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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

目標は今季の残留か、将来の栄光か…エヴァートンの新指揮官は残留請負人サム・アラダイス!

ウェイン・ルーニーがハットトリックを達成し、今季プレミアリーグで初めて2点差以上の勝利を挙げたウェストハム戦。グディソンパークのスタンドで、サム・アラダイスが10番のスーパーゴールに拍手を送っているのを見て、エヴァートンもようやく次の指揮官が決まったのだなと思いました。翌日、大方の予想通りビッグ・サムの就任発表。デヴィッド・アンズワース暫定監督の下で2勝1分5敗と停滞を続けていたチームは、そろそろ止血しないといけない頃合いでした。63歳になった元イングランド代表監督の18ヵ月という短い契約期間は、その役割があくまでもリリーフであることを物語っています。

中田英寿が一時期在籍していたボルトンをプレミアリーグ6位に押し上げ、2005-06シーズンのUEFAカップ(現ヨーロッパリーグ)でベスト32進出。ビッグ・サムの履歴が紹介されるとき、このエピソードが早いタイミングで語られるのは、多くの期間を残留を心配しながら過ごした指揮官がトップリーグを率いた経験がないからでもあります。ボルトンと結んでいた10年という長い契約を解除して挑んだ2007-08シーズンのニューカッスルでは、就任から8ヵ月後に戦績不振によって解任。「長年の夢だった」と語ったイングランド代表監督の座は、FAが禁じている選手の第三者保有ルールを批判したことや架空契約の仲介がおとり取材で判明したために、1戦1勝という数字しか残せず2ヵ月で終わりを告げました。

今度のクラブは、1888年にスタートしたフットボールリーグの最初のシーズンから参加している名門です。直近22年はタイトルから遠ざかっているとはいえ、イングランドリーグ優勝9回、FAカップ5回、1984-85シーズンにはカップ・ウィナーズカップを制覇。2016年3月にファルハド・モシリ氏が筆頭株主になると、エヴァートンは新スタジアム建設に乗り出し、夏には8人のインターナショナルに1億5000万ポンド(約228億円)を投じる大型補強を断行してビッグクラブの一角に食い込もうとしています。野心溢れるクラブと、5月にクリスタル・パレスを離れる際に引退の可能性を示唆していた残留請負人は、頭の中ではどうしても結びつきません。

2011年から4年率いたウェストハムでは、ロングフィードを多用する戦術が守備的でつまらないと批判されたものの、残留危機に瀕していた昨季のクリスタル・パレスではベンテケにハイボールを集める弱者のフットボールが功を奏し、チェルシー、リヴァプール、アーセナルを次々と倒して14位フィニッシュ。「エヴァートンは、放っておくと降格まである」と危機感を募らせるなら、ビッグ・サム招聘は的を射たテコ入れなのだろうと思います。しかし、クラブはワトフォードのマルコ・シウヴァ監督やバーンリーの躍進で注目が集まるショーン・ダイチェといった若い監督をターゲットとしていたと伝えられており、ルーニーやシグルズソンを加えたチームを欧州行きのチケット獲得圏内に引き上げられるタレントを求めていたはずです。一見、妥協とも受け取れる今回の指揮官招聘の是非については、プレミアリーグファンの間でも意見が分かれるのではないでしょうか。

賛成派は、「まずは残留」「守備が崩壊しているクラブにはうってつけ」。懸念を示す側の主張は「継続性を欠く」「ロングフィード主体の戦術ではプレミアリーグTOP10が精一杯」「戦力充実のクラブはいい指揮官を得れば立ち直るので、”とりあえず残留”という中2階は必要ない」といったところでしょうか。両者が一致しそうなのは、「ビッグ・サムのエヴァートンの降格はない」という1点です。今季の注目ポイントは、獲得したビッグネームと成長著しい若手選手が輝くかどうか、そしてシーズンオフには指揮官の残留があるかどうかでしょう。まずは、緒戦となるハダースフィールドとのホームゲームのスタメンに注目したいと思います。カルヴァート・ルーウィン、トム・デイヴィス、ジョンジョ・ケニー、ヴラシッチ、ルックマン、バニンギム、サンドロ・ラミレスといった将来が楽しみなプレーヤーたちが、ベテラン指揮官の下でうまく成長しますように…。

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