イギリスの記者さん、「アラダイス解任危機」はともかく「モイーズ新監督就任!?」は言い過ぎです!
アップトン・パークに、アラダイス監督がやってきたのは2011年のことでした。当時はチャンピオンシップ(2部相当)に所属していたウエストハム。かつてボルトンをプレミアリーグに引き上げ、4年後にはUEFAカップ出場にまで持っていった「昇格請負人」は、わずか1シーズンで彼らをプレミアリーグ昇格に導きます。アラダイス体制のプレミアリーグファーストシーズンは10位。ここまでは、ウエストハムの経営陣も、弱っている中小クラブ立て直しに才能を発揮する監督の招聘を、いい選択だったと自画自賛していたことでしょう。さあ、問題はここからです。
人間、歳をとると、ついつい自らの成功体験に沿ってモノを考えてしまいがちです。アラダイス監督のいちばんの成功、2004-05シーズンのボルトン6位(中田英寿の加入前年です)で、彼が何をやったかといえば、「大物集め」。スペイン代表でキャプテンまで務めたフェルナンド・イエロ、セネガル代表のストライカー、エル・ハッジ・ディウフ。ナイジェリアのファンタジスタ、ジェイ=ジェイ・オコチャ。力に陰りがみえてきた下り坂のベテランや、スランプにあえいで株価暴落中の選手を安く集めて再生させるという手段が見事にはまり、その実績を買われてニューカッスル監督へとステップアップしたのでした。
残念ながら、アラダイス監督は、二匹目のドジョウの存在を信じてウエストハムでも同じことを考えたようです。リヴァプールで不発に終わったアンディ・キャロルに、同じくレッズをはみ出してしまったスチュワート・ダウニング。不振にあえいでプレミアリーグ降格争いに巻き込まれた昨季は、シーズン途中にイタリア代表のMFノチェリーノ、FWボリエッロ、チェルシーで鳴かず飛ばずだったジョー・コールまで寄せてきて、何とか13位できわどく残留。しかしながら、活躍が期待された彼ら5人のゴール数は、全部足してもわずか6です。チャンピオンシップ時代からチームに貢献しているキャプテンのケヴィン・ノーランひとりにも及ばないスコアを見せられては、金を出した経営陣が不信感を抱くのも仕方がないでしょう。
基本的に、アラダイス監督は「ミスター・ボトム10」なのでしょう。やっているサッカーは、古きよきイングランドサッカー、キック&ラッシュ。上位を困らせる、徹底度の高い「弱者のサッカー」はできても、ニューカッスルを12位に終わらせてわずか1年でサヨナラされたように、プレミアリーグの上位で戦うための術は持ち合わせていないのだと思います。ウエストハムが、「何とかプレミアリーグに復帰させてください」と弱音を吐いているうちはいいのですが、いざミッションを達成して「さあ、次はどうやってチームを成長させましょうか?」と元気になると、大物集め、ロートル再生以外にアイデアなし。これではちょっと…となってしまうわけです。
デイリーミラーの記事がどこまで事実なのかはわかりませんが、既にアラダイス監督に解任リーチがかかっているというのは納得です。サポーターに回答を呼びかけた彼らのアンケートでは、「アラダイス残留派30%、モイーズ就任派60%(残りの10%は誰でしょう。モウリーニョとか!?)」という数字が出ているそうで、タブロイド紙はそれみたことかとばかりに鼻息を荒くしています。
しかしですね、ミラーさん。肝心の、モイーズ氏の意向を忘れてはいませんか?「The chosen one~マンチェスター・ユナイテッドに選ばれし男」は、解任直後に、CLやELに出場するようなクラブからのオファーを「魅力がない」と断ったと聞いています。「ミスター6位7位」でやりくり上手の彼がくれば、ウエストハムは絶対強くなると思いますが、おそらくモイーズさんは話があっても断るでしょう。断るはずです。いや、どうなんでしょうね。書いてて、自信がなくなってきました。ウエストハムを率いて、3年でエヴァートンを抜いたりすれば、モイーズさんにとっては会心のリベンジですよね。見てみたい気もするのですが…。
いずれにしても、プレミアリーグファンとしては、ロンドンが熱くなるのは大歓迎です。アラダイス監督もキャラが立ってておもしろいのですが、ここは私も「モイーズ支持派」に一票のっかるとしましょう。…結局、タブロイド紙の思うツボですね。まあ、いいか。
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