イングランドのプレミアリーグ(ときどきチャンピオンズリーグ)専門ブログ。マンチェスター・ユナイテッド、アーセナル、リヴァプールetc.

偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

ニューカッスルと3年契約!ベニテス監督が成し遂げたこと、足りなかったこと

レアル・マドリードを指揮した翌年に、チャンピオンシップ所属のクラブを率いることになるとは、史上最高に急角度のジェットコースターなのではないでしょうか。プレミアリーグから降格となったニューカッスルの公式サイトが、ラファエル・ベニテス監督と3年契約を結んだと発表しました。2016年3月12日、残り10試合での指揮官交代劇は、あまりに遅かったといわざるをえません。

ピューリス、シャーウッドのようにシンプルな戦術を徹底させるタイプの監督や、ポジェのように情熱的な指導でチームとしてのモチベーションを高めていくタイプなら、短期間でも成果を出せるかもしれませんが、戦略・戦術に長けたベニテス監督には、その構築に時間がかかるぶん、もう1ヵ月は差し上げたいところでした。事実、最初の4試合は1分3敗と最悪、しかしラスト6試合は3勝3分と無敗です。ニューカッスルとの新しい契約にサインした喜びを語るベニテス監督は、最後の6試合を負けずに過ごしたことと、最終節のトッテナム戦に5-1で勝ったことをクラブの希望として強調し、「私は強いスカッド、強いチームを創れると確信している。ファンはそれを信じなければならない」と語っています。

さて、ニューカッスルの2015-16シーズンを簡単に振り返ってみましょう。プレミアリーグ17位のサンダーランドとわずか勝ち点2差での降格。どこかでひとつ勝利を積めれば、今頃はアラダイス監督の去就が話題になっていたところです。低迷の原因は、開幕8試合未勝利と出遅れたマクラーレン監督が戦い方を決められなかったこと、選手の離脱週数で2位リヴァプールを100週以上も引き離すぶっちぎりトップだった負傷者の多さ、そして最終盤にノリッジ、サンダーランド、アストン・ヴィラとの「シックスポインター」でひとつも勝てなかったことでしょう。アイダラ、グフラン、リヴィエール、オベルタンが長期離脱で使えず、アニータ、シッセ、コロッチーニ、ヤンマートらが入れ代わり立ち代わりでリタイア。GKに至っては、クルルがプレミアリーグ開幕から1勝もできないままシーズンを終え、9節から登場したエリオットも3月にアウト。ベニテス監督は、最後の8試合をダーロウに託すしかありませんでした。

新戦力のワイナルドゥムが11ゴール、ミトロヴィッチは9ゴールとまずまずの数字の残したものの、前評判が高かったフロリアン・トヴァンは何もできずにマルセイユにレンタルとなり、シッセは3ゴールと責任を果たせず。冬にテコ入れで獲ってきたドゥンビアはノーゴール、シェルヴィは今ひとつ、セヴェは負傷で2月上旬にいなくなり、機能したのはタウンゼントのみ。30試合以上出場したのがシソコとワイナルドゥム、エンベンバ、ヤンマートだけだったことが、最終ラインが落ち着かず、攻撃の形が定まらなかった理由のひとつではあるでしょう。

とはいえ、ベニテス監督が最後の6試合を4失点で抑え、リヴァプール、マンチェスター・シティ、トッテナムに負けずにシーズンを終えたのを見れば、マクラーレン監督は不運だったとはいえません。一方で、ベニテス監督もまた、上位相手に健闘しながらノリッジには2-3で敗れ、ヴィラに0-0、タインウェアダービーを1-1では降格も致し方ありません。守備を整備し、インテリジェンスを醸成することはできたのだと思われますが、接戦続きだった最終盤の残留バトルでニューカッスルに足りなかったのは、デフォーの情熱やカッターモールの獰猛さだったのかもしれません。

5月15日、トッテナムに圧勝したゲームで、ニューカッスルサポーターは「ベニテス監督に残ってほしい」と署名を集め、28000人の気持ちが指揮官の元に届きました。「私は、ファンの思いに心から感激している。この気分は、うれしいという言葉では表現できない。彼らは私が来てからずっと、熱心にサポートしてくれていた」。フリーだと宣言すれば、すぐにでもトップクラブから声がかかる名将の心を動かしたのは、タインウェアダービーのチャントと同じぐらい熱かったサポーターの声だったのでしょう。ニューカッスルは、最高の補強に成功しました。さっそくダリル・ヤンマートにユーヴェが興味を示しているという報道があり、多くの選手がトップリーグでプレイしたいとチームを離れるかもしれませんが、ベニテスさんなら、それでもチャンピオンシップを勝って1シーズンで戻ってきてくれるでしょう。2017-18シーズンのプレミアリーグでは、再びタインウェアダービーの熱気を堪能できると信じております。

おもしろいと思っていただけた方は、お時間あれば、下のブログランキングバナーをクリックしていただけると大変うれしいです。所要時間は5秒です。何とぞよろしくお願いいたします!


“ニューカッスルと3年契約!ベニテス監督が成し遂げたこと、足りなかったこと” への3件のフィードバック

  1. グローリーグローリー より:

    マドリーから追い出されるようにして退任させられた後のニューカッスルサポーターのサポートは身にしみたんじゃないですかね。ニューカッスルが順当にチャンピオンシップを制覇すれば、名将バトルロワイアル状態になってるプレミアリーグにベニテスも参戦することになるんですからとんでもないですね

  2. what a hit より:

    戦術オタクが時折見せる人間味と今回見せた男気がやっぱりラファ好きだなと思っちゃいますね。
    ペップ、モウリーニョ、コンテ、ベニテス、そして我らがクロップ。世界の名将達が偏愛的プレミアリーグ状態になっている現状はプレミアバブルの影響とは言いきれないイングランドの人々のフットボールに対する思いと育んできた文化の賜物ですね。
    僕もスティーブン・ジェラードのリバプールによってプレミアに出会う前までは、華麗で芸術的なクラブを観ていましたが、プレミアリーグに出会ってから全く興味がなくなりました(笑)
    プレミアリーグをこよなく愛するモウリーニョ、プレミアに憧れ世界最強の一つのクラブからきたペップ、2部に落ちても留まったベニテス、最近の欧州の舞台での影響力は少ないですが、やっぱり世界最高のリーグはプレミアだと言いたいですね。本当に楽しみなシーズンが始まりますね。

  3. makoto より:

    グローリーグローリーさん>
    1年後、そのとんでもないことが始まるのではないかと思います…。

    what a hitさん>
    そうなんですよね。今いる監督のみなさんがみんなプレミアリーグが好きなのは、サポーターの愛と熱狂に心を動かされたからだと思います。いやー、楽しみです!

コメントを残す