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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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選手層の薄さ、空回りしがちな交代…今季のモウリーニョ監督に感じる2つの懸念

長いシーズンのたかが2試合、されど 2試合。プレミアリーグ開幕から1分1敗と出遅れたチェルシーに対して、外野が騒がしくなっています。「8月は23勝5分と驚異的な強さを誇っていたクラブの敗戦は9年ぶり」「前季プレミアリーグ優勝チームの2戦勝利なしは、2008-2009シーズンのマンチェスター・ユナイテッド以来2チームめ(ただしこのシーズンのファーガソン監督は連覇)」といった記録を複数のメディアが報じる一方で、「ここ6戦、プレミアリーグでチェルシーが敗れたクラブは監督の名前の頭文字がP」といった因縁めいた話まで出ています。クリスタル・パレスのピューリス、サンダーランドのポジェ、ニューカッスルのパーデュー、トッテナムのポチェッティーノ、WBAのピューリス、そしてマンチェスター・シティのペジェグリーニ。次戦以降、ピューリス監督、パーデュー監督と続くチェルシーにとっては嫌なデータです。

そんななかで、1歩踏み込んでチェルシーが抱える問題を指摘しているのは、イギリス紙「デイリー・メール」です。チェルシーの堅守について、当地ではよく「ゴール前にバスを停める」と表現されていますが、タブロイド紙は「バスは壊れた」と煽り、イヴァノヴィッチは衰え、テリーはスピード不足だったと厳しく評価しています。さすがに、開幕2戦で衰えとまで指摘するのは時期尚早ではないかと思うものの、彼らが今までのパフォーマンスを発揮できていないのは確かです。私は、「モウリーニョ監督が意図的に選手たちのコンディションのピークを先に持っていった結果、厳しいスタートとなった」とみています。復帰2年めでプレミアリーグ優勝を果たした指揮官は、前半戦を絶好調で飛ばしたものの、主力に疲労が蓄積して後半戦で苦しんだ昨季の状況を改善したかったのではないかと思います。そうとでも考えなければ、ベテランDFだけでなく、ジエゴ・コスタ、セスク、アスピリクエタ、オスカル、アザールと前後満遍なく不調な選手がいる状態を説明できません。この推測が妥当だとすれば、試合を重ねるごとにチェルシーの調子は上がってくるはずです。今は悪くとも、彼らはいずれ優勝争いに食い込んでくるでしょう。

とはいえ、個々の選手の調子が上がればチェルシーが昨秋のような強さを取り戻せるのかといわれると、いくつか懸念があります。ひとつは、モウリーニョ監督の選手交代が機能していないようにみえること。スウォンジー戦ではズマとファルカオ、マンチェスター・シティ戦ではこの2人に加えてクアドラードが投入されましたが、チェルシーのペナルティエリアを蹂躙していたアグエロをおとなしくさせた2戦めのズマ以外は、目に見える変化はなかったのではないでしょうか。「マン・シティ戦の後半はカウンターが増えて盛り返したじゃないか」という声もあるかもしれませんが、これはマンチェスター・シティの中盤が悪いボールの取られ方をするようになったからであって、デミチェリス投入でペナルティエリアの入り口にフタをされると、チェルシーに効果的な崩しは見られなくなりました。

交代選手もまた、コンディションに問題があったのかもしれませんが、「狙いは明確で、トライしたものの結果が出なかった」のならともかく、何をやろうとしていたのかわからないまま終わってしまった感があります。昨季プレミアリーグの後半戦、お疲れ気味だったときでさえ、ここまで空回りすることはなかったと記憶しています。ファルカオやクアドラードがこのままフィットしなければ、ベンチに選択肢が少ないチェルシーは苦しい戦いを強いられるでしょう。

そしてもうひとつの懸念は、中盤の脆弱さです。昨シーズンはセスクが輝き続け、アザールがコンスタントに活躍したので気にならなかったのですが、彼らが調子を落としただけで攻撃の手段が限られてしまう状況には、手を打つ必要があるのではないでしょうか。2014-15シーズンの優勝を決めた直後のモウリーニョ監督は、「選手層に厚みを持たせるために、各ポジションに補強が必要」と語っていたにも関わらず、ここまでは欠員補充しかしておりません。欲しいのは、ジエゴ・コスタのすぐ後ろで攻撃のバリエーションを創れる選手、あるいはセスクを1列上げたときにセンターで効果的な配球ができる選手。そう考えると、デブライネの放出はもったいなかったですね。モウリーニョ監督が用いる少数精鋭&スタメン固定制は、短期的に結果を出すためには有効ではあるものの、長期的な視野でチームを強化するには難易度が高い手法なのではないかと思います。控えとレギュラーの差がはっきりし過ぎると、若手に場数を踏ませることもできなくなり、出場機会があるチームに移籍したいと言い出す選手がどうしても増えてしまいます。

レアル・マドリードがインテルのコヴァチッチを獲得したことで、トニ・クロースが前で使われ、イスコがあぶれると主張しているメディアがあります。イギリス紙「メトロ」は、イスコ争奪戦はユヴェントスとチェルシーの一騎打ちで、チェルシーは3370ポンド(約66億円)を用意していると報じています。3回断られたといわれているエヴァートンのCBジョン・ストーンズともども、実現性が薄そうな話しか聞こえてこない昨今ですが、モウリーニョ監督は補強に動くのでしょうか。チェルシーのプレミアリーグのスケジュールを見てみると、WBAとクリスタル・パレスという「ダブルP」を乗り越えた後、エヴァートン、アーセナルという難敵が待ち構えています。補強か、戦術か、コンディション向上か。モウリーニョ監督は、8月中にチームを立て直すことができるでしょうか。プレミアリーグで、しかもスタンフォード・ブリッジで、ましてや2ヵ月連続でアーセナルに負けるわけにはいきません。

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“選手層の薄さ、空回りしがちな交代…今季のモウリーニョ監督に感じる2つの懸念” への4件のフィードバック

  1. 実はグーナー より:

    チェルシーは少数精鋭ですからね
    誰かを獲得するなら誰かを放出するでしょう
    補強が進まないのはオーナーも関係するのでしょうか?

    —–
    チェルシー結構ヤバいなぁ
    イバノビッチの軽さやあのマティッチがサボってたり反応遅れてるの見ると消耗が激しいカウンター戦術によくある数年目のガス欠なのかな
    ガナーズからすると有り難い話でもプレミアCL枠の事を考えるとこれから頑張ってもらわないといけないから複雑
    少数精鋭のデメリットが一気に出てきただけに本当にデブライネの放出が痛いですね

  2. プレミアリーグ大好き! より:

    チェルシーはロンドンの物価が高い理由もありスタジアムの改築費が1000億円以上になるからスパーズと同じくユナイテッドみたいな補強はできないと思います。

    本来スタジアム建設費はFPPには影響しないがオーナーはチェルシーの利益から改築費にあてるつもりじゃないですかね。

  3. 通りすがり より:

    まず一つ目、チェルシーの堅守、そしてイヴァノのついてですが
    昨シーズン、チェルシーが本当に堅守だったのか(特に後半戦)は大いに疑問があり
    攻撃的だと言われていた前半戦の脆さは単に守備の時間を増やして隠していただけのように思えます。それでもプレミアで最少失点だったのは他の上位陣に大きな問題があったのではないかなと。
    イヴァノに関してですが、時期尚早などではなく昨シーズン(あくまで個人的に)から不満はありました。特に守備におけるプレッシングはほんとにサボりまくっています。彼自身確かにあのような大きな身体をしていて、フルシーズンほとんど出ずっぱりでやるものですからしょうがないと言えるかもしれませんが、その怠慢さが足を引っ張っているのは確かだと思います。それでも攻撃への絡みは上手く、一対一の守備ではしぶとさがあったので誰も指摘しなかったのでしょう。
    そしてモウリーニョの采配についてですが、交代選手をあらかじめ決めているような時も多々あるのではないかと思います。特にベテラン選手の扱いは丁重で、昨シーズン、その前のシーズンと(特にランパード、ドログバ)レミーや他の選手を置いてでも前半戦は起用しており、信用しているぞと見せているように思えます。(ファルカオも同様)
    ただシティ戦のクアドラに関してはイヴァノのケアの形もあるかと、その理由にイヴァノサイドにボールが回ってきたときには何度も最終ラインまで下がっていたので。それが機能したとは言えませんが。
    3列目に関してはまったく同意見ですね。
    そしてまあペドロが決まりかけ、ほかの色々な噂が沸き立ってきましたが、今シーズンのチェルシーはズマやババを(ババに関してはかなり希望的観測)どうやってチームのできれば主力として成り立たせるかにかかっていると思います。
    少なくともイヴァノとテリーをフルシーズン背負ったままではCLもPLも難しいと思います。

  4. パチ より:

    正直コンディションさえ上がれば解決かというとちょっと難しいかなという気がします。やってるサッカーに問題ありかなと。

    セスクを獲ったのは今の選手を走らせるだけのサッカーじゃなくて、どんどんパスをまわしてボールを走らせるサッカーをやるためだったと思うんですけど、結局昨シーズン途中からDFラインをどんどん下げて攻撃は選手をシンプルに走らせる個のサッカーになってしまったのが今につながってるんじゃないかなと。
    セスクの真骨頂って昨シーズン開幕戦のゴールにいたるプレーにあって、周囲との連携で活きるのであって今の個に頼ったサッカーでは輝かないんじゃないでしょうか。

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