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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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ヘンダーソン、フェライニ、マティッチ…今季プレミアリーグに復活を賭ける男たち【前篇】

不遇、不振、負傷…。昨季プレミアリーグで力を発揮できず、夏には放出の噂もありながら、いざシーズンが始まると別人のような活躍を見せている選手がいます。彼らを大別すると、「コンバートで復活タイプ」と「環境変化で自信回復タイプ」。前者は、リヴァプールでアンカーとして舵取り役を担うヘンダーソン、同じく中盤の底でモウリーニョ監督の信頼を得たマルアン・フェライニ。逆に守備を締めるミッションから前に出されて、球際の強さを活かしているネマニャ・マティッチもこちらのタイプでしょう。

後者の代表は、ペップの信頼を粋に感じてアグレッシブなプレイが戻ってきたラヒム・スターリングと、当初はうまくいっていなかったアレクシス・サンチェスのワントップを成功に導いたテオ・ウォルコット。ハリー・ケインの不振・不在を忘れさせてくれているソン・フンミンは、プレミアリーグ3戦4発と絶好調です。リヴァプールからクリスタル・パレスに移籍し、3ゴールを決めているクリスティアン・ベンテケは、どこまでゴール数を伸ばすでしょうか。昨季の後半戦は1試合平均1ゴールに届かない得点力不足で大崩れしたクリスタル・パレスは、3勝1分2敗で7位に食い込んでいます。

プレミアリーグ開幕から5節まですべてフル出場のヘンダーソンは、ポジショニングのよさ、ロングフィードの正確さ、ここぞというシーンでのミドルシュートでチームを牽引しています。2013-14シーズンにはSASを活かすパスワークでレッズを2位に押し上げ、翌シーズンも37試合6ゴールとチームの中心として活躍したものの、慢性的なかかとの痛みに悩まされた昨シーズンは17試合出場に留まりました。アンカーにはエムレ・ジャン、2列めにはララナ、ミルナー、フィルミーノがいたチームにヘンダーソンの居場所は見出しづらくなっており、ワイナルドゥムやマネが加わればキャプテンは不要なのではないかという声すらありました。ところが、エムレ・ジャンが出遅れた2016-17シーズン、ヘンダーソンが中盤の底を埋めることでチームは活性化。「トップ下は間に合っているのに、なぜワイナルドゥム?」といわれたオランダ代表の10番は、インサイドMFという新たなミッションのために呼ばれたのだとファンが気づくまでに、さほど時間は要しませんでした。ララナやワイナルドゥムが安心してゴール前に上がっていけるのは、後ろをケアしてくれる優秀なアンカーがいるからです。

5節のチェルシー戦の36分、ボックスの外、やや左から躊躇なく決めたスーパーミドルシュートは、ヘンダーソンの真骨頂です。クルトワの指先を越えてゴール右上に刺さった一撃は、レッズのリードを2点にするとともにチームの士気を高めました。難敵続きだった序盤戦を4勝1分1敗という好成績で切り抜ける原動力は、キャプテンの復活だったと思います。マティプ、クラヴァン、ロリス・カリウスと新戦力が多い守備陣も、プレミアリーグをよく知るヘンダーソンが目の前でパスコースを切ってくれることで、相当助かっているのではないでしょうか。彼が健在なら、昨季8位のレッズが2年連続で欧州へのチケットを取り逃すことはないはずです。

セットプレーで不利な状況に追い込まれたくないモウリーニョ監督は、上背のある選手を揃えたいとはっきりいっておりましたが、フェライニのアンカー起用は、CKへの対応や放り込みでのタワー役ばかりを期待したわけではありません。インサイドMFでは足元の不正確さやイマジネーションのなさが目立ってしまいますが、中盤の底に入ると運動量とフィジカルの強さという彼のアドバンテージが際立ちます。放出を主張していたサポーターも、今のフェライニなら合格点をつけるでしょう。CKの際にイブラヒモヴィッチ、フェライニ、スモーリングが並べばそれだけでも脅威です。昨季はプレミアリーグ18試合出場、先発は12試合のみだったベルギー代表MFは、既に先発5試合です。ファールを減らし、90分を通じてバイタルエリアを埋めきることができれば、キャリック、シュナイデルランとのポジション争いを制し続けるのではないかと思います。

ヘンダーソンやフェライニとは逆に、ポジションを前に上げて活躍しているのがチェルシーのマティッチです。アンカーにカンテが入ったチームは、ジエゴ・コスタの後ろにマティッチとオスカルが並ぶ布陣で開幕から3連勝。リヴァプールとアーセナルには負けたものの、熟成度が上がればチャンピオンズリーグ出場権は充分狙えるはずです。2014-15シーズン、プレミアリーグで優勝を果たしたチームでは35試合に先発したセントラルMFは、昨季は出場時間を減らしたうえに守備のミスが目立ち、モウリーニョ監督解任までのチームでは戦犯として名指しされたこともありました。

しかし、新シーズンは攻守の要として復活。力強いミドルシュートと馬車馬のようなドリブルも魅力のマティッチが、新しいポジションならではのアタックを見せたリヴァプール戦は印象的でした。62分、左からボックスに侵入し、売出し中のCBマティプを完全に抜き去ると、ニアに入ったジエゴ・コスタに最高のラストパス。手数をかけず、直線的にゴール前を奪おうとするコンテ監督のチームらしいファインゴールでした。コンテ監督は、彼を中心に据えたチームづくりを続けていくでしょう。単調になりやすいチェルシー攻撃陣のなかで、マティッチが自らゴールを決めてくれるようになれば、チェルシーは再浮上してくるのではないでしょうか。今後の活躍が楽しみな選手のひとりです。

この稿、長くなりますので、「ベンテケ、ウォルコット、ソン・フンミン…今季プレミアリーグに復活を賭ける男たち【後篇】」に続きます。

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“ヘンダーソン、フェライニ、マティッチ…今季プレミアリーグに復活を賭ける男たち【前篇】” への2件のフィードバック

  1. what a hit より:

    僕の推しメン、ヘンダーソンを記事にして頂くたびに嬉しく思っております。チェルシー戦のスーパーミドルしかり、今夜のフィルミーノへのダイレクトのラストパスもヘンダーソンの真骨頂でしたね。派手さは少ないものの基礎技術、特にキックの技術が高く、ビジョンが素晴らしいヘンダーソンはイングランドフットボールの典型のような選手で大好きです。SASと絡んでシャレオツなプレーもできるし、器用で面白い選手ですよね。
    今やピッチの真ん中で闘争心をむき出しにしてタックルをかまして高性能のパスで舵をとるSkipperに、最高ですね。
    チェルシー戦のミドルや、何年か前のシティ戦のミドルはまぐれじゃないです、ヘンダーソンの技術の高さの真骨頂です。makotoさん、ありがとうございます。

  2. makoto より:

    what a hitさん>
    いえいえ。私も好きな選手で、その理由のひとつがイングランドらしさなのはwhat a hitと同じです。細かくポジションをチューニングして、うまく中盤のバランスを取ってますよね。シーズンを通じて活躍してほしいなと思います。

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