欧州激闘レポート~チャンピオンズリーグ敗退危機の3チーム、落ちるのはどこだ!?
「それぞれのチームは、過去15年の強さに到達していない。今年のプレミアリーグの水準は、しばらく見ていない最悪な状況だ。世界最高レベルの選手は誰もプレミアリーグでプレイしていないし、セカンドクラスの選手たちもプレミアリーグにはいない。こんな状態はいつ以来だろう?今のどのチームも、2008年のマンチェスター・ユナイテッドには勝てないし、1999年のユナイテッドにも勝てないと思う。モウリーニョが来た最初のチェルシーにも勝てないだろうし、インヴィンシブルズ(2004年に無敗だったアーセナル)にも勝てないだろうね」(リオ・ファーディナンド)
…リオさん、その4チームほど強いチームはそうそう出てくるものではありません。比べる相手のレベルが高すぎます、といいたくなる気持ちをぐっとこらえて、おっしゃるとおり厳しい状況であることは認識しましょう。そのうえで、チャンピオンズリーグとヨーロッパリーグに出場したクラブの展望について、整理してみたいと思います。
チャンピオンズリーグで敗退危機を迎えているマンチェスター・ユナイテッド、チェルシー、アーセナルのなかで、先行きの不安感がいちばん高いのはマンチェスター・ユナイテッドでしょう。10月頭のアーセナル戦で3-0とやられてからの9試合は、90分で負けた試合はひとつもなく、プレミアリーグ2位につけてはいるものの、この間5引き分け。唯一の2点差勝利だったWBA戦も、2点めを奪ったのは追加タイムに入ってからで、すべての試合で1点を巡る攻防を強いられていたために若手選手や新しい攻撃のオプションを試す余裕がなく、ゴール欠乏症に完治の見通しはありません。ファン・ペルシ、チチャリートを放出し、ヤヌザイを修業に出しておいて大事な試合で駒が足りなくなったのは自業自得としかいえませんが、代役となるべきアンドレアス・ペレイラやジェームズ・ウィルソンの成長を促す機会が少なかったために、「攻めあぐんでもゲームの流れを変えられずにそのまま終わる」チームになってしまっています。PSVに2戦とも勝てなかったこのチームが、CSKAモスクワにアウェイで0-2と完勝したヴォルフスブルクにドイツで勝てるイメージは持てません。
モウリーニョ監督がレギュラー固定で戦うために、ファン・ハール監督同様オプションが少ないチェルシーは、トッテナム戦、ボーンマス戦に勝って4連勝の勢いをもってポルトと戦いたいものです。しかしこちらも、格下のテルアビブには0-4で勝ったものの、セットプレー以外では1点しか奪えておらず、ウィリアンがいないとマンチェスター・ユナイテッドと同じような試合になりそうです。両者に共通しているのは、攻撃に連動性がないこと。ダイレクトのパスやスルーパスで相手を崩すシーンがなく、3人の選手が絡むような攻撃はほとんど見られません。両監督とも、負けられない試合が続くなかで守備戦術の構築に忙しく、前線まで面倒をみることができなかったのでしょうか。「キャリックのチーム」「ウィリアンのチーム」は、最終節をクリアして次のラウンドに進めたとしても、戦い方を抜本的に見直すことができなければ、春を迎える前に欧州から去っていくのではないかと思われます。
現在のチーム力を見たときに、欧州の強豪といちばん戦えそうなのはアーセナルですが、いかんせん彼らは最初に抱えた借金が重すぎました。バイエルンとの1勝1敗は上々、ザグレブ戦の3-0はさすがヴェンゲル監督とうならせる見事な勝利でしたが、そこまでやってもオリンピアコスとのアウェイ戦では、2点差もしくは3ゴール以上の勝利を求められています。とはいえ、2-1で敗れたWBAのようにときどき不思議な負け方をするのが気にはなるものの、バイエルン戦で見せた集中力をもって臨めれば、難しいミッションをクリアできるはずです。彼らには、「何としても勝ってくれ」としかいえません。
ここをくぐりぬければ、ウィルシャーやウェルベックの復帰といった戦力の上乗せもあるので、決勝トーナメントは期待できるでしょう。アーセナルは、バイエルンとバルセロナ以外なら、どこが相手でも勝てるポテンシャルがあるチームだと思います。ただし一方で、オリンピアコスやザグレブでなくても、どことやってもあっけなく負ける可能性を孕むチームでもあり…。インヴィンシブルズに熱狂したベテランのグーナーはともかく、若いファンのみなさんはそんな危ういガナーズが好きなのでしょうね。リオ・ファーディナンドさんにはひとつだけ、抗議したいと思います。「アレクシス・サンチェス、チェフ、エジルは世界最高クラスでしょう!」と。
12月の最終戦をフラットに予想するなら、点を奪えなくても奪われなければいいチェルシーはセーフ、とにかく2ゴールと明確な目標に集中できるアーセナルは2点差以上の条件をクリア、短期的な立て直しの術が見当たらないマンチェスター・ユナイテッドはヨーロッパリーグ行きです。願望はもちろん、全チーム勝ち残ってくれ!なのですが、「ヨーロッパリーグにまわればアーセナルは優勝候補」というモウリーニョ監督の言葉に、それも観てみたいなと心惹かれてしまうのも否めないのであります。いや、もとい、大逆転でのグループステージ突破を期待してます。
さて、世界最高クラスのアグエロを擁するマンチェスター・シティは既に勝ち抜けを決めており…ついつい、長くなってしまいました。続きは次稿の「欧州激闘レポート~進化するEL勢、停滞のCL勢、プレミアリーグの地図は変わるか?」をお読みいただければと思います。
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オリンピアコス戦はセントラルをカソルラ、ラムジーにして、とにかく攻めるフォーメーションをとると思います。個人的には試合が敵地で良かったと思います。ホームならドン引き人海戦術をとられて、ドローとかなりそうなんで…
鍵を握るのは、いかに攻守のトランジションを素早くできるかだと思います。守→攻のカウンターはいつも通りに。攻→守はいつも以上にやる必要があります。
ELで優勝するアーセナル…自分も見たいですが、CLでベスト8以上に行くアーセナルはもっと見たいです。
更新お疲れ様です。
ファーディナンドのコメント、プレミアリーグファンとしては実に耳が痛いですね。
世界最高レベル、セカンドレベルをどこまでとするかは置いといて過去15年振り返りますと確かにバロンドールの表彰台の上位三名にはプレミアの選手がいました。
ベッカム、オーウェン、アンリ、ランパード、ジェラード、ロナウド…
FIFAベストイレブンも半分はプレミアの選手だった時代が確かにありました。
記憶ではこの五年間プレミアでバロンドールの表彰式に行った選手いないような気がします。
昨年度のベストイレブンにはディマリアが入りましたが評価されたのはレアルとアルゼンチン代表のディマリアだったと思います。
今年も昨シーズンのアザールが評価されて入れるか入れないか…といったとこ
悔しいですが、上位チームの戦力が落ちてきていることも認めなければいけないかもしれません。
否定的なことばかり書いてしまい申し訳ありません。
同時に下位チームのレベルが底上げされたことも間違いないです。
どの試合も結果が読めない魅力的なリーグになりましたよね。パイェ、カバイエ、シャキリが下位チームに来るなんて今のプレミア以外ではありえませんからね。
FAさんには下位チームの底上げをはかりつつも欧州カップ戦で上位に進めるような工夫をしていただきたいです。
長文失礼しました。
新参さん>
1点差負けはOKなので、オリンピアコスはカウンター狙いできそうではあります。私も、カソルラ、ラムジーではないかと思います。序盤に、遠めから積極的に打つ姿勢を見せてもらいたいなと思っています。外からのクロスやショートパスで中央を崩す形ばかりになると、中を固められそうなので。
ぐーなーさん>
確かに、耳が痛いです。タマゴとニワトリみたいな話でもありますよね。弱いからバロンドールにノミネートされないのか、バロンドール級の選手がいないから弱いのか…みたいな。他はともかく、マンチェスター・シティとアーセナルについては、ワールドクラスがいるという認識ですので、欧州でより上位にいってもらえればと思います。