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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

スーパーゴールの競演は予想外の大差に。我慢できなかったエヴァートン大敗で、欧州終了!

今季プレミアリーグ14位。ロベルト・マルティネス監督のスピーディーで機能的なサッカーが冴えわたり、昨季はチャンピオンズリーグ出場権獲得寸前だったエヴァートンが残留争いに片足を突っ込むまで苦しむとは思いませんでした。しかし一方で、欧州戦線においては今やプレミアリーグ勢の最後の砦。チャンピンズリーグでベスト8に駒を進めるクラブなしという惨状のなか、唯一ホームで勝利したヨーロッパリーグのエヴァートンに期待がかかります。敵地キエフで行われるディナモ・キエフとのセカンドレグには、左SBレイトン・ベインズが戻ってきました。欧州で大暴れのロメウ・ルカクは健在。押される時間が長くなりそうなゲームなので、カウンターで機能してくれそうなクリスティアン・アツも楽しみです。今季伸び悩み、エヴァートン低迷の理由のひとつに挙げられてしまいそうなロス・バークリーは輝けるのでしょうか。日本時間3時、いよいよキックオフです。

序盤から、予想どおりキエフの攻勢。ファーストレグでいちばん危険だったヤルモレンコの仕掛けに手を焼き、ジャギエルカとアルカラスのCBコンビがペナルティエリア内にいる時間が長いゲーム。チャンピオンズリーグでは、チェルシーもアーセナルもあと1点に泣きましたが、エヴァートンは先制されると彼ら同様に1点を追いかける難しい状況に追い込まれます。逆にいえば、ゴールさえ奪われなければOKだったのですが、20分に私たちが見せられたのは、とんでもないスーパーゴールでした。右サイドからドリブルで上がり、中に軽く持ってから放ったヤルモレンコのロングシュートは、マーカーのギャレス・バリーもGKハワードも呆然と見送った完璧な弾道。左足で巻いて、ドライブがかかったボールをゴール左上ぎりぎりに入れられては名手もなす術がありません。さあ、1-0です。エヴァートンは攻めないといけません。

25分、ハーフライン付近からネイスミスの縦パスに抜け出したロス・バークリーは一気にゴール前まで持ち込み、左足で強烈なシュートをクロスに狙うも、ポストに阻まれ同点ならず。直後のゴールキックをそのまま持ち込み、CBをかわして打ったヤルモレンコの決定的なシュートはGKハワードがビッグセーブでしのぎます。エヴァートンは、オープンな展開のうちに同点に追いつきたいところ。後半、残り時間が少なくなると、キエフはゴールに鍵をかけるように最終ラインを引いてくるでしょう。

ところが28分、こちらもまた信じられない一撃。エヴァートンが「その時間」を迎えるまでに、失点から10分もかかりませんでした。自陣左からの長いボールにルカクが楔となり、アツとネイスミスが絡んだボールが再度ルカクの足元へ。DFが2人、シュートコースを切りにいったのをあざ笑うようなルカクの左足シュートは、こちらもドライブがかかってGKポクロンスキは触れません。1-1となると、ゲームは攻め合いにシフトします。33分、敵陣でのパスカットからロス・バークリーがルカクにつなぎ、縦パスに反応したネイスミスがシュート。これはDFに当たってCKとなりますが、ここからわずか4分でキエフが立て続けに2点を奪います。

35分、左サイドにいたグゼフからの長いクロスをコールマンと競ったヤルモレンコが落とすと、ゴール前でフリーだったテオドルチクがハワードの脇を抜いて勝ち越し。37分、これも縦に大きく入ってきたロングボールをミゲルがヘッドで流し、テオドルチクからの折り返しをもらったミゲルが左足でシュート。コールマンに当たってコースが変わったボールに、さすがのハワードも対応しきれず、あっという間に3-1です。エヴァートンは、またもや「あと1点」の状況に追い込まれました。後半、早い時間に点が獲れればいいのですが、ロベルト・マルティネス監督に打開策はあるのでしょうか。

エヴァートンボールになると始まる、容赦ないブーイング。前線のファールが増え、シュートに持ち込めないアウェイチーム。55分、またもヤルモレンコをフリーにしたエヴァートン。ペナルティエリアに侵入したシドルチェクにスルーパスを通され右サイドをえぐられると、短いグラウンダーをMFグゼフがシュート。最初の一発はコールマンがブロックするも、こぼれ球を再度グゼフに触られ、右ポストに当たったボールはゴールイン。4-1、決定的な3点差。スタンドのエヴァトニアンは沈黙。オリンピスキは「ディナモ!ディナモ!」の大合唱です。

反撃するエヴァートン。58分、右サイドから仕掛けたアツが中に斬り込んで打ったシュートはGKがファインセーブ。これを拾ったロス・バークリーの左足はDFに当たって入りません。64分、ロベルト・マルティネス監督は、ネイスミスとアツを下げてレオン・オズマンとFWのコネ。前を1枚増やした布陣は、失点後は落ち着きを増したキエフの守備網を崩せるでしょうか。71分、ミゲルのスルーパスに左から抜け出したのは勝ち越しゴールのテオドルチク。大事な試合での抜擢に応えたCFのシュートはハワードがかろうじてセーブ。エヴァートンにチャンスの気配はなく、キエフの5点めのほうが早そうです。76分、勢いにのったチームというのはこういうものです。DFのアントゥネスが放った超ロング無回転シュートは、ゴール右上の角に当たるスーパーゴール。エヴァートンの欧州は完全に終わりました。

4点めを奪われたとき、GKハワードの目は泳ぎ、何人かの選手は下を向いてしまい、既にエヴァートンは戦う集団ではなくなっていました。79分にヤルモレンコのシュートがクロスバーに当たるなど、キエフは攻撃の手を緩めません。82分、CKからニアのジャギエルカがヘッドを叩き込みますが、意地のゴールも試合の結果には何の影響も与えませんでした。5-2、集中力を失ったエヴァートン、惨敗。今季のプレミアリーグで勝てなかった理由をすべて吐き出したようなゲームで、落胆するサポーターとともにキエフを後にすることになりました。

敗因は、運動量が足りなかった中盤の寄せの遅さと間延びしたライン。キエフのプレッシャーに我慢しきれず怖がって下がった最終ラインと、攻めようとするMFの間が空いてしまい、このスペースをキエフにいいように使われてしまいました。ボールを持っても緩いチェックしか受けないヤルモレンコは、ミドルシュート、スルーパス、ロングクロスとやりたい放題。エースをあそこまで自由にさせれば、CBとハワードは常に危機にさらされることになり、大量失点もやむなしでしょう。

メッシにびびってしまい、ラストパスを自由に出させてしまったマンチェスター・シティともども、プレミアリーグ勢の下がり癖は深刻です。ペナルティエリア外のスペースをきっちり埋めきってミドルを封じたのは、パリと戦ったチェルシーのみ。サイド攻撃を徹底するチームが多く、下がって受ければ何とかなるプレミアリーグでの戦い方は欧州では通用しないということを、トップクラブの監督は肝に銘じないといけません。いちばん下がり癖が顕著なのは、ファン・ハール戦術を消化しきれていないスモーリングとエヴァンスが並んだときの、アウェイ戦におけるマンチェスター・ユナイテッドでしょう。プレミアリーグ勢の今季の欧州は終わりましたが、マンチェスター・ユナイテッドが今のサッカーのままチャンピオンズリーグに出ようものなら、来季の巻き返しも簡単ではないと思われます。グアルディオラ、クロップ、シメオネのような監督がやってきて、プレミアリーグにエポックをもたらしてくれれば早いのですが…うーん、他力本願。(アンドレイ・ヤルモレンコ 写真著作者/Илья Хохлов)

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