偏愛的プレミアリーグ見聞録

チャンピオンズリーグのグループステージ4節、セヴィージャに勝てば3勝1敗となり、ノックアウトラウンド進出に大きく近づくアーセナル。ジェズスとエンケティアを欠いたアルテタ監督は、最前線にトロサールを配しています。右のインサイドにいるカイ・ハヴェルツは、開始1分のCKをフリーで受けたのですが…。

GKラヤ、DFベン・ホワイト、サリバ、ガブリエウ、冨安健洋。MFジョルジーニョ、デクラン・ライス、カイ・ハヴェルツ、FWサカ、トロサール、マルティネッリ。左からのCKをファーで叩いたドイツ代表のヘッドは、明らかにミスタッチでニアポストの外に逸れてしまいました。前からのプレスでセヴィージャのパスコースを切るガナーズは、主導権を握っています。

8分に右からFKを蹴ったのはブカヨ・サカ。中央で合わせたガブリエウのヘディングは、左に流れています。冨安もベン・ホワイトも中に絞り、ジョルジーニョとの3センターのように厚みを持たせている中盤は、セヴィージャに奪われる気配はありません。左サイドのマルティネッリを中心とした崩しは、ゴールの匂いが漂っています。

17分のカットインで足を引っかけられたサカは、FKをうまく落とせず。マルティネッリのサイドチェンジがきっかけとなった26分の波状攻撃は、ドリブルでこじ開けようとしたサカとカイ・へヴェルツが打てず、ボックス手前に上がっていたジョルジーニョのミドルはクロスバーを越えていきました。

先制は29分、ジョルジーニョがボックス右に出した縦のスルーパスは絶品でした。フリーのサカがゴール前に転がすと、走り込んできたトロサールが難なくGKの脇を抜きました。リードしてからも、攻め続けるアーセナル。サカとマルティネッリがキレキレで、セヴィージャのエン＝ネシリ、ペドロサ、ラメラはハーフラインを越えられずにいます。

38分のペドロサの突破は、サリバが追いついてスライディングでカット。セヴィージャのチャンスといえるのは、このシーンぐらいではないでしょうか。43分に左のゴールライン際に出たカイ・ハヴェルツは、軽く浮かしてサンチェス・ベラスコを抜き去ったタッチは素晴らしかったのですが、クロスは惜しくも中に合いませんでした。

前半は1-0、セヴィージャはシュートゼロ。アルテタ監督が冨安をジンチェンコに代えたのは、守備の不安はないと見切ったからでしょうか。後半の立ち上がりは、デクラン・ライスとジンチェンコが中央に入ってマルティネッリが下がる微妙なシーンが気になります。49分にサカが右から仕掛けたカウンターは、逆サイドのマルティネッリとカイ・ハヴェルツが空いています。

トラップからの左足ボレーを、サンチェス・ベラスコにブロックされたのはカイ・ハヴェルツ。左サイドを再三突破しているマルティネッリに足りないのは、中央に入れるボールの精度だけです。55分、ジョルジーニョの速い縦パスがボックス右手前のカイ・ハヴェルツへ。左足の強烈なミドルは、ファーポストすれすれを抜けていきました。

60分、左を制したマルティネッリがニアで空いていたデクラン・ライスに預けると、落としを受けたトロサールのダイレクトショットは右に曲がってしまいました。追加点は64分。自陣左からのボールを中央に持ち込んだマルティネッリが、右から上がったサカに素晴らしいラストパスを通しました。

ドリブルでボックスに入った7番は、切り返しであっさりペドロサをかわし、冷静に左隅に決めました。セヴィージャは未だシュートゼロ。今日のガナーズなら勝負ありでしょう。67分、サカの縦パスでオーバーラップしたベン・ホワイトがゴールライン際から折り返すと、クリアに反応したジンチェンコの強烈なボレーはGKドミトロヴィッチがセーブしました。

74分、サリバがロングフィードでかぶってしまい、マリアーノがボックス左に抜け出しますが、折り返しを見たガブリエウがエン＝ネシリを体で押さえ、シュートを打たせません。アルテタ監督が動いたのは81分。マルティネッリとトロサールをネルソンとファヴィオ・ヴィエイラは、週末のプレミアリーグを見据えた交代策です。

85分にキヴィオルと代わったサカは、痛めた足は大丈夫でしょうか。先制ゴールを生み出したジョルジーニョは、90分にエルネニーに代わりました。何もできなかったスペインのクラブが初めてシュートに漕ぎ着けたのは97分。マリアーノのミドルをラヤがキャッチすると、間もなくタイムアップを告げる笛が鳴り響きました。

トロサールが決めてから最後まで、アーセナルの勝利を疑った人はいないでしょう。前からのプレスが機能し、マルティネッリが左サイドを蹂躙。サカに決定的な仕事をさせたジョルジーニョとマルティネッリのパスは見事でした。最初に痛いミスがあったカイ・ハヴェルツも、よかったといっていいでしょう。

豊富な運動量でプレスの強度を高めていたレフティは、シュートを打てるエリアに入れるようになっており、2本のきわどいシュートと左サイドからの突破は覚醒間近を感じさせるプレイでした。連敗のショックを完全に払拭する圧勝。サカの足の状態以外に、懸念材料はありません。月末に開催されるランスとのホームゲームに勝てば、首位通過決定です。