偏愛的プレミアリーグ見聞録

クリスマス以降の公式戦6試合は5勝1敗。開幕から苦しい戦いが続いていたチェルシーが調子を上げています。とはいえ、個々の試合内容を見ると、強くなったといい切るのは早計でしょう。この間のプレミアリーグ3試合は、いずれもきわどい勝利でした。

ムドリクが先制したクリスタル・パレス戦は、前半のうちに追いつかれ、ノニ・マドゥエケが自ら得たPKを成功させたのは89分。コール・パルマーの2発とノニ・マドゥエケのゴールで楽勝ムードだったルートン戦は、残り10分からロス・バークリーとアデバヨに次々に決められ、ドロー寸前に追い込まれています。

フラムとのウェストロンドンダービーは、前半の追加タイムにスターリングがディオプに倒され、コール・パルマーが決めたPKのみで1-0。3戦とも、ボトム10のチームに2ケタのシュートを許した辛勝です。カラバオカップ準決勝のファーストレグでは、ミドルズブラにノーゴールで敗戦。セカンドレグの6発圧勝を見ると、初戦を落とした理由がますます気になります。

若返ったチームの好不調の波に着目した「テレグラフ」のダニエル・ゼキリ記者は、「チェルシーの謎」と表現しています。これまでのスタッツを見ると、プレミアリーグのトップクラスといえる数字が多く、4位アストン・ヴィラと12ポイント差というポジションとのギャップが大きいからです。まずは、ポジティブなスタッツをいくつか並べてみましょう。

最初に目に留まるのは、ゴール期待値（xG）。チェルシーの42.1は、リヴァプールの46.5に次ぐリーグ2位です。PKからの7ゴールはリーグTOP。PKを除いたxGは35.8で、アーセナルを上回る5位となっています。90分あたりのファイナルサードにおけるポゼッション獲得は、マンチェスター・シティの6.8に次ぐ6.5を記録しています。

敵陣でのボール奪取やチャンスメイクはトップレベルなのに、35ゴールはウェストハムと並ぶリーグ8位。チェルシーは、どこに問題を抱えているのでしょうか。リーグワーストの数字をチェックすると、彼らが苦しむ理由が見えてきます。カウンターからノーゴール、ビッグチャンスミス41回もレッズと並ぶワースト。そしてもうひとつは、「xGとゴール数のギャップ」です。

PKを除くxGは35.8、PK以外のゴールは28。マイナス7.8という不名誉な数字は、エヴァートン、ブレントフォード、マンチェスター・ユナイテッド、クリスタル・パレスと続くワーストランキングの頂点になります。1試合あたりのシュート13.6本は10位、オンターゲット4.9本は8位、ボックス内に通したパス563本は12位。足りないのは、冷静なフィニッシュとゴール前の厚みです。

現在は、ビッグチャンスミス12回がリーグ4位のニコラス・ジャクソンが、非難のターゲットとなっていますが、現有戦力がうまくかみ合えば解決する可能性があります。現在の好調の原動力となっているのは、12月以降の11試合で7ゴール3アシストのコール・パルマー、直近のプレミアリーグで3戦連続アシストのスターリング、年末から6戦3発のノニ・マドゥエケです。

マン・シティから来たプレーメイカーが輝きを増し、ノニ・マドゥエケが機能するようになった今、もう一度エンクンクが戻ってきたら、決定力とゴール前の厚みという2つの課題は一気に解決するかもしれません。ベンゼマを観たい気持ちもあるのですが、あと1歩でTOP4レベルに辿り着くように見えるポチェッティーノ戦術の向上のほうにより興味が湧きます。

前線を活性化するためには、中盤センターの攻撃への関与度も高める必要があるでしょう。2月のベストメンバーは、こんな顔ぶれではないでしょうか。最前線にエンクンク、2列めにノニ・マドゥエケ、コール・パルマー、スターリング、2センターはコナー・ギャラガ―とカイセド。マン・シティ＆スパーズの連戦と、リヴァプールとのカラバオカップ決勝が楽しみになってきました。

スパーズではトロフィーに手が届かなかったアルゼンチン人の指揮官は、チェルシーの1年めでイングランドにおける初戴冠を達成できるでしょうか。2年前のFAカップとカラバオカップで、いずれもPK戦で連敗した宿敵レッズとの一戦に注目したいと思います。勝利を得るための最大のポイントは、昨日のミドルズブラ戦でうまくいったハイプレスの成否でしょう。果たして…！