偏愛的プレミアリーグ見聞録

ヨーロッパリーググループステージ5節。アーセナルスタジアムのスタンドに、グーナーが帰ってきました。彼らにとって、4-1で圧勝したラピッド・ウィーン戦は、忘れられない一戦となるのではないでしょうか。

プレミアリーグ10節のウルヴス戦で、35本のクロスを入れながら1ゴールに終わり、ホーム敗戦を喫したアーセナル。4勝1分5敗で14位に沈んだチームは、これ以上負けるわけにはいかず、週末に敵地で戦うノースロンドンダービーは必勝の一戦です。一方、木曜日開催のヨーロッパリーグのほうは、開幕4連勝で既にラウンド32進出が決まっており、ラピッド・ウィーン戦は若手とサブの選手がアピールする場となりそうです。パブロ・マリ、コラシナツ、エルネニーは復帰戦。ネルソン、メートランド＝ナイルズ、エンケティアは、何とか爪痕を残したいところです。

プレミアリーグでは10試合で10ゴールと得点力不足に悩むチームは、ヨーロッパリーグでは4戦12発と絶好調。アーセナルスタジアムで行われたオーストリアの名門とのゲームも、序盤からアグレッシブに仕掛け、10分にあっさり先制しました。敵陣中央でデミアをかわしたラカゼットが右足一閃。鋭いミドルはGKから逃げるような弾道で、ゴール右隅に突き刺さりました。右サイドを執拗に攻めるアーセナル。ネルソン・エンケティア、ニコラ・ペペが流動的に居場所を変え、速いクロスを中央に集めています。

17分、左からのCKはニアのパブロ・マリにぴったり。シーズン最初のゲームだったCBは、ヘッドでコースを変えた瞬間、決まったと確信したかのように後ろに走り始めました。ボールがポストの内側に当たってネットに届くと、アルテタ監督は拳を突き上げて喜びを表現しています。昨季プレミアリーグの終盤戦で足を痛め、真価を発揮できなかったレフティは、ガブリエウ・マガリャンイスとともに堅陣を築いてくれるのではないでしょうか。

なおも攻めるアーセナル。27分、右からドリブルで斬り込んだネルソンがボックス手前で待っていたラカゼットに落とすと、右足のシュートは右のポストに当たって外に流れていきました。30分にドリブルで仕掛けたメートランド＝ナイルズは、ホフマンとゾンライトナーを一気に抜き去ってゴール前に躍り出ますが、スライディングしたGKの上を抜こうとしたフィニッシュは、左に外れてしまいました。

勝負が決したのは44分。スルーパスで左サイドを突破したニコラ・ペペが中央にグラウンダーを通すと、ネルソンが落としたボールにエンケティアが走り込んできます。最初のシュートはGKシュトレビンガーにセーブされるも、リバウンドをヘッドで右隅に押し込んで3-0。ラピッド・ウィーンのシュートを1本に抑える完璧な前半を終えたチームは、後半開始早々の47分に失点を喫してしまいました。左からのクロスをGKルナルソンが弾くと、こぼれ球に反応したアラセは2本のシュートをいずれもムスタフィにブロックされました。CBの背中に当たって高く浮いたボールを右足ボレーで決めたのは、清水エスパルスからやってきた北川航也です。

58分、ラカゼットが中央から放った決定的なシュートは、シュトレビンガーが右に飛んでセーブ。ニコラ・ペペのシュートがDFにヒットしてゴール前にこぼれたチャンスは、フリーだったメートランド＝ナイルズがGKにぶつけてしまい、フォローしたニコラ・ペペのフィニッシュは左に逸れていくミスキックでした。再三の決定機を逃したアーセナルの最後のゴールは、66分。中央から上がったニコラ・ペペがボックス左に走ったメートランド＝ナイルズにパスを通すと、3分前にラカゼットと代わったばかりのスミス・ロウが、ダイレクトの折り返しを右足でプッシュしました。

ミドル、セットピース、サイドアタック、中央突破とバラエティに富んだ4発。最もチャンスに絡んだのも、最もチャンスをつぶしたのもニコラ・ペペだったのではないでしょうか。気持ちよさそうにプレイしていたウインガーはあらゆるエリアに顔を出し、ドリブル、高速グラウンダー、クロスでアウェイチームの最終ラインを振り回しました。日曜日のノースロンドンダービーでも、今日のようなアグレッシブなサイドアタックと速攻を見せてもらえればと思います。スタンドに戻ってきたサポーターを祝福するような爽快なアタック、ナイスゲームでした。