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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

守れない中盤センター、運べないウインガー…理想と現実の狭間で揺れ動くテン・ハフのジレンマ。

正直に自白しましょう。フラム戦の最終盤まで、開始8分のジャッジを引きずっていました。エリクセンが左に上げたFKをガルナチョがダイレクトでファーに送り、マクトミネイがプッシュした鮮やかなゴールシーン。ガルナチョの脇でロドリゴ・ムニスと競ったマグワイアはオフサイドでしたが、2人ともボールに関与できる状況ではありませんでした。

これは、VARがジャッジすべきなのか?オフサイドポジションにいる選手が、GKの視界を遮るなど、ボールの行方とその対応に関連する事象ならわかります。しかしあのシーンは、「マグワイアがいなければムニスは触れていたかもしれない」という「たら・れば」まで、VARが踏み込んだジャッジでした。

それはレフェリーの役割ではないのか?VARの役割は、客観的事実のチェックではなかったのか?「アスレティック」でマンチェスター・ユナイテッドを担当するカール・アンカ記者は、「主観的なオフサイド」と表現し、「過去にプレミアリーグの複数の審判が見逃した類のジャッジ」「VARが主観的な判断を下すことを許されるかどうかが問われる」と疑問を投げかけています。

…すみません。書いているうちに、熱くなってしまいました。ルールブックと照合すれば、誤審と断じられるジャッジではないことは理解しています。話を戻しましょう。フラム戦の90分、すなわちマンチェスター・ユナイテッドがノーゴールで過ごした時間を288分に伸ばしていたとき、絶望的な気分になっていたというところから再開です。

今日もゼロかと諦めかけていると、アントニーに代わって右サイドに入っていたペリストリの必死さが、幸運を呼び込みました。ロビンソンとの競り合いに敗れた21歳のアタッカーは、リームとパリーニャが蹴ったボールを体に当て、パリーニャの2度めのクリアをブルーノ・フェルナンデスが拾いました。

マクトミネイが縦パスをうまくさばけず、ロビンソンに奪われそうになりますが、ペリストリが素早く回収して再びブルーノへ。今度は自分で打つと決めていた8番は、キックフェイントでパリーニャとルキッチをまとめてかわし、未来を変えてくれるかもしれない決勝ゴールを右隅に叩き込みました。

傷んだチームを回復させるために指揮官が選んだのは、モチベーション重視の起用と戦術でした。スコットランド代表とクラブでゴール量産中のマクトミネイを高い位置に配し、前線で体を張っているホイルンドはスタメン固定。ヴァランよりジョニー・エヴァンスを優先したのは、リサンドロ・マルティネスに求めていた長短の配球を忠実にやり切ろうとしているからでしょう。

この試合をレポートしたカール・アンカ記者は、「ブレントフォード戦、シェフィールド・ユナイテッド戦に続く不細工な勝利」「テン・ハフのイングランドにおける最初のシーズンの特徴だった明快さは、より回りくどい話し方と現実的なプレイに取って代わられた」と、最近の戦い方には否定的です。

「アヤックスのようなプレーはできない。選手が違うからね。自分の哲学とポゼッションをベースとして、マンチェスター・ユナイテッドのDNAや選手のキャラクターと融合させたかった」と語る指揮官が、半ば理想を捨ててコンディションとモチベーションを重視したことで、わかりにくくなっているのは事実でしょう。

フラム戦でうまくいったのは、フィードが得意とはいえないバッシーにプレスをかけてパス成功率を落とさせたことぐらいで、シュートが少ないチームにエヴァートン戦の20本に次ぐ18本を許しています。エリクセンをCBの前に配する布陣は適材適所とはいえず、最終ラインはマグワイア頼みでした。

テン・ハフの哲学と裏腹に、マンチェスター・ユナイテッドは今もカウンターが増えると勝率が上がるチームです。「アスレティック」のリアム・サーム記者によると、昨季プレミアリーグの開幕以降、カウンターが5回以上のゲームは23勝4分3敗で勝率76.6%。5回未満は26勝5分17敗で勝率は54.1%と、20%以上落ちてしまいます。

引いて守ると体を張れるけど、ハイラインをキープして攻撃を組み立てるのは得意ではないDFとセントラルMFを後方に配しているからでしょう。テン・ハフ監督が理想に近づきたければ、夏のマーケットで投資すべきは中盤センターとCBだったのだと思います。逆にいえば、今季は選手のキャラを最大限活かすことに腐心したほうがうまくいきそうです。

フラム戦を例に取ると、マクトミネイの攻撃力を活かしたければ、中盤センターにエリクセンとアムラバトを並べ、2列めの左右にブルーノとガルナチョ。マクトミネイの攻め上がりと前線のパスワークを両立させたければ、センターにマクトミネイとアムラバト、2列めはブルーノ、エリクセン、ガルナチョとしたほうが適材適所ではあったのではないかと思われます。

いずれにしても、今季プレミアリーグでドリブルで相手を抜いてからのシュートが1回しかないアントニーは、ベンチに置くべきでしょう。フラム戦でボールロスト10回のウインガーをペリストリに代えたのは、戦術的な失敗が多かったゲームのなかで賢明な判断でした。彼の存在は、理想と現実の狭間で揺れ動くテン・ハフのジレンマを象徴しているように感じられます。

次戦はコペンハーゲンとのアウェイゲームで、週末のプレミアリーグはルートン。そろそろ圧勝を見たいものですが、ホームで苦戦したデンマークのクラブも、リヴァプール戦をドローで終えた昇格クラブも侮れません。指揮官は開き直るのか、あるいはポゼッションとハイテンポをインストールしようとするのか。最大の注目ポイントは、中盤の陣容です。


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