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なぜ、今…。史上最短の67日でイングランド代表監督を辞任したサム・アラダイスに思うこと

ビッグ・サムが、プレミアリーグ全体を震撼させるビッグニュースを提供してしまいました。イングランド代表監督、辞任。今となっては、選手の移籍に関する不適切な契約という醜聞の発覚が、ワールドカップ直前じゃなくてよかったというしかありません。就任後わずか67日という史上最短の辞任劇について、FAのグレッグ・ダイクチェアマンは「サム・アラダイスが契約解除に合意しなかったら、われわれは彼を解任していたということは、はっきりさせておきたい」と語っており、事実上の解任です。

「FAは正しいジャッジをした。イングランド代表監督になりたければ、潔白でなければならない。私は『テレグラフ』が発信した情報に怖れを抱いた。FAから年間300万ポンド(約4億円)のサラリーが出ていたにもかかわらず、彼はなぜ40万ポンドを得ようとしたのだろうか。そんなことをする必要などないと、誰もが思っているはずだ。ロイ・ホジソンとの間には問題はなかった。彼は潔白で、まっすぐな人物だった」(グレッグ・ダイク)

「解任」に至った経緯を振り返ってみましょう。トリガーは、おとり取材まで仕掛けた「テレグラフ」のスクープでした。アラダイス監督は、アジア系企業の代表者と称した記者から、FIFAが禁止している「第三者による選手の保有」のルールを回避しながら選手移籍の橋渡しをするアドバイザー就任の提案を受け、年額40万ポンド(約5400万円)という条件に転んでしまいました。さらにやりとりのなかで、FAや前任者のロイ・ホジソン、ガリー・ネビル前アシスタントコーチを批判したと伝えられたことも、代表監督としてふさわしくないという判断を後押ししました。サッカー界のルールから逸脱する行為について、「南米とアフリカ、欧州ではスペイン、ポルトガルなどみんなやっていること」と肯定し、「エネル・バレンシアも実は第三者に保有権があった」などと口にした人物を、サッカーの母国の指揮官に据えておくわけにはいきません。

メディアは周到なパスワークで事実関係を洗い出し、決勝ゴールを奪いましたが、報道を知ったFAの判断は縦1本の速攻でした。事情聴取後、すぐにアラダイス氏との契約を解除したダイクチェアマンとスタッフは、U-21イングランド代表のギャレス・サウスゲイトが今後4試合の指揮を執ると発表し、既に新監督のリストアップをスタートさせています。

こういう話があると、身体検査が甘かったのではないかという意見が必ず出ますが、事前情報を得たうえで緻密なリサーチをしていたメディアが10ヵ月を要して辿り着いた事実を、ユーロ2016が終わった後の数週間で把握できるとは思えません。「大きすぎる失態」「世界の笑いものになってしまった」と嘆きつつ、「現状にしっかりと対処しなければならない」と語った代表OBのアラン・シアラーがいうとおり、ご本人の資質に帰結させたうえで、次のことを考えるほかはないように思います。過去のルール違反が発覚したならまだしも、夢だったイングランド代表監督の座を手中にした指揮官が、名誉ある職にいながら新たな不正に加担しようとしていたことが残念でなりません。

「テレグラフ」は、同様の不正を行っていた人物が、プレミアリーグの監督経験者やアシスタントコーチ、GMにいるといっています。こういう話があると、いつも思うのは、「自分たちが住んでいる世界の常識で判断しないようにしよう」ということです。何しろ魑魅魍魎跋扈する興業の世界、私たちの知らないところで、ビッグマネーを削り取ろうとさまざまな怪しい人物が動いているのでしょう。しかし、そこでやりとりされているお金は、プレミアリーグを愛するファンやスポンサーが払ったものです。コツコツ貯金して高額なチケットを買ったファンから入ったお金が変なところに流れないよう、メディアやFAが撲滅を進めてくれるのを願うしかありません。さよなら、ビッグ・サム。残念です。

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“なぜ、今…。史上最短の67日でイングランド代表監督を辞任したサム・アラダイスに思うこと” への4件のフィードバック

  1. ガナユ より:

    サッカー界の汚い部分が前面に出てしまいましたね。イングランドの監督でさえ手を出すわけですからねぇ…そりゃFIFAも真っ黒なわけですわ。中枢から汚いですね。

    サッカーの価値を汚された気分です。プレーヤーサイドに非はないので余計歯がゆいですねぇ

  2. おハム より:

    この人間味が強いところが嫌いになれない所でもあります

  3. だしまる より:

    このおとり捜査すごいですね。取材レベルを超えています。サッカー界の闇や悪いところが、解決していくのはとてもいいこと。一方で、日本の代表監督選考でもそうですが、清廉潔白を求めすぎるのはいかがかと思うところもあり複雑です。勝てるけど人間的に問題ありがいいのか、真っ白だけど、話題性・勝負に勝てないのが良いのか。理想を求めすぎる世の中の風潮には少し疑問を感じます。

    FAの判断は正しい、そして、名誉ある職だからこそ、求められる水準が高いのはその通りですね。

    アラダイス監督が悪いのは前提として、ここまでのおとり取材って実行していいの?
    とも思います。異性を惚れさせる別れさせ屋の話を思い出しました。(笑)

  4. makoto より:

    ガナユさん>
    そうですね。元より怪しい人がいっぱい絡んでいた世界的なビッグビジネスを、ルールで縛って監視するのは難しいのでしょうね。こういう話を肯定はしませんが、日本の企業における常識で語ってしまうと、見誤るのかなとも思います。

    おハムさん>
    小さなクラブの監督という立場でやっていれば、注目されずにうまくやりぬけてしまったりするのかもしれませんね。

    だしまるさん>
    おとり捜査はグレーですね。状況証拠と小さな確証が揃っており、決定打がほしかったということなのでしょうが、お金の話はともかく、リップサービス気分でFAやホジソンの悪口言っちゃうぐらいはやってしまいそうですよね…。悪口いっても「そのぐらいいうでしょ、あの人は」で済みそうなモウリーニョさんをもってくるという手はいかがでしょうか(笑)。

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