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「モウリーニョ監督を解任すべきではない」…イギリス紙「インディペンデント」が敢然と主張!

プレミアリーグ第10節のウェストハム戦でチェルシーが2-1と敗れると、週明けの新聞紙面はモウリーニョ監督解任の可能性を一斉に報じました。ただし、その多くは「解任すべし」といっているわけではなく、「次のリヴァプール戦に負けたら解任されるだろう」という予測です。アブラモヴィッチオーナーが、アンチェロッティやヒディンクといったクラブゆかりの名将に既にコンタクトを取ったと伝えるイギリスメディアもあり、逆にモウリーニョ監督がパリやインテルに次期監督の座を打診したとまで書いた新聞もありました。これらは事実なのかもしれないし、そうでないのかもしれませんが、実際に解任にならない限りは真相は藪の中。すべては憶測です。

メディアに限らず、ブックメーカーでも「次に解任される監督」のベットで、モウリーニョ株は急上昇。ニューカッスルのスティーブ・マクラーレン監督に次ぐ2位となってしまいました。そんな解任ムード一色のなかで、「解任されないに一票」ではなく、「すべきではない」と敢然と主張したメディアがあります。10月27日、「インディペンデント」は、「Jose Mourinho: In defence of the Chelsea manager, who should not be sacked no matter the result against Liverpool(リヴァプールに敗れたとしても、モウリーニョ監督をクビにするべきではない)」と題した記事を掲載。4つの理由を挙げ、昨季プレミアリーグ優勝監督を続投させるべきとしています。

彼らの主張を聞いてみましょう。「多くのサポーターが、モウリーニョ監督の手腕を評価し、支持している」「適切な後任候補が見当たらない」「これまでの実績、クラブに残してきた功績を信頼し、まかせるべき」「パフォーマンスが悪い選手たちの責任も大きい」。モウリーニョ監督のマネジメントや求心力に、すべての原因をなすりつけてはいけないとしながら、一方で「最初に変えるべきこと」としてこうもいっています。「He has to stop being so negative in public, it is clearly affecting the mood of the players. (彼は、オフィシャルな場でネガティブに振る舞うことをやめなければいけない。それは選手の気分に明らかに影響を与えている)」。4つの理由も、提言も納得です。彼らがいうとおり、チームを立て直すために最も重要なのは、選手のメンタルケアなのではないかと思います。最近のチェルシーを観ていると、失点の多くは、トラブルに遭遇すると一瞬でパニックとなり、判断力を失ってしまうことに起因しているようにみえるからです。

直近の試合を例にとってみましょう。今週開催されたキャピタルワンカップ、対ストーク。前半、ストークの守備陣がラインを高めにとっている間は、チェルシーはプレミアリーグ王者らしい質の高い攻撃を展開していました。昨シーズンがあまりにもよく、落差が激しいために批判も強いアザールにも体を張って通したスルーパスがあり、いつもにもましてアグレッシブにゴールに向かっていました。29分に、GKバトランドを抜き去ったラミレスの腰が残っていれば、無人のゴールにボールが転がっていたでしょう。決定機でシュートは枠内に飛んでおり、0-0で終わったのはバトランドが素晴らしかっただけです。最初の45分を観れば、チェルシーが先にゴールを奪うはずのゲームでした。

ところが、後半が始まって7分、たった1度のトラブルでチェルシーはやられてしまいます。ウィーランが中盤でラミレスを抜き去ったシーンは、ラミレスの不用意なチェックであり、避けなければならないプレイではあったものの、この程度のピンチはときたまあるものです。ところがその直後、ウィーランのドリブルをみたケーヒルがいたずらに下がってしまい、脇にいたズマはただ立ち尽くすだけ。中央にたったひとりで待っていたウォルターズにボールが渡ると、2メートルは悠に間隔を空けていたケーヒルは左半分のコースを切るぐらいしかできず、ワントラップボレーであっさり失点してしまいました。昨季の終盤、マンチェスター・ユナイテッドやアーセナルをゼロに抑えて追撃を封じた彼らなら、鬼気迫る表情で足元に入り、シュートを枠に打たせなかったのではないでしょうか。

アーセナル戦のジエゴ・コスタとガブリエウのトラブルの際も、ウェストハム戦のマティッチの退場でもそうでしたが、チェルシーは「プレミアリーグでいちばんレフェリーに多人数で詰め寄るシーンが目立つチーム」になってしまっています。判定にいちいち激しているうちに、「レフェリーのせいで不利になった」と他責傾向が強まり、集中力を自ら削いでしまうこともあるでしょう。モウリーニョ監督がFAを敵にまわし、罰金を積み重ね、メディアともいい関係を築いていないのは、選手の気分をポジティブにはしないと思われます。どうか、こらえてください。サポーターのみなさんは、プレミアリーグ制覇3回、FAカップ1回、イングランドリーグカップ3回という輝かしい実績を持つ名将を信頼しています。2013-14シーズンの後半、マンチェスター・シティとリヴァプールに上にいかれ、プレミアリーグ3位ながらも余裕を漂わせて「われわれはまだ優勝できるチームではない。ミルクが必要な仔馬だ」と語り、ファンを楽しませてくれていた時期を思い出していただければと願っています。チームにより明るい雰囲気を醸成できれば、近いうちに選手たちは本来の力を発揮し始めるでしょう。

モウリーニョ監督を信頼して、シーズン終了までまかせるべきであるという「インディペンデント」の論を支持しつつ、一方でこうも思います。今、アンチェロッティさんのようにモウリーニョさんと大きく異なるアプローチをする監督に代えれば、チームが浮上する可能性は高いでしょう。クリスタル・パレスとWBAを立て直したピューリス監督、昨季のパーデュー監督やシャーウッド監督の例を見れば、勝てなくなって自信を失ったチームに対しては、トップの交代はカンフル剤になりえるはずです。そしてもうひとつ、モウリーニョ監督を選手が信頼しなくなったとき、何を指示しても動かなくなってしまったときは、もはやそれまで、いち早く次を決めるべきだとも思います。マンチェスター・ユナイテッドがプレミアリーグ7位に沈んだモイーズ監督の末期は、未来のないサッカーへの不満とチーム内の指揮官批判が充満していました。そこまでいく前に、まずは選手のリフレッシュが必要なのではないかと考える次第です。

長い眼で見れば、ズマ、ロフタス=チーク、トラオレなどの若い選手に出場機会が増えたのはいいことです。不振の経験は、早期に潜在的な課題を解決する梃子にもなります。マンチェスター・ユナイテッドは、あの7位があったからこそ世代交代遅れについての危機感が一気に高まり、ファン・ハール招聘、大型補強、1年でチャンピオンズリーグ復帰という流れが創れたのだと思います。チェルシーも、冬に最終ラインと中盤に何人か入れたほうがよさそうですね。アスピリクエタかケーヒルがリタイアしただけで、最終ラインは相当不安な状態になってしまいます。1月が終わるまでの3ヵ月が勝負。4位まで勝ち点9差ですが、秋のこの程度のギャップなど、ひっくり返した事例はいくらでもあります。プレミアリーグが魅力的であり続けるために、そしてチャンピオンズリーグの4枠死守のためにも、モウリーニョ監督の逆襲に期待しています。

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“「モウリーニョ監督を解任すべきではない」…イギリス紙「インディペンデント」が敢然と主張!” への5件のフィードバック

  1. chelさぽ より:

    インデペンデントの記事は私も拝見しましたが、納得してしまいました。
    解任すべきではない理由は他に『モウリーニョの提出した補強リストにクラブが応えられなかった』というのもありました。
    監督・選手・クラブ全てに明らかな問題がある時点で、真っ先に責任を取らされる監督というのは酷な話だとは思いますが、これもフットボールの一部なのかもしれません。
    なんとなくですが、モウリーニョを解任しただけでは優勝はおろかCL出場ラインに届きそうには思えないので今シーズンは堪えてほしいとは思います。

    あと仮に解任されたとしたら後任監督がロフタス=チークをはじめとする若手の出場機会を確保してるかも心配しています。
    個人的にはロフタス=チークにはかなり期待しているので。

    まずは明日のリバプール戦に勝つことですね。
    負けるといよいよ解任が現実味を帯びてくるでしょう。ネガティブな話題が続いていますが応援していきます。

  2. makoto より:

    chelさぽさん>
    心配していることがひとつありまして。開幕戦の医療チームの件やプライベートで撮影されたけんなど、今季のモウリーニョさんはピッチ外でつつかれることが多く(ご本人の問題ではないこともあります)、その「印象」が、彼を解任する理由になってしまうことです。経営陣がブランドイメージを気にするなら、ない話ではないかなと思ってしまいます。chelさぽさんがおっしゃるとおり、こらえてほしいですね。

    最近増えてきた若手起用など、継続性をもって未来への布石を打てたらいいですね。クロップさんが引き継いだリヴァプールには、いいロジャーズ遺産がありましたが、今モウリーニョさんを代えると、後任はあまりいいスタートが切れないのではないか、と。

  3. リッキー より:

    しかし驚きましたね。チェルシーの不調がここまで長引くとは思ってませんでした。開幕当初は単にコンディションが悪く、シーズン後半に向けて徐々にコンディションが上がってくるかと思っていましたが。
    グーナーの私としては強いチェルシーは憎らしいですが、やはり上位にチェルシーの名前がないと寂しさも感じてしまいます。

  4. 青の爺 より:

    昨年のドルのように今シーズンは引っ張って来季は別監督がベストでしょう。

    少なくともチェルシーでのジョゼは賞味期限を終えた、と思います。
    メンバー固定のツケは疲労度だけでなく控えのモチベーションや育成にも響いている。
    出て行ったメンバーの活躍を見れば層が薄いのは自分で招いた事。
    昨年の優勝が決まってからのWBA戦でもメンバー固定を見た時は育てる気が一切ない事に絶望させてくれました。
    今は仕方なく若手も使っているが、どうせ来季補強して干す。

    さらに先日のマティッチ交代出場退場なんてのは戦術の冴えが落ちているように感じる。
    エヴァ女医の件と言い、老いたな…と思います。

  5. por より:

    最後の締め方良いですね(^^)

    チームがスランプの時って最初からいる人間じゃ気付きにくいですからね〜
    その違和感を指摘できる実績のある選手獲得して欲しいですね。
    状況は違いますがユナイテッドだとシュバインシュタイガー的な

    レンタルでランパード…難しいかな汗

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