偏愛的プレミアリーグ見聞録

リヴァプールの公式サイトはまだ発表しておりませんが、「デイリー・ミラー」の記事が事実なら、正式にサインした後にクロップ監督やご本人のコメントが掲載されるでしょう。プレミアリーグNo.1のCBヴィルジル・ファン・ダイクが、契約延長に合意したと報じられています。2018年1月、DFとしてプレミアリーグ最高額の7500万ポンドでサウサンプトンから移籍したファン・ダイクは、当初からフィジカルの強さを発揮しておりましたが、その価値をリーグ全体に知らしめたのは2018-19シーズンになってからでした。

シーズンを通じて、1対1で抜かれるシーンはゼロ。逆サイドのアーノルドのポジションまで修正させる的確なコーチングで最終ラインを統率し、昨季プレミアリーグ最少となる22失点の堅守を構築しました。空中戦の強さは、自陣でも敵陣でも武器となり、プレミアリーグ27節のワトフォード戦では5年3ヵ月ぶりの1試合2ゴール。CLラウンド16のセカンドレグ、アリアンツ・アレナで行われたバイエルン戦では、ホームのサポーターたちを沈黙させる貴重な決勝点をゲットしています。ビッグイヤー獲得という輝かしい成果は、アリソンとともにレッズの守備を変えたCB抜きには語れないでしょう。

UEFA最優秀選手となったオランダ代表キャプテンに契約延長の話が持ち上がったのは、レッズにおける獅子奮迅の活躍ばかりが理由ではなさそうです。マンチェスター・ユナイテッドが、ファン・ダイクを超える8000万ポンドで獲得したハリー・マグワイアは、サラリーにおいても週給18万ポンド（約2360万円）という好待遇で迎えられており、週給12万5000ポンド（約1640万円）のファン・ダイクを大きく引き離しています。リヴァプールは、世界最高という評価にふさわしいサラリーが必要と考えたようで、2025年までとなる新契約は週給20万ポンド（約2620万円）と大幅にアップ。クリーンシートの数など、成果に応じたボーナスも設定されていると報じられています。

ファン・ダイクのギャラが年俸17億円以上になるということについては、ご本人もサポーターも胸を張れるニュースと素直に盛り上がれるのですが、ビッグクラブで実績がなかったマグワイアに一流の数字を乗せたマン・ユナイテッドの判断には一瞬言葉を失います。

契約の残り年数や年齢、バイアウト条項の有無などさまざまな要素が加味される移籍金と違って、サラリーは単純に選手同士を比較する材料になりやすく、ロッカールームの空気や選手のモチベーションに影響を及ぼすことがあります。アレクシス・サンチェスで懲りたはずのクラブが、むやみに固定の人件費を増やせば、自らの首を絞めるだけでなく、クラブ経営のあり方をネガティブな方向に導くことにもなりかねません。

とまあ、いろいろ考えさせられますが、マグワイアがサラリーにふさわしい活躍を見せてくれれば、笑ってスルーできるお話です。まずはファン・ダイクに関する次のニュースを待ちましょう。2025年のシーズンの終わりに、33歳になったオランダ人CBが、新たなトロフィーを掲げている姿を見られればと願っています。そして彼と抱擁を交わしているのが、レッズ再生の主役となったユルゲン・クロップであることも。