2025.09.13 リヴァプールの話題
7億1000万ポンドのビッグサマーは1年前にスタート…現地記者が伝える「リヴァプールの勝算と誤算」

「テレグラフ」のクリス・バスコム記者が「リヴァプールが4億ポンドを費やす余裕があった理由」というレポートを配信した翌日、「アスレティック」のジェームズ・ピアース記者が「7億1000万ポンドを投じた移籍市場、かつてない夏」と題したインサイドストーリーをリリースしました。読み比べると、新戦力の獲得と主力の売却の大半は、想定通りだったことがわかります。
「テレグラフ」によると、ビッグサマーの始まりは1年前だったそうです。マイケル・エドワーズCEO、リチャード・ヒューズSD、アルネ・スロット監督の3人で、2025年に向けたマスタープランを策定。彼らがターゲットを1年後に置いたのは、「クロップが遺したチームの解体は愚挙」「将来の目標を定めるためには、これから1年のデータが必要」という合意があったからです。
この話を読んで絶句したのは、スロット監督がチームをハイレベルにするのがプランの前提にあったことです。就任当初から絶大な信頼を得ていた指揮官は期待に応え、プレミアリーグを制覇。「われわれは、この夏に獲得する選手たちのために、ポケットマネーを貯めておくつもりだった」…経営ボードのとあるメンバーが、すべて予定通りだったと強調しています。
マスタープランがあったため、ヒューズSDのチームによるターゲットのリサーチはスピーディーで、シーズンが終わる頃には軸となる選手を獲得できると確信していたそうです。レアル・ソシエダでプレイしていた頃から注視していたイサクと、11月のチャンピオンズリーグのレヴァークーゼン戦で強烈な印象を残したヴィルツは、彼らの長期的なターゲットでした。
バイエルンとのヴィルツ争奪戦は、リヴァプールが何を期待しているかを明確に伝えたスロット監督が決め手になったのですが、スタッフの情報戦の勝利ともいえるでしょう。「ニューカッスルからハイジャック」と報じられたエキティケも、ヒューズSDが1月からコンタクトを取っており、アンフィールドでのチャレンジを望んでいるとわかっていました。
ニューカッスルとマンチェスター・ユナイテッドのアクションに横槍を入れなかったのは、結末が見えていたからです。ケルケズも早期に押さえており、父親に「ヒューズがインドに行けといったら行く」といわせるほどの信頼関係を構築しています。彼らがより注力したのは「ロバートソンを残留させ、ツィミカスは放出」という指揮官の希望を実現させることでした。
ジェレミー・フリンポンは、サラーがアフリカネーションズカップで不在になったときの代役という想定でもあります。新戦力の人選と移籍金の額は、すべてロジカルに整理されており、彼らの勝算に基づいています。売却した選手のほうも、ダルウィン・ヌニェス、ツィミカス、ケレハーは予定通りで、クアンサーは「買い戻し条項で将来の利益を守れればOK」という判断です。
泣く泣く手離したように見えるルイス・ディアスは、1年前から移籍したがっており、マン・シティにフリアン・アルバレスとのスワップを持ちかけて断られたという経緯があります。当初からダルウィン・ヌニェスと同じく「いいオファーがあればゴーサイン」というスタンスだったようです。個々の売買の背景と経緯を追っていくと、この夏のリヴァプールの誤算は2つだけです。
ひとつは、移籍金ゼロで見送るはずだったアレクサンダー=アーノルドで、1000万ポンドを手に入れたこと。もうひとつは、ディオゴ・ジョッタを失ったことです。投資総額は4億4900万ポンド、売却益は最大2億6000万ポンドで、赤字は1億8900万ポンド。テレビ放映権料の増額と新たなスポンサーフィーで、何割かをカバーするという算段です。
マイケル・エドワーズが全体の戦略を統括し、入念なリサーチでターゲットを定めたヒューズが巧みなコミュニケーションで信頼関係を構築。スロットがコンセプトと戦術を語って口説き落とし、それでも迷う選手にはファン・ダイクが電話でアプローチ…今のレッズは、プレミアリーグ史上最強の人事部を擁しているといえるのかもしれません。今季も早くも単独首位…!
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