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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

プレミアリーグの偽SB革命…狙いが違うペップ、アルテタ、クロップ、ポステコグルーの戦術に注目!

「もはやフルバックは、ポジション用語として過剰で、矛盾したものになりつつある。彼らはとっくの昔に『バック(戻る)』であることをやめ、中盤に入ったため『フル』でもなくなった」

「欧州大陸で用いられる『ラテラル(側面)』は、守備的でも攻撃的でもなくニュートラルだが、アーセナルのオレクサンドル・ジンチェンコ、リヴァプールのアレクサンダー=アーノルド、マンチェスター・シティのリコ・ルイスの役割を捉えることができていない」

プレミアリーグにおけるサイドバックの役割の変化を指摘しているのは、「アスレティック」のリアム・サーム記者です。2016-17シーズンのコンテの下では、3-4-3のWBに抜擢されたヴィクター・モーゼスとマルコス・アロンソがドハマり。プレミアリーグを独走で制した2019-20シーズンのリヴァプールでは、アーノルドとロバートソンのクロスが猛威を奮いました。

カウンターからのアーリークロスや、縦に突破して上げる高速クロスを駆使するレッズの両サイドは完成形で、その延長線上に進化はありませんでした。リアム・サーム記者によると、昨季のプレミアリーグはサイドバックによるアシスト数が直近5年で最少だったそうです。マン・シティとアーセナルの2強が採用したのは、いわゆる偽SBでした。

This is how Premier League’s top four use their ‘full-backs’ – just don’t call them inverted(これぞプレミアリーグのTOP4のフルバック起用法~倒錯とはいわないでね)」と題されたレポートは、ペップ・アルテタ、クロップ、ポステコグルーのSBの動かし方を解説し、それぞれの狙いは違うと指摘しています。

今年の1月、ジョン・ストーンズがロドリの脇に上がる3-2-4-1を導入したペップにとって、偽SBは新しいアイデアではありません。バイエルン時代にフィリップ・ラームやダヴィド・アラバを中央に寄せた戦術家の狙いは、中盤の支配力の強化。昨季のマン・シティでは、デブライネとギュンドアンを前に出し、ハーランドのサポートを厚くするという目論見も含んでいました。

これに対して、ジンチェンコやトーマス、冨安健洋をセンターに寄せるアルテタは、求める仕事がペップとは異なります。ジンチェンコが語る自身の役割は、「ウイングを1対1にすること」。カイ・ハヴェルツがジェズスの脇に攻め上がるとDFは中央に絞り、マルティネッリへの対応は手薄になります。

そこでカイ・ハヴェルツの背後にいる偽SBのパスがウイングを動かせば、ゴールに迫る頻度が上がります。ハーランドが仕留める絵を描くペップと、サカやマルティネッリのフィニッシュを優先するアルテタは、似て非なる要求をしているようです。彼らの後に偽SBを採用したクロップは、2人と着想が異なり、アーノルドのクオリティの有効活用を重視しています。

「アスレティック」の記者の表現は、「ベストパサーに最高のパスを出させるために、ピッチの最高の場所に配した」。マージーサイドダービーで記録したファイナルサードへのパス22本は、2022年8月のクリスタル・パレス戦の26本に次ぐ記録だそうです。彼のスタッツは、偽SB導入の効果を顕著に表しています。

2022-23シーズンと比較すると、アレクサンダー=アーノルドの90分あたりのクロスは7.7本から4.5本に減少。その一方でシュートを生み出すボールは3.8本から4.4に増え、アシストの1本前のスルーパスも1試合あたり1本を超えるようになりました。左サイドから最も多くのクロスを上げているのは45本のロバートソンですが、右はSBではなく、ショボスライの29本です。

ペップ、アルテタ、クロップの狙いは明快ですが、ポステコグルーの変態SBを見ていると、ときどき頭がクラクラします。エメルソン・ロイヤル、ペドロ・ポロ、ウドジェがインサイドMFのポジションに絞り、イヴ・ビスマやパペ・マタル・サールが後ろをカバーするシーンは、彼らのセルフジャッジではなく新指揮官の戦術でしょう。

ホイビュルクをベンチに下げ、イヴ・ビスマとパペ・マタル・サールをセンターに配したのは、攻撃力があるSBとジェームズ・マディソンの強みを最大限に活かすべく、中盤の守備力を高めたかったからでしょう。「アスレティック」の記事には、ソン・フンミンとクルゼフスキに加えて、2人のSBもボックスに入ってクロスを受けようとする画像が掲載されています。

記者が解説したチームは4つですが、マンチェスター・ユナイテッドを率いるテン・ハフも、ルーク・ショーが復帰すれば偽SBを任せるのではないでしょうか。おそらくその狙いはアルテタに近く、メイソン・マウントをホイルンドの脇に上がらせて、ラシュフォードに対するチェックを軽減するため。チェルシーからMFを獲得したのは、この構想があったからだと思われます。

最後に、記者が触れなかったことを付記したいと思います。SBの変化のひとつとして、CBを本職とする選手をサイドにまわす布陣の増加があります。アカンジ、ナタン・アケ、ベン・ホワイト、冨安健洋。彼らを外に置く理由はシンプルで、ペドロ・ネト、ムサ・ディアビ、ボーウェンらに狙い通りのカウンターをさせないためでしょう。

プレミアリーグにSB革命が起こったことにより、オーバーラップを武器とするティアニーや、守備力より攻撃力のジョアン・カンセロはチームを離れました。チェルシーで指揮を執るポチェッティーノは、この流れに乗っかるのか。チルウェルはコルウィルにポジションを奪われるのか。新たな潮流を創り上げようとしているビッグ6の指揮官たちの采配に注目しましょう。


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