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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

勝ちたい気持ちが強かったレスター&セインツ、盤石のペップ、よそ行きスパーズ~CL&EL開幕節総括

プレミアリーグ勢は3勝1分2敗。チャンピオンズリーグとヨーロッパリーグに出場している6チームの戦績ですが、セルジオ越後さん風に「ノルマ」を掲げるとすれば、4勝2分だったのではないかと思います。ドローでもやむなしだったのはノースロンドン勢だけで、マンチェスター・ユナイテッドはサイド攻撃以外に脅威がなかったフェイエノールトには勝たなければなりませんでした。トピックスを3つに絞れば、「レスター&セインツの快勝」「ペップ強し!」「どうしたトッテナム!?」でしょうか。それぞれの戦いぶりについて振り返ってまいりますが、まずは観戦記を書けなかったレスターの歴史的勝利から紹介させてください。

リヴァプールやチェルシーを差し置いて欧州へのチケットをつかんだプレミアリーグの中堅クラブ、セインツとレスターに共通項があるとすれば、「純粋に勝ちたいという気持ちが強かったこと」「開始早々に先制できたこと」でしょう。大量補強後でチーム作りの最中だったり、ユーロやワールドカップの影響で仕上がり途上の選手が多かったりする欧州のトップクラブが、CLに対するモチベーションが高い中規模クラブや弱小国のリーグ優勝クラブに苦戦する試合が多いのが序盤戦です。昨季のプレミアリーグ勢ではアーセナルがザグレブとオリンピアコスに連敗し、今年はレアル・マドリードがサンティアゴ・ベルナベウでスポルティングにラスト1分まで0-1。ELのインテルがイスラエルのハポエル・ベア・シェバにホームで負ける番狂わせにもびっくりさせられました。レスターとセインツは、欧州で戦える喜びと勝利への欲求が強かったのだと思われます。クラブ・ブルッヘの本拠地ヤン・ブレイデルスタディオンに乗り込んだレスターの選手たちは、試合前からいい表情でした。

岡崎慎司は無念のスタンド観戦となり、イスラム・スリマニがデビュー。2分にスルーパスを通され、シュマイケルが飛び出した脇をイスキエルドのシュートが抜けていったピンチは、今季のレスターの課題を象徴したシーンでした。ムサやスリマニを獲得したのは、カウンターだけでなく、自らゴールを奪いにいけるチームにするという狙いでしょう。しかし、前がかりになれば最終ラインの裏が空きやすくなる副作用がモレなくついてきます。ラニエリ監督は、この問題をうまく解決しなければなりません。

ただしこの試合のレスターは、相手のシュートミスに助けられた直後の5分、ロングスローにGKとDFが連携を欠いて後ろに逸らすというブルッヘの致命的なミスから、オルブライトンの倒れ込みながらのボレーで先制しました。こうなると、レスターは強いです。29分にマフレズが完璧なFKを沈めて0-2。ブルッヘは、昨シーズンにプレミアリーグの強豪クラブたちがはまった破滅への道を一直線に進んでいきます。60分の3点めも相手のミスからでした。ビルドアップでブルッヘ守備陣が犯したパスミスをヴァーディがかっさらい、GKに引っ掛けられるとジャッジはPK。マフレズがこれをど真ん中に蹴り込み、レスターは1度も相手の守備陣を崩さずに3点を奪いました。ボールポゼッションは41%、255本しかなかったパスは73%という低い成功率。それでも10本放ったシュートのうちオンターゲットが7本もあり、これぞレスターのスタッツです。

クラブ創設132年めの歴史的勝利は最高のスタートでしたが、気になったのは、64分にイスキエルドがSBルイス・エルナンデスの背後に飛び出し、モーガンをかわして打ったシュートがポストに当たったシーンです。昨季はサイドの守備が強固で、CBが脇に引っ張り出されることはほとんどなかったレスターは、実はSBの裏を取られると混乱しがちです。研究される今季は、プレミアリーグでもCLでもここを狙われるでしょう。カンテのいない中盤の布陣、最終ラインの再整備、攻撃陣の強化と、課題山積のラニエリ監督がどんな答えを出すのかに注目していきたいと思います。

ヨーロッパリーグで34年ぶりの勝利を挙げたサウサンプトンも、レスターと同じ5分の先制点で落ち着きました。プレミアリーグではまず取ってもらえない至近距離からのハンドで得た幸運なPKではありましたが、クコ・マルティナの絶品クロスからチャーリー・オースティンがヘッドで決めた2点めは完璧。ジェイ・ロドリゲスが最後にダメ押しのボレーを決めた3-0の快勝に、インテルがイスラエルのクラブにホームで敗れるというおまけもついて、セインツの視界は良好です。レスターもセインツも引いて守れるチームなので、先にゴールを奪えれば、欧州でも勝ち点を積み上げられるはずです。今後戦う相手との力関係を考えれば、この2チームはグループリーグ突破に大きく前進したといってもいいでしょう。

先制点が大きくモノをいうチャンピオンズリーグで、先にゴールを奪われたのがノースロンドン勢でした。両者の共通項は、主力選手のコンディションがよくないことです。トッテナムは、ハリー・ケインと最終ラインに昨季の凄みがなく、アーセナルはストライカーを使えないままアレクシス・サンチェスのワントップを余儀なくされています。モナコに敗れたスパーズは、自陣でのパスミスやサイドでのマークのずれの後、集中力を欠いて2失点。絶好のチャンスにハリー・ケインが決められなかったのも激痛でした。調子が今ひとつだったところに、「中立地」ウェンブリーでのホームゲームを強いられたのも厳しかったでしょう。どことなくよそ行きのスパーズは、いいときの彼らのプレイを披露できないままに、モナコにアウェイ勝利を献上してしまいました。

アーセナルは、コンディションまで考慮すれば、パリに対して明らかに「弱者」でした。ジルー、アレクシス・サンチェス、エジルが絶好調ならバイエルンにも勝つチームは、プレミアリーグで初めてプレイしたばかりのムスタフィは発展途上で、アレクシスのワントップは機能せず。開始1分でカバーニに決められたときは大敗まであると覚悟しましたが、オスピナが素晴らしいセーブを連発して耐え続け、最後にアレクシス・サンチェスがワンチャンスを活かしてドローに持ち込みました。終盤まで1点ビハインドだったスパーズとの差は、ここ一番でエースが決めたかどうかです。大きな勝ち点1をゲットしたガナーズは、今季こそ1位でグループステージを突破して、上位に食い込みたいところです。

最後に…ペップのマンチェスター・シティは完璧でした。指揮官本人は「ポゼッションを取りたい」と口にしているのですが、だまされてはいけません。今季のマン・シティは、前半はポゼッションを取って相手を圧倒するのですが、ひとたびリードするとボールを奪うラインを自陣に下げ、カウンター狙いに徹することも多いチームです。これは、試合数が多くウインターブレイクがないプレミアリーグでうまく戦うために、ペップが出した答えなのでしょうか。4-0で圧勝したボルシアMG戦でも、2点リードした後のラスト30分は、体力温存のカウンターモード。2回の決定的なチャンスで、スターリングは外してアグエロが決めるというのも、いかにも「らしい」展開です。厳しいプレスを仕掛けて相手を圧倒する戦い方も、効果的なカウンターもあるマンチェスター・シティは、近年のプレミアリーグ勢のなかでも最強のチームになりえると思います。昨季はベスト4に残ったチームの目標は、優勝以外の何物でもないでしょう。

以上ですが、マンチェスター・ユナイテッドは「プレミアリーグだけでなく、ELも勝ちましょうね」ということでいいですよね!?マンチェスターダービーに続く連敗により、当然のように2試合連続でモウチーニョさんのレフェリー批判が炸裂したとだけお伝えしておきましょう。10月末からのフェネルバフチェとの連戦を落としたら、そこで初めて本気で心配しようと思っています。プレミアリーグ勢についてまとめると、マンチェスター・シティが最も有望、レスター、アーセナル、セインツがセカンドグループ、マンチェスター・ユナイテッドはまさか負けないでしょう、トッテナムは苦難の道といったところでしょうか。CLとELの次節は、9月最終週です。

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“勝ちたい気持ちが強かったレスター&セインツ、盤石のペップ、よそ行きスパーズ~CL&EL開幕節総括” への3件のフィードバック

  1. シティさぽ より:

    シティはメンバーを落としたステアウア・ブカレスト戦以外前半の内に全て2点は決めてますからね
    試合の後半カウンターモードの切り替えがうまくできなかったのか劣勢な時が多かったと思います
    ただ先日のボルシアMGの後半は素晴らしいパフォーマンスだったと思います
    どんなチームも勝てなくなる時期が来ます
    そのときペップが解決してくれると期待してます

  2. 新参 より:

    ワントップではまだ輝けないサンチェス、コンディションが上がってないジルー、チームにフィットするまで時間のかかりそうなペレスとストライカーの人選が一番苦戦しそうですね。ハル戦、ノッテンガム戦と比較的に楽な相手と当たるので、メンバーを遊ばせてもいいんじゃないかなと思ってます。自分が一番推すのは、ペレス・サンチェス・ウォルコットの裏抜け3トップとセントラルのジャカのロングパスの組み合わせで、上手くいけばアーセナルの攻撃が進化しそうです。

    どういう組み合わせであれ、早いところ得点パターンを確立しなければ、チェルシー戦はおろかCLでも苦戦すると思います。

  3. makoto より:

    シティさぽさん>
    戦い方をうまくコントロールしてますね。試合の状況によって必要な変化をもたらす力は、クロップ監督やモウリーニョ監督も足元にも及びません。このテーマについては、いちばん近いのはポチェッティーノ監督なのではないかと思います。

    新参さん>
    ルーカス・ぺレスがプレミアリーグでもやれるという手ごたえをつかんでくれれば、一気に選択肢が広がります。ジャカは、ヴィエラ的存在感を獲得するかもしれませんね。プレミアリーグでのロングシュートは7回リプレイ、自宅観戦だったので実際はジョッキではなく350ml缶を3本です(笑)

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