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新監督には「こねくり回し屋」ラニエリ…どうなるレスター、大丈夫か岡崎慎司!

「招聘された新監督がそれなりのビッグネームか、ナイジェル・ピアソン前監督よりもプレミアリーグで指揮を執った経験が豊富な人物であれば、レスターは次のステージにいくために残留に成功した指揮官を解任したのだと捉えたい」。レスター・シティで指揮を執っていたピアソン監督の突如の解任に際しての記事で、私はポジティブに解釈したいと書いたのですが、後任探しは思いのほか時間がかかりました。オランダ代表監督を辞任したばかりのフース・ヒディンク、ウェストハムとの契約が終わったサム・アラダイス、アイルランド代表監督のマーティン・オニール、ドルトムントを離れたユルゲン・クロップ、選手時代にレスターでプレミアリーグを戦ったことがあるボルトン監督のニール・レノン。挙がってきた名前はビッグネームかレスターゆかりの人物だったのですが、どれも現実感に欠けていました。

ウェストハムを追われたビッグサムや、ドーハにいるミカエル・ラウドルップのような人選ならおもしろいと思いながら成り行きに注目していたのですが、発表になったのは、ギリシャ代表をお払い箱となったクラウディオ・ラニエリでした。うーん、これは微妙です。2004年にモウリーニョ監督が招聘される前にチェルシーを率いており、プレミアリーグ経験があるのはポジティブな要素です。とはいえ「ティンカーマン(こねくり回し屋)」という冴えないニックネームは、メンバーをいじりすぎると批判されていたチェルシー時代に付けられたはずです。

監督としてのキャリアの初期に、下部リーグにいたカリアリとフィオレンティーナをセリエA昇格に導いたのが、ラニエリ監督が中堅以下のクラブをステップアップさせた数少ない手柄です。これ以外は、「解任が多い監督」「ユヴェントス、ローマ、インテル、チェルシーなどそれなりの戦力を擁するチームを率いたのに、リーグ優勝が一度もない監督」というイメージしかありません。よくいえば「柔軟性が高く、バランス感覚があり、現有戦力を最大限活かすアンチェロッティタイプ」。悪くいえば「自らのスタイルがなく、ヴィジョンやカリスマに欠ける監督」といったところでしょうか。基本的には、課題解決型なのだと思います。チームに何らかの問題がある場合は、それを解決・改善して結果を出すことができるのですが、未来の行き先を指し示してチームを引っ張っていくタイプではありません。

サウサンプトンが2部からクラブを引き上げた功労者のナイジェル・アドキンスを解任し、若手育成に積極的で大胆な手が打てるポチェッティーノ監督を一本釣りしたときのような、クラブとしての狙いはないように見えます。そうはいっても経験豊富な監督ではあるので、そこそこのチームづくりをして初年度にプレミアリーグ残留を果たすことはできるかもしれませんが、契約期間の3年を全うできるかといえば、何ともいえません。以前にレスターでプレイしていたトニー・コッティさんは、「スカイスポーツ」のインタビューに応えて「下位クラブを率いたことがあり、レスターを知る人物を呼ぶべきだった」と語っています。

「レスターは、昨季プレミアリーグの終盤戦でいい仕事をしたピアソンを解任するというリスクを負った。今、ラニエリを招き入れるのは彼らにとって大きなギャンブルだ。ラニエリにはプレミアリーグでの経験があるが、当時はチェルシーという優勝をめざせるチームで采配を振るっていた。レスターとはまったく異なる。トップクラスのチームとプレミアリーグ残留を争う下位チームを率いるのは違うことだと思う。スタートが悪かったから、ファンはそわそわし出すだろう」
「私は、レスターで経験があるニール・レノンやマーティン・オニールの復帰を願っていた。この街を知っており、ファンの気持ちを理解する人物だ。ラニエリはビッグネームだが、クラブをわかっている人間にまかせたほうがいいケースがある。レスターのOBや監督経験者が復帰できなかったのは残念だ」(トニー・コッティ)

今季からレスターに加わる岡崎慎司にとっては、可もなく不可もなくでしょう。イギリス系の監督のなかには、大柄でフィジカルが強いストライカー志向の監督もいますが、イタリア人のラニエリ監督なら、小さくて敏捷性のある選手を一も二もなくサイドにまわしたりはしないはずです。マインツではカウンターからのゴールも多かったので、速攻型のチームになるのであれば、やりやすいかもしれません。

昨季プレミアリーグの最終盤、9戦7勝という驚異的な追い込みをみせて残留を勝ち取ったレスター。ジェイミー・バーディやカンビアッソを中心とした攻撃的なスタイルは失われてしまうのでしょうか。いやいや、懸念はあるものの、すべてはこれから。岡崎慎司の門出でもあり、ここは前向きに百戦錬磨の監督に期待することとしましょう。1990年代後半から2000年にかけて、リーグカップを2回制しているレスターが、栄光の時代を取り戻すべく新しい体制でプレミアリーグTOP10をめざします。(クラウディオ・ラニエリ 写真著作者/Майоров Владимир)

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“新監督には「こねくり回し屋」ラニエリ…どうなるレスター、大丈夫か岡崎慎司!” への3件のフィードバック

  1. 青の爺 より:

    アブラモビッチの前のケン・ベイツ時代を忘れていませんか?
    テリーやランパードを育て、クディチーニを抜擢し、グジョンセンやガラス、グロンキア等有名でない若手を見出してきたのはラニエリです。
    あの当時少ない予算でうまくやりくりしてCL出場権まで取ってくれた。
    育てる力も見る力もある監督か、と。
    最近はよく知らないし、ビッグクラブで優勝狙うには厳しいかもしれない。
    でも、弱小・中堅どころを育ててくれる監督としては有能だと思います。

  2. makoto より:

    青の爺さん>
    なるほど。ランパードについてはよく覚えているのですが、私がクディチーニやグロンキアをあまり高く評価していなかったこと、チェルシーではアブラモヴィッチさん以降の印象が強いこと、プレミアリーグを離れた後にこれといっためざましい成功がないことなどから、評価を下げていました。最後に中堅以下のクラブを率いたのは15年以上前でもあり、今は懸念のほうが先に立っています。シーズンが始まって、彼らが快調に走り出したら、このご指摘を思い出すでしょう。結果が出たらいさぎよく「すみませんでした」と頭を垂れる所存です。

  3. 青の爺 より:

    ご返信ありがとうございます。

    確かに良績を残したのは10年以上前なんですよね。。。
    ラニエリ以降、誰一人として育てる監督がおらず、生え抜きがほぼ居ない。
    モウリーニョに少し期待したものの、昨シーズンはメンバー固定でアケをほぼ使わず、おまけにファルカオときた。バンフォードは戻さないんだろう・・・と。
    モウリーニョは所詮モウリーニョでしかない、と思うと同時に
    ラニエリの頃を思い出すオールドファンのただの郷愁かもしれません。

    とまあ、育成能力も持つファンハールをもってきた某チームを羨んでいるというのは否定できません(笑)。

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