプレスをかけさせる奇策を用いて辿り着いた勝ち点3。タイムアップの笛と同時に両手を挙げ、ガッツポーズでスタンドを煽り、スタッフやエジルとハグをかわしたアルテタ監督の姿は、快勝した指揮官ではなく地獄から生還した男に見えました。プレミアリーグにおける連勝は開幕直後が最後。公式戦3連勝は、9月にフランクフルト、アストン・ヴィラ、ノッティンガム・フォレストを連破して以来です。ニューカッスル戦の圧勝と2試合連続の接戦を見て、主力3人のマインドの変化を感じました。オーバメヤン、ジャカ、ムスタフィ。いずれも、ウナイ・エメリの下で苦しんでいるといわれ、冬のマーケットで移籍が取り沙汰された選手です。

「彼は多大な期待感を抱いている。ここ数年、数か月の失望はわかるよ。ビッグクラブでベストプレーヤーたちとともに、最高峰のトーナメントを戦いたがっている。われわれは全力を尽くして彼をサポートし、ここにいることを心から満足してもらわなければならない」。オーバメヤンの残留を熱望するアルテタ監督は、一方でこんなこともいっています。「彼は、われわれが築き上げようとしていることをわかっており、マインドセットはできていると思う」。今季プレミアリーグで17ゴールをゲットし、得点王争いのTOPに立つストライカーが左サイドにいるのは、アルテタ監督が守備力を買っているからだと思われます。

エヴァートン戦の最終盤に、攻守ともに役割を果たしていたのはオーバメヤンだけというと大げさでしょうか。サカをサポートすべく、ゴールライン際まで戻ったかと思えば、カウンターのチャンスと見るや左サイドをスプリント。追加タイムに入っても前線でプレスをかけ続け、守備のタスクを全うしました。チーム最多タイの3つのタックルは、キャプテンとしての責任感と勝利への執念によって記録されたスタッツです。ガナーズのマネージャーが、大先輩と同様に忠実にチェイシングするエンケティアに最前線をまかせ、サカのサイドにオーバメヤンを配する意図はよくわかります。

サポーターとの軋轢、キャプテン剥奪、スタメン落ち、退団騒動…散々な秋を過ごしていたグラニト・ジャカも、アルテタ就任とともに変貌を遂げた選手です。左サイドに出て、ビルドアップをサポートする姿が目立つセントラルMFは、長短のボールを前線に供給して攻撃を仕切る役割を期待されています。ターニングポイントは、ダヴィド・ルイスが退場となったビッグロンドンダービーでしょう。アルテタ監督が、「サポーターの応援はホームのようだった。われわれにしっかり寄り添ってくれた」と語ったスタンフォード・ブリッジの激闘は、前半からCBにまわったジャカにとっても大きな一戦だったのではないかと思います。

闘志あふれるプレイで2-2のドローに貢献したジャカは、「アルテタとの出会いはとてもいいもので、オープンに話せる関係を築けている。このクラブにいられて幸せだ」と、あのころとは別人のようなコメントを残しています。ダニ・セバージョスとのセントラルMFコンビは、攻めて勝ちたいときのファーストチョイスでしょう。ガナーズがどんな形でシーズンを終えたとしても、彼はプレミアリーグに残るのではないでしょうか。周囲に慕われる選手は、自身のパフォーマンス以上にチームに価値をもたらしているのだと思います。最近のジャカの姿に、マイケル・キャリックがオーバーラップします。

冬の移籍が既定路線と思われていたムスタフィは、パプロ・マリが加わったにもかかわらずノースロンドンにステイ。ベンチが定位置という予想を覆して、プレミアリーグ5試合連続スタメンとレギュラーポジションを奪取してしまいました。チェルシー戦ではダヴィド・ルイスの退場のきっかけとなるバックパスミスをやらかしましたが、その後の時間は合格点。バーンリー、オリンピアコス、ニューカッスルの3連続クリーンシートに貢献し、指揮官の信頼を得ています。彼の強みは、縦パスを刈り取るアグレッシブなチャージと、前線への的確なフィード。セントラルMFに守備の負担を減らしてもらえれば、セントラルMFの攻撃の負担をシェアできるCBです。

エヴァートン戦でも、最後まで体を張り続けて勝利に貢献したのですが、ウィークポイントも露わになりました。前半終了間際の失点シーンでは、リシャルリソンが決める直前の空中戦でミナを自由にさせ、93分にベルナルジが浮かしたクロスへの対応でも、カルヴァート=ルーウィンにプレッシャーをかけることができずに決定的なヘディングを許しています。横からのボールへの弱さを克服し、集中力を欠くシーンを減らさなければ、いずれ新戦力にポジションを明け渡すことになるでしょう。チャンバース、ホールディング、ダヴィド・ルイス、ウィリアム・サリバ、パブロ・マリと来季からCBの頭数が増えるチームで、売却候補となるのはマヴロパノス、パパスタソプーロス、ムスタフィなのではないかと思います。

とはいえ、ムスタフィが徐々に自分らしさを取り戻したことによって、ガナーズが戦いやすくなったのは確かです。ジャカ&オーバメヤンの新旧キャプテンも新たな力をチームに加え、エジルやニコラ・ペペの守備意識も高まっています。終盤の追い上げでCL出場権を獲得し、オーバメヤンとの契約延長が実現して、去就不明のムスタフィにも感謝の言葉を捧げられれば、グーナーのみなさんはいい1年だったといえるのではないでしょうか。プレミアリーグ屈指のストライカーに高いサラリーを払うとなれば、メスト・エジルとはお別れとなるのかもしれませんが。

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“オーバメヤン、ジャカ、ムスタフィ…アルテタ就任が転機となったアーセナルの精鋭たち。” への1件のコメント

  1. ベンゲル より:

    良い記事ですね。

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