偏愛的プレミアリーグ見聞録

「トッド・ベイリー、ベフダッド・エグバリ、そして株主のみなさん。この嘆願書は、グラハム・ポッターの解任を請うものです。何億ポンドも費やしたにもかかわらず、彼は15試合で2勝しかしていない。ファンは疲れ果て、打ちのめされています」

指揮官の解任を要求するレターに、10000人以上の署名が集まったと報じているのは「フットボールロンドン」。トム・コーリー記者は、「近年の監督のなかで最も不評だったマウリツィオ・サッリでさえ、これほどの扱いは受けていない」と記しています。

「就任したばかりの指揮官には、時間が与えられるべき」という声はあるものの、「それにしても戦績がひどすぎる」という反論に返す言葉はないでしょう。CLのグループステージが終わった後、公式戦15試合で2勝6分7敗。この間の6ゴールは、プレミアリーグとイングランドリーグに所属する92クラブのワーストで、マーカス・ラシュフォードの1/3という厳しい数字です。

「リーグ戦で24試合を終えたチェルシーは、TOP10のチームにまだ1度も勝っていない」と指摘するのは、「スカイスポーツ」のジョー・シュレッド記者。「プレミアリーグの1試合あたりで、平均3.9人の先発交代を行っている。これは歴史上、どのチームよりも多い」と続け、「47歳の指揮官は、自らのベストイレブンを知らない」と結んでいます。

15試合中10試合がノーゴールで、直近の公式戦6試合はジョアン・フェリックスの1発のみ。リヴァプール、フラム、ハマーズに3連続ドローまでは容認できても、抜擢したダトロ・フォファナをハーフタイムで引っ込めて敗れたセインツ戦は、サポーターの怒りを増幅させる負け方でした。

「負傷者が続出した」「選手たちとプレシーズンを過ごしていない」という説明も、前例を見るとトーンダウンします。2015年10月にレッズに招かれたユルゲン・クロップの初年度は、プレミアリーグ30試合で13勝9分8敗。2019年の終わりに火中の栗を拾ったミケル・アルテタは、冬のマーケットでパブロ・マリとセドリクしか補強できなかったなかで、9勝7分5敗と健闘しています。

対してグレアム・ポッターは5勝6分7敗。当時のリヴァプールとアーセナルは改善の兆しを見せていたのですが、今のチェルシーは月日を重ねるごとに戦績が悪化しています。冬の大型補強は、マネジメントを難しくしただけだったのでしょうか。リーズ、レスター、エヴァートン、ヴィラと続くボトム10との4連戦の結果次第では、サポーターの圧力は無視できないレベルに高まりそうです。

1週間前のプレミアリーグ24節で最下位セインツに敗れたとき、ポッター監督の続投の条件について、こう書かせていただきました。「スタジアムとロッカールームのいずれかから、火の手が上がらなければ」。トッド・ベイリーオーナーと経営ボードが、就任したばかりの指揮官には時間が必要と支持していたとしても、選手やファンの声に抗うのは至難の業です。

「彼はチェルシーで成功すると思っていた。でも、うまくいっていない。プレミアリーグは時間がないんだ。ポッターはクラブに足を踏み入れる前に、ファンを失ってしまった。トーマス・トゥヘルは就任1年目でチャンピオンズリーグを制覇した。その後チームが不調でも、ファンはトゥヘルの退任を望まなかった」

前任者との違いを強調するのは、クリスタル・パレスとアイルランド代表で活躍したクリントン・モリソン氏。「ブライトンでの仕事は素晴らしかった。彼は次のステップに進む準備ができていると思った」と、苦境のマネージャーに好意的な見方を示しながらも、経営ボードからの支持は留任の理由にならないといっています。

「ファンがクラブにいてほしくないと思えば、経営のヒエラルキーがあなたを信じるといっても関係ない。最後はファンが勝つ」

スタンフォード・ブリッジで開催される週末のリーズ戦は、必勝です。それも1-0ではなく、3-0、4-0、5-0で。発展途上の若き指揮官を救うアタッカーは誰でしょうか。、メイソン・マウント、ラヒム・スターリング、あるいは…？