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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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スタリッジとオリギ…負傷からの再起を図った2人のストライカーの明暗。

リヴァプールが、ダニエル・スタリッジとアルベルト・モレノの退団を発表しました。ロバートソンとミルナーがいる左SBで構想外となり、プレミアリーグ出場2試合のモレノの離脱は既定路線でしたが、復活が期待されていたスタリッジのほうは、往年のスピードが戻らないことを確認した今が潮時ということなのでしょう。「We will miss them of course, but we can say farewell with the best words possible: Guys, you leave as European champions(寂しく思うのはもちろんだけど、われわれは考えうる限りの最高の言葉で別れを告げることができる。あなたたちは、欧州王者として去るのだ)」。ユルゲン・クロップの粋な惜別の言葉に、苦闘を続けたストライカーに対する心からのねぎらいが込められているように感じました。

2013-14シーズン、プレミアリーグ29試合21ゴール7アシスト。華やかなりしSASの時代。ルイス・スアレスとのコンビが怖れられたスピードスターは、翌年から負傷と戦う日々を繰り広げることになります。筋肉のトラブルに端を発し、負傷したところをかばう動きが別な痛みを招く悪循環。太腿、靱帯、ふくらはぎ、ハムストリング、鼠蹊部、足首、膝、臀部と30回以上の故障に見舞われ、出場機会の半数以上を失いました。ユルゲン・クロップがやってきた2015-16シーズンの14試合8ゴールが最後の輝き。2017-18シーズンには環境を変えて再起を図るべく、WBAにレンタルに出されましたが、ゴールを決めることはできませんでした。勝負の年だった2018-19シーズンは、プレミアリーグ7節のチェルシー戦で決めたスーパーミドルが、長年応援してくれたサポーターたちに別れを告げる最後の1発となってしまいました。

直近3シーズンは途中出場が多く、プレミアリーグ53試合7ゴールという低調なスタッツに終わっています。ダニエル・スタリッジは、決してクロップのサッカーにフィットしない選手ではなかったのですが、度重なる負傷によって、スピードと運動量という指揮官が求めるエッセンスを失ってしまったのでした。駆け引きの巧さや左足のキック力は、前線に張ることを求められるクリスタル・パレスのようなクラブでは重宝されるかもしれませんが、レッズのオプションとしては機能しないことは明らかです。残念なお別れとなりましたが、クロップ監督の優しい言葉に乗っかることにしましょう。そう、あなたは間違いなく、欧州王者の一員でした。

今季のリヴァプールには、負傷の影響に苦しんだストライカーがもうひとりいました。24歳になったディヴォック・オリギ。クロップ監督が彼の才能を認め始めたのは、就任から4ヵ月めの2016年2月でした。プレミアリーグ26節のアストン・ヴィラ戦から8試合連続出場で4ゴール。スタメンに手が届くところにいたスピードスターに悲劇が訪れたのは、4月20日のマージーサイドダービーでした。フネス・モリのスパイクの裏が足首に直接入り、靱帯損傷でリタイア。翌シーズンはギアをトップに入れることを怖れたのか、思い切りのいいプレイが減ってしまい、最初の先発出場は12月までずれ込みました。プレミアリーグ34試合7ゴールは、決して悪い数字ではありませんが、コンスタントに活躍したとはいえない1年でした。

2017-18シーズンは、ヴォルフスブルクにローン移籍して31試合6ゴール。レッズに復帰した今季は、序盤戦でスタリッジが好調だったこともあり、出番に恵まれませんでした。次のシーズンが始まる前に、アルベルト・モレノとともに新天地を求めるのだろうか…。風向きが変わったのは、12月のマージーサイドダービー。3年前の忌まわしい記憶を振り払いたい一戦で、96分にピックフォードが外に出ようとしていたボールをピッチに戻すというミスを犯したとき、ゴール前で待ち構えていたのはオリギでした。ヘディングシュートが決まり、1-0で勝利。それから出番が増えたわけではなかったものの、自信をキープし続けたかったオリギにとっては大事な1発だったのではないでしょうか。

2月のワトフォード戦で今季2発めをゲットしたストライカーは、シーズンの終わりにラッキーボーイに変身しました。5月4日のニューカッスル戦で、86分に決勝ゴール。マン・シティの背中につきながら、ひとつも落とせない状況でチームを救う活躍を見せたオリギは、3日後のバルセロナ戦で最高の仕事をやってのけました。ヘンダーソンのシュートのこぼれ球を押し込む先制ゴールと、2試合トータルで逆転となるラストゴール。バルサ守備陣の油断を突いたアーノルドのトリッキーなCKに反応したボレーは、レッズサポーターが永遠に忘れない最高の一撃でした。そして、ファイナル。サラーがPKで決めた1点を守り続ける苦しい展開のなかで、87分に右のサイドネットに突き刺した美しい1発は、今シーズンの欧州王者を決めるクライマックスでした。

4月まで2ゴールに留まっていたベルギー人FWは、最後の3試合で4発の固め獲りに成功。来季もディフェンディングチャンピオンのスカッドに名を連ねるでしょう。クロップ体制スタートのシーズンでつまずいた2人のストライカーは、片やは武器を失い、もう一方は武器を思い出し、次のシーズンを違う場所で迎えることになります。フットボールの醍醐味と怖さを強く感じさせられた1年。「負傷さえなければ…」という言葉は、2人が過ごした苦しい時間を変える力を持ちえません。

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“スタリッジとオリギ…負傷からの再起を図った2人のストライカーの明暗。” への4件のフィードバック

  1. Macki より:

    更新ご苦労様です。
    スタリッジはSAS時代が最高で、サポーターはあの時の姿を追ってしまったのかもしれません。そんな私もその一人です。クロップ時代も流石ストライカーと思わせるプレーもありましたが、レッズが以前のレッズではなくチームとしての完成度をさらに上げていくとなるとスタリッジは合わないのかもしれないですね。まだまだ戦える年齢ですし、彼を必要とするチームはあるでしょう。パレスは面白そうですね。新天地の活躍を期待したいと思います。

  2. タムコップ より:

    チェルシー戦のスーパーミドルはもちろん、今期のCLグループリーグ一節PSG戦で決めた先制ヘッドが無ければ優勝は無かった。
    13〜14シーズンの眩さは遂に戻らなかったですが、スタッヂのことは忘れない。
    新天地で、あのキレッキレのプレイを新しいサポーターに見せつけてほしい。
    数々のゴールショーをありがとう、『レジェンド』!!!

  3. プレミアリーグ大好き! より:

    スタリッジやオリギはレッズに来た当初、スピードが売りの選手の記憶でした
    しかし二人とも靭帯損傷でまるで別人のプレースタイルに変わってしまったようにみえます
    過去にオーウェンもケガから持ち味のスピードで勝負しない選手に変わってしまった例もあるので、靭帯損傷はスピード型の選手には辛いケガなんでしょう

  4. ガナユ より:

    PSG戦のスターリッジのゴールが無ければいまのリバプールがないと思うと、スターリッジは今シーズン前半のラッキーボーイでしたね。

    オリギは、CL決勝でパスとドリブルのミスを見て大丈夫かな….って思ったら正確なキックでゴールを決めてよくわからない選手ですね(笑)

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