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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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モイーズ時代を確実に超える、マルティネス政権のエヴァートンの強さ

NUMBER Web」のコラムで、エヴァートンのロベルト・マルティネス監督が紹介されていました。スウォンジーを3部リーグからチャンピオンズシップに復帰させた後、2009年にウィガン・アスレティックの監督に就任。昨季はプレミアリーグで降格の憂き目にあったものの、強豪クラブを次々と退けてFAカップ優勝。今季、デヴィッド・モイーズ監督の後釜としてエヴァートンの監督に就任した40歳の青年監督です。

2002年から11年3ヵ月の長きに渡り、エヴァートンを率いていたデヴィッド・モイーズ監督が積み上げてきた実績と信頼は大きく、モイーズ前とモイーズ以降でプレミアリーグの平均順位が8位~10位は違います。モイーズ監督が、サー・アレックス・ファーガソンの後を受けてマンチェスター・ユナイテッドを率いることになったとき、大変なプレッシャーがあっただろうと想像しますが、モイーズの後を継いだマルティネス監督のストレスも、なかなかのものなんじゃないでしょうか。しかし、シーズンが始まってみると、エヴァートンはよくやっています。12月3日現在、6勝6分け1敗、プレミアリーグ5位。引き分けが多いところは昨季までのエヴァートンと同様ですが、就任間もない開幕からの3試合をすべて引き分けてしまったことを考慮すれば、その後の好成績は素晴らしいのひとこと。負け数の少なさはリーグトップです。

マルティネス監督のいいところ探しをすれば、前任者よりも攻撃的であり、かつ大胆であること。そして、同じ若手監督のヴィラス・ボアス監督やロジャース監督以上に、シンプルかつ明快であることが挙げられます。エヴァートンのDFラインは、レイトン・ベインズ、ジャギエルカ、ディスタン、コールマンで固定されており、昨季まで主力だったオランダ代表のハイティンハはベンチを温めています。中盤は、ギャレス・バリーとマッカーシーが中央を固め、ミララス、ピーナールがサイドから斬り込み、トップ下には売り出し中のロス・バークリー。不動のワントップにはロメロ・ルカクです。ここにオプションとして、イェラヴィッチを加えた2トップや、ナイスミスのサイドからの突破、攻撃に変化を呼ぶデュルフォーなどが入ってくる布陣。やろうとしているサッカーとその軸ははっきりしており、ブレません。

リヴァプールやトッテナムは所属選手が多く、ましてや今季、大量の選手を獲得したがために試行錯誤が必要だったヴィラス・ボアスさんのやりくりの苦労はわからなくはありませんが、軸が固まらないまま選手のポジションをあまり前後左右に動かすと、求められていることが曖昧になりがちで、チームとしての意志統一が図りにくくなるのではないかと思います。

ロジャース監督も、先日のハル・シティ戦では「ヘンダーソントップ下、新加入モーゼスと若手のスターリングがサイド」という、過去やらなかったフォーメーションを採用して失敗しました。コウチーニョを温存して、モーゼスをセンターでは使わない、という「消去法」でこうしたのは理解するものの、チーム内での経験値が低い選手同士で普段と違うことをさせると、往々にして機能しないことが多いです。ターンオーバーは、負けてしまっては意味がありません。そういえば、11月に日本代表と戦ったベルギー代表も、「トップ下アザール、SBフェルトンゲン」で失敗していましたね。外の選手を中で使うことひとつとっても、相応のリスクがあるわけです(決して両監督やベルギーを非難しているわけではありません)。

「チームに流動性を持たせて有機的に機能させ、どんなメンバーでも戦えるようにする」「軸を決めてブラさず、シンプルに戦う」というふたつの軸は、どちらか一方だけではいけないのですが、少なくとも前者は時間がかかります。マルティネス監督が「まずは戦い方を明確にして、徐々にオプションを増やして流動性を高めていく」と考えているならば、それは理にかなっており、少なくともここまでは成功しているのではないでしょうか。

もうひとつだけいえば、慎重居士だったモイーズさんに比べて、起用も大胆です。ルカクを獲得したときのイェラヴィッチからのスイッチや、デュルフォーの登用は的を得たもので、導入もフィットも早かったですね。マージーサイドダービーでベインズが負傷した時、DFのストーンズかハイティンハを入れて後ろを固めるのかと思いましたが、攻めのデュルフォー起用。これは、緊張感の高いダービーで1年めの監督が簡単にできる采配ではありません。そして、ここでいいプレイを見せた彼を、次戦のストーク戦では先発させ、バルサから来た活きのいい19歳はすかさず先制点をゲット。明日20歳になるバークリーを含め、若手をうまく使っており、中堅・ベテランのバランスもいいと思います。

さて、そんなマルティネス監督とエヴァートンは、現地時間の本日、マンチェスター・ユナイテッドと戦い、次戦、プレミアリーグ15節ではアーセナルと激突します。その意味では、この記事はささやかなマッチプレビューでもあると思って楽しんでいただければ幸いです。そういえば、今、相方がロンドンでアーセナル戦を現地観戦しているんですよね。向こうでスマホを失くしてしまい、先日のカーディフ戦の写真がなくなり、レポートできなかったのですが、ハル・シティ戦とエヴァートン戦は、現地の写真とレポートが届く予定です。そちらも併せてご期待ください。

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“モイーズ時代を確実に超える、マルティネス政権のエヴァートンの強さ” への2件のフィードバック

  1. プレミア大好き! より:

    うーん、マルティネスの選手時代を調べようと思ったら何故か辿りついてしまいましたが面白いブログですね。無料なのが勿体ないくらい。
    某雑誌編集者達にも見習って欲し(ry

  2. makoto より:

    プレミア大好き!さん>
    ありがとうございます!励みになります。

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