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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

悪態、反論、ジョーク禁止令…現状打破を図るモウリーニョ監督の最新動向をチェック!

マンチェスター勢がチャンピオンズリーグで揃って敗戦、プレミアリーグファンとしては残念なスタートとなりました。本日、登場するのはロンドン勢。アーセナルはアウェイでディナモ・ザグレブ、チェルシーは本拠地スタンフォード・ブリッジでマッカビ・テルアビブとの対戦です。マンチェスター・ユナイテッドはアウェイ戦で敗れ、マンチェスター・シティはユーヴェとはいえホームゲーム、しかも双方先制しながらの逆転負け、90分で1点しか取れず。厳しい結果だったのは確かですが、グループステージは全部で6試合あります。「プレミアリーグが弱くなった」「UEFAランキングでセリエAに抜かれる」とナーバスになるのは、結果を出せなかったのを12月に見届けたときでいいでしょう。

マンチェスター勢にひとつ感じたのは、油断とまではいいませんが、両チームの監督には「負けはないだろう」という自信があったのではないか、ということです。最終ラインに負傷者が出て、代えざるをえなくなったときに、ファン・ハール監督の選択はCBのブリントをルーク・ショーがやっていた左サイドにまわしてCBロホ。コンパニを下げたペジェグリーニ監督の対応は、プレミアリーグで既に使われているデミチェリスではなく、これがクラブでのデビュー戦となるオタメンディでした。ファン・ハール監督がブリントのクロスの精度を活かしたかったのはわかりますが、やっとこなれてきたCBコンビをいじらず、SBロホのほうが安全ではあったと思われます。フェライニをセントラルで起用するなど、大事なゲームに普段やっていないことを持ち込んだ采配には大いに疑問がありました。

「あと5試合ある。勝負はこれから」とはいえ、ロンドンの2クラブまでがクロアチアとイスラエルのクラブに完敗するとなると、さすがに慌ててしまいます。心配なのは、チェルシー。セリエAで3戦未勝利だったユヴェントスが強さを見せたように、チェルシーはプレミアリーグの憂鬱を払拭するのか、あるいはロンドンダービーを前により深い泥沼にはまってしまうのか。さすがのモウリーニョ監督も、相当ストレスがたまっているようです。グディソン・パークでのエヴァートン戦では、敗戦後の記者会見を先にやらせてほしいとロベルト・マルティネス監督に要望。「自分の権限では変えられない」との返事にここには書けない言葉で悪態をつき、会見の冒頭で5分で終わらせるよう求めました。さらに、チャンピオンズリーグの前日会見では、優勝した翌年にチームが調子を崩して退任に向かってドライブがかかるとささやかれている「モウリーニョの3年め」について、以下のように反論しています。

「ポルトとインテルでは3年めはなかった。最初にチェルシーで指揮を執ったときの3年めは、FAカップとカーリングカップで優勝し、チャンピオンズリーグでは準決勝に進んだ。レアル・マドリードでは3年めにスーパーカップを勝ち、コパ・デル・レイでファイナルに進み、チャンピオンズリーグはベスト4だった。これらが私の3年めだ。愚かな質問はやめて、グーグルで調べてほしい」
「他のクラブでは、いい結果を手にしたことを思い出すのに、2、3、5、6、10年と振り返らなければいけない。私たちは3ヵ月だ。3ヵ月前にはイングランド最高のチーム、最高の監督、最高の選手たちだったんだ。…スタートはとても悪かった。しかし、われわれのトロフィーと歴史を誰も盗むことはできない。われわれは自分たちが何者であるかを知っている。イングランド王者だ」

イライラは伝わってくるものの、これは、ごもっともですね。2007年にチェルシーと契約解除したのは、4年めに入ってから。3年でクラブを離れたのはスペインだけです。また、最初の5試合ですべてを判断されるのであれば、マンチェスター・ユナイテッドは昨季のファン・ハール監督に就任3ヵ月で別れを告げなくてはなりませんでした。単年の結果のみでクビを宣告しなければならないなら、無冠だった「ペジェグリーニの2年め」は完全にアウトです。問題は、ここからどう立ち直るか。その意味では、こちらのニュースのほうにより興味が湧きます。モウリーニョ監督が会見でも「私たちはみんな笑っていないし、ジョークも飛ばしていない」と語っておりましたが、「練習中のジョーク、ふざけ合い禁止令」です。

暗いニュースが多いなか、サポーターのみなさんには「ムードが悪くなる。逆効果」という反対意見も多いようです。しかし私は、これはこれで悪くない打ち手なのではないかと思います。結果が出ない状況を打開すべく何かを明確に変えようとしたとき、人を変える、空気を変える、方法を変える、場所を変えるなどの選択肢があります。ファン・ハール監督なら、ミーティングの頻度や時間を増やして、「方法を変える」ことを選手にインストールしにいくかもしれません。クーマン監督は、食事会開催など「場所を変える」ことで一体感を高めるほうを選びそうです。

以前にハーバード大学で教えていた先生に伺ったのですが、かの大学では、重要な議論をする際に、会議室や教室ではなく、川のほとりにある寮にあるアウトドアのテーブルで実施することがあるそうです。狙いは、「場所を変える」ことで気分転換をしてアイデアを豊かにし、集中力をUPさせ、会議の印象を強めて議論した内容をより忘れがたいものにすること。煮詰まっているときには、明確かつ具体的に変化を起こすことが重要です。

モウリーニョ監督は、「空気を変える」方法を選びました。練習場が笑いを失うことによって、雰囲気や人間関係がぎすぎすする可能性もありますが、監督同様に現状に対して悔しい思いを抱えている選手たちが揃っている最高水準のプロ集団では、集中力が上がる効果のほうが高いのではないかと思ったりもします。この施策がいいカンフル剤になったのか、反対意見が妥当だったのかは、テルアビブ戦と次節プレミアリーグのアーセナル戦の戦いぶりが教えてくれるでしょう。

いずれにせよ、大事なのは「多少は選手の入れ替えを行うとしても、核となる戦力・戦術を拙速にいじるべきではない」ということなのではないでしょうか。プレミアリーグ王者となった今までの戦い方をあれこれ変えるのは、絶対うまくいかないとまではいいませんが、成功確率が低いギャンブルではあると思います。それを教えてくれたのは、自ら掲げたコンセプトを貫き、18シーズン連続でチャンピオンズリーグ出場圏内をキープと安定感随一のアーセン・ヴェンゲル監督です。こちらのチャンピオンズリーグ初戦にも期待しています。2チームとも、ぜひ、勝利を!(アーセン・ヴェンゲル 写真著作者/Gordon Flood)

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“悪態、反論、ジョーク禁止令…現状打破を図るモウリーニョ監督の最新動向をチェック!” への1件のコメント

  1. Uボマー より:

    とりあえずプレミアのクラブが一つ勝ってくれて良かった…。
    ペジェグリーニとファンハールは確かに相手を舐めてましたね。リーグ戦が好調というのも良いことばかりではないのかもしれません。

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