偏愛的プレミアリーグ見聞録

チャンピオンズリーグとヨーロッパリーグで勝ち残っているプレミアリーグ勢のなかで、最も勝ち抜けの可能性が高いと思われていたのはマンチェスター・ユナイテッドでしょう。ラウンド32はラ・リーガ5位のレアル・ソシエダ、ラウンド16はセリエA2位のミランと厳しい組み合わせが続いていたチームは、準々決勝でようやくグラナダという与しやすい相手を引きました。ラ・リーガ8位は、0‐4、0-0で下したソシエダより明らかに格下です。敵地ロス・カルメネスで行われたファーストレグは、ラシュフォードとブルーノ・フェルナンデスが決めて0‐2で快勝しました。

オールド・トラフォードのセカンドレグが始まってわずか6分で、マンチェスター・ユナイテッドはセミファイナル進出を目前にしました。ブルーノ・フェルナンデスが左サイドのアレックス・テレスにパスを出したとき、ボックス左に入ったポグバにゴナロンがついていかなかったのが「敗因」でしょう。SBが浮き球を入れた瞬間、ヘルマン・サンチェスはノーマークだったポグバを放置するわけにはいかず、最も危険なストライカーをフリーにしてしまいました。ポグバが頭で送ったボールがカバーニの足元に落下し、左足の美しいボレーが右のサイドネットに吸い込まれました。

トータルスコアは3-0。プレミアリーグで11試合連続無敗のチームが、ここから3発喰らって敗退という着地は想像できません。8分のショートコーナーから、ヤンヘル・エレーラに許したヘディングシュートにはヒヤリとさせられましたが、ポストの外に切れていきました。直後、リンデロフのクリアをカットしたヤンヘル・エレーラのミドルはクロスバーの上。リンデロフ＆トゥアンゼベのCBコンビは不安ですが、2失点まではOKです。

20分に右からのFKをダイビングヘッドで合わせたのは、またしてもヤンヘル・エレーラ。右に逸れてくれて助かりましたが、裏に入られたリンデロフは走り込んでくる選手のチェックを強化しなければなりません。ラストパスの精度が低かったマンチェスター・ユナイテッドは、34分に久々の決定機を創りました。マティッチがボックス右に浮かしたボールを、ダイレクトで叩いたのはブルーノ・フェルナンデス。決まるかと思われた一撃は、クロスバーを越えてしまいました。

37分、マティッチの浮き球が最前線にいたグリーンウッドに入り、頭で落としたボールをカバーニがブルーノにつなぐと、右足のシュートは力んでしまい、左に切れていきました。前半は1-0。後半最初のチャンスは、3ゴールが必要なアウェイチームでした。フルキエのアーリークロスがファーに入り、途中出場のモリーナが競り勝ちますが、叩きつけようと意識しすぎたヘッドはデ・ヘアの正面。1分後、ハーフタイムにポグバと代わったファン・デ・ベークのクロスがフリーのグリーンウッドに届くも、ヘディングは工夫がなく、GKルイ・シウヴァががっちりキャッチしました。

56分、ブルーノ・フェルナンデスが右から浮かしたボールに反応したカバーニは、瞬時にヘルマン・サンチェスと入れ替わりました。ヘディングは空振り、肩にヒットしたボールは左にアウト。この人を見ていると、ゴールゲッターは3メートル走が速ければいいのだと思い知らされます。59分のファン・デ・ベークのミドルは、惜しくも左のポストの外。60分にカバーニをダニエル・ジェームズに代えたスールシャール監督は、残り時間が20分を切ったあたりでベスト4進出を確信したのでしょう。73分のブルーノ・フェルナンデスをファン・マタは、勝ちましたよと宣言するような交代策です。

86分にヴィクトル・ディアスがボックス手前から放った強烈なダイレクトショットは、デ・ヘアが落ち着いてキャッチ。マンチェスター・ユナイテッドの追加点は90分でした。アレックス・テレスのクロスにマタは触れず、背後にいたバジェホはボールを見失ったのか、きれいなヘディングのオウンゴールでジ・エンド。2試合とも2-0で勝ったプレミアリーグのクラブが、セミファイナルに駒を進めました。

次は、ローマですね。過去7試合は5勝1分1敗と相性のいいクラブですが、プレミアリーグのリヴァプール戦を挟む悩ましいスケジュールです。就任以来のトーナメントで準決勝敗退4回のスールシャール監督は、初のファイナルに進めるでしょうか。ここまで来たら、何としてもアーセナルとのファイナルを見たいのですが…。