偏愛的プレミアリーグ見聞録

「We’re for sale」。シンプルかつ力強い見出しを立てた「テレグラフ」のクリス・バスコンブ記者が伝えたのは、リヴァプールのオーナーであるフェンウェイ・スポーツ・グループ（FSG）の売却に関する最新情報です。これまでは、あくまでも噂だったのですが、トム・ワーナー会長が売却の意向があることを認めました。

「われわらは売却を検討しているが、緊急性も締め切りもない。これはよくあるビジネスだ」。ワーナー会長のインタビュー記事を掲載した「ボストン・グローブ」は、FSGの筆頭株主であり、リヴァプールのオーナーでもあるジョン・ヘンリー氏が買収した日刊紙です。

2010年に、FSGがリヴァプールを買ったときの値段は3億ポンド（約501億円）。「テレグラフ」の記者によると、今回の希望価格は「少なくとも40億ポンド（約6673億円）」だそうです。このニュースをもって、何かが変わると決まったわけではありませんが、ボストン・レッドソックスも所有しているオーナーが利益追求にシフトすれば、補強予算に影響が出るかもしれません。

最近のリヴァプールにおける重要な変化のひとつは、ユルゲン・クロップ監督の大事なパートナーだったマイケル・ゴードン社長が、クラブの実務を手離したことです。業務の一部はビリー・ホーガンCEOが既に引き継いでおり、マイケル・エドワーズの後を継いだジュリアン・ウォードSDとともに、チームの強化を進める体制になっています。

近い将来、オーナーが変わるとなれば、レッズの現場を預かるSDとマネージャーにとって、悩ましい状況を迎えることになるかもしれません。プレミアリーグで6位に沈んでいるチームは、主力の高齢化が課題になりつつあります。

ミルナーは36歳、ヘンダーソンは32歳。チアゴ・アルカンタラ、フィルミーノ、マティプ、ファン・ダイクは31歳になり、サラーとアリソンも30歳です。ベテランに加えて、成長が見込めないチェンバレンとナビ・ケイタも、決断すべき時が迫っているようです。

地元メディア「リヴァプール・エコー」に寄稿したトレンドライターのマーク・ウェイクフィールドさんは、1月のトランスファーウィンドウをパーフェクトというためには、3人の獲得が必要と主張しています。ひとりめは、以前から噂があるジュード・ベリンガム。ドルトムントとの契約が2025年まで残っている19歳を獲るとなると、高額の移籍金は必至です。

「ドルトムントは冬には出さない」「2024年まで手元に置こうとしている」など、さまざまなネタが乱れ飛んでいるベリンガムについて、「ESPN」「マルカ」は、「レアル・マドリードはリヴァプールに対抗するのは難しいと考えている」「8700万ポンド（約145億円）を用意すれば、話がまとまる可能性がある」と報じています。

2人めのターゲットは、チェルシーのメイソン・マウント。レッズが動いているといわれる候補のひとりとはいえ、チャンピオンズリーグを目前に控えた冬のマーケットはないでしょう。契約延長交渉の停滞を根拠にしているようですが、2024年まで残っているなら、オフシーズンに決めれば問題なしでしょう。

3人めは、ナポリの新鋭FWフヴィチャ・クヴァラツヘリア。セリエAで12試合6ゴール7アシストという数字を残している21歳は、CLのリヴァプールとのホームゲームでアシストを決めています。いやいや、夏にナポリに移籍したばかりで、さすがに獲れないでしょう。よく見たら、見出しに「Three dream transfers」とあります。なるほど。確かに3つともドリームです。

チームにフィットしている彼らを狙うより、バルサで絶対的な信頼を得られていないフレンキー・デ・ヨングや、来季のハマーズに新たなチャレンジを見出せないデクラン・ライスのほうが可能性が高そうです。いずれにしても、オーナー交代という大きな変革の前に、次世代へのスイッチを進めるべきでしょう。

トム・ワーナー会長のコメントをチェックしていたら、ひとつだけ気になる発言があったので、最後に触れておきたいと思います。「ひとつの結果として、長期間にわたって私たちが管理を続ける可能性がある」。つまり、売却は必須ではないということですね。この話は、オーナー候補が現れるまでは、しばし静観という構えでよさそうです。