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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

戦略家の台頭と、解任ラッシュ…「2013-14 偏愛的プレミアリーグ最優秀監督」発表!

■プレミアリーグ所属クラブの順位と勝ち点・前年比較ランキング

本日のテーマは「今季最も優秀だった監督は誰か」ですが、これを書くに先立って、昨季、プレミアリーグに所属していたクラブの順位と勝ち点が今季どう増減したのかをチェックしてみました(文字が小さくてすみません)。最下位のクラブについてのコメントは控えましょう。上位を見ると、4位には武闘派の監督の名前も見受けられますが、トップ3は知的で戦略性に富んだ監督が揃っていますね。サウサンプトンとエヴァートンのジャンプアップは、まさに監督力だと思います。

さて、いよいよ「プレミアリーグ2013-14監督ランキング」です。こちらは、年末に前半戦の監督ランキングをやらせていただいたときと、同じ考え方でまとめました。「目に見える事実や数字、情報しか考慮しない」というスタンスを基本としつつ、「戦略」「戦術・采配」「モチベート」「育成・登用」「やりくり力」の5項目について、プレミアリーグ20クラブの監督を5段階評価。そこでトップ9に入った監督を、下記のランキングにピックアップさせていただきました。私が選んだ「プレミアリーグ最優秀監督」は、リヴァプールのブレンダン・ロジャース監督です!

■プレミアリーグ2013-14 通期監督ランキング!■
1位 ブレンダン・ロジャース(リヴァプール)
2位 マヌエル・ペジェグリーニ(マンチェスター・シティ)
3位 ロベルト・マルティネス(エヴァートン)
4位 トニー・ピューリス(クリスタル・パレス)
5位 マウリシオ・ポチェッティーノ(サウサンプトン)
6位 マーク・ヒューズ(ストーク)
7位 グスタボ・ポジェ(サンダーランド)
8位 ジョゼ・モウリーニョ(チェルシー)
9位 アーセン・ヴェンゲル(アーセナル)

今季を振り返ると、「戦略家台頭の1年」「監督解任ラッシュの1年」だったのではないかと思います。モウリーニョ、ペジェグリーニ、ロベルト・マルティネスといったコンセプチュアルな監督が、プレミアリーグ上位クラブに顔を揃え、マンチェスター・ユナイテッドの独走に終わった昨季とは打って変わって優勝争いが激しくなりました。一方、大混戦ゆえの現象でもあったのでしょうが、ラウドルップ、モイーズ、ヴィラス・ボアス、ヨルといった有能な監督が解任の憂き目に遭い、その数は何と9クラブ10人!そういえば、シーズン終了直後にトッテナムのシャーウッド監督の解任も早々に決まりましたね。「負けが込み始めたらクビ」というサイクルは、ひと頃のセリエAより速くなっている感があります。

ここからは、上位5人の監督のお手柄を解説させていただきつつ、選にもれた監督についてもトピックスを紹介できればと思います。極力フラットに選んだつもりではありますが、多少の類推が入っていることについてはご了承いただければ幸いです。

1位 ブレンダン・ロジャース(リヴァプール)
戦略   ★★★★★
戦術・采配★★★★
モチベート★★★★★
育成・登用★★★★★
やりくり力★★★★

シュクルテルをDFの軸に固定し、フラナガン、スターリングといった若手を育てながらフル活用。ホセ・エンリケのリタイア、シェルヴィとダウニングの移籍、イアゴ・アスパスとモーゼスの空振りといった数々の穴を見事に埋め切りました。今まで、プレミアリーグで華麗なパスサッカーをするクラブといえばアーセナルでしたが、試合によってはクロスが10本以下というリヴァプールのパスワークもまた、見ていて爽快。2年めを迎えて、ロジャースサッカーの輪郭はより明確になったと思います。

ときどき、思い切りがよすぎる選手交代が空回りに終わることもありましたが、選手たちには充分意図は伝わっており、不満やストレスにつながることもなかったのではないでしょうか。よくぞ、この層の薄さでチームを優勝寸前まで持っていったと感心します。来季、中盤がより厚くなり、DFにもうひとり軸となる選手を置ければ、欧州でも充分戦えるでしょう。

2位 マヌエル・ペジェグリーニ(マンチェスター・シティ)
戦略   ★★★★
戦術・采配★★★★★
モチベート★★★★
育成・登用★★★★
やりくり力★★★★★

何しろ、「世界でいちばん選手の給料が高いスポーツチーム」の監督です。勝って当たり前、負けたらボロクソというプレッシャーのなかで、ペジェグリーニ監督は見事に初年度からプレミアリーグ優勝を勝ち取りました。サイドの選手を斜めに走らせてスルーパスを合わせ、ペナルティエリアの端から速いグラウンダーをジェコやアグエロに通す攻撃は、今やマンチェスター・シティの専売特許。チームを創りながら勝つという難易度の高い仕事は、モウリーニョ氏だけが取り組んでいたわけではなく、ペジュグリーニさんも相当苦労があったのではないかと思います。

私のなかで彼の株が上がったのは、5連勝で優勝を決めた最終盤の戦い方です。ハビ・ガルシアを抜擢してスタメンを固定。フェルナンジーニョとネグレド、ヨヴェティッチをオプションとして使い、ブレのない明快な采配で勝利を重ねました。昨季腐っていたナスリとジェコを活かしきったこと、ナスタシッチのいないDFラインをデミチェリスとハビ・ガルシアで何とか回したのも、チリ人監督のお手柄でしょう。来季に向けてDFラインを強化できれば、チャンピオンズリーグを狙えるチームに進化するのではないかと思います。

3位 ロベルト・マルティネス(エヴァートン)
戦略   ★★★★★
戦術・采配★★★★
モチベート★★★★
育成・登用★★★★★
やりくり力★★★

前半戦終了時はナンバーワンに推していたマルティネス監督が、チャンピオンズリーグ出場権を獲っていればそのまま1位だったかもしれませんが、アーセナルとの直接対決を制して4位を確実にしたかと思われたラスト6戦で、ホーム2敗を含む3勝3敗と失速。これは、DFラインや前線のメンバーをいじりすぎたマルティネス監督のエラーでしょう。ミララス、コールマン、レイトン・ベインズ、ピーナールらが両翼から襲いかかるサッカーは観ていてワクワクする素晴らしいものだっただけに、絶好のチャンスを自ら手離し、ヨーロッパリーグ出場権で終わったのは残念です。とはいえ、ロス・バークリーやルカク、デユルフォーなど若い選手の活用と成長促進や、レオン・オスマンとネイスミスをさまざまなポジションで働かせた変幻自在の采配は、オーソドックスを好む前任者モイーズ監督にはできなかったと思われます。上位2人と比べても、遜色のない監督であることは間違いありません。

4位 トニー・ピューリス(クリスタル・パレス)
戦略   ★★★
戦術・采配★★★★
モチベート★★★★★
育成・登用★★★★
やりくり力★★★★

今季の監督交代のなかでも、最も成功したのがクリスタル・パレスでしょう。1勝7敗で最下位、1年でチャンピオンシップに逆戻り間違いなしと目されていたチームを引き継ぐと、そこからの30試合を12勝6分け12敗の五分でフィニッシュ。パンチュン、ジェデナク、デラニーといった軸を固定し、難しいことはさせず、決してブレないピューリス采配は、強いヤツらにしかできないことは全く無視という「弱者の論理」を知り尽したスタイル。お見事!のひとことですが、ただし、ピューリスさんには、ひとつだけ苦言を呈したいと思います。4月末からのプレミアリーグ2強との連戦で、本拠地でマン・シティにあっさり敗れ、アウェイのリヴァプール戦で3点差を追いつくとはどういうことですか。イギリス中が楽しみにしていたリヴァプールのプレミアリーグ初優勝をストップしたのはアナタたちですから!

5位 マウリシオ・ポチェッティーノ(サウサンプトン)
戦略   ★★★★
戦術・采配★★★★
モチベート★★★★
育成・登用★★★★★
やりくり力★★★

昨季終盤、プレミアリーグ上位との対決でことごとく勝利を挙げる「サンダーランド現象(ひと昔前ならウィガン現象)」を巻き起こし、今季前半は堅い守備とシャープな速攻で一時は4位にいたサウサンプトン。ルーク・ショー、ウォード・プラウズ、チャンバースといった10代の選手を中盤やサイドで暴れさせ、ララナ、ジェイ・ロドリゲス、リッキー・リー・ランバートが仕留めるサッカーはエキサイティング。今やセインツは、さながら「イングランド代表製造工場」です。しかし…。

来季はポチェッティーノさんは去り、ララナ、ルーク・ショーらはチームを離れてしまうのでしょうね。継続性さえ担保できれば、エヴァートンのいるところまではたどり着くだろうと期待していたチームだけに、解体ショーが始まりそうという現状は、寂しい限りです。吉田麻也は、どうするのでしょうか。おっと、監督のお話でしたね。モウリーニョスタイルにも似たポチェッティーノサッカーが、プレミアリーグを盛り上げてくれたことは間違いありません。ここで、あらためてリスペクトさせていただきたいと思います。

以上がトップ5ですが、6位以降に目を向けてみましょう。キャピタルワンカップ準優勝監督であり、最後にジャイアントキリングを連発して残留に漕ぎつけたサンダーランドのポジェ監督と、ピューリス前監督のサッカーに自らのスタイルを積み上げ、見事にトップ10入りを成し遂げたストークのマーク・ヒューズ監督もまた、評価されてしかるべき、素晴らしい業績を残したと思います。

モウリーニョ監督を彼らの下に置いたのは、戦力を十全に活かしきったとは思えないからです。今季の「ハッピー・ワン」は、途中から「ビター・ワン」にキャラクターを変えてしまい、しきりにFWに対する不満を口にしました。おそらくこれで、FWの選手をはじめ、チームの士気が相当落ちてしまったのではないでしょうか。マタが困惑のまま去ったチームは、つい先日、エトーがモウリーニョを「愚か者」と罵り、重用されなかったダヴィド・ルイスもチームを去ると噂される状況になっています。一時期、不安定な守備陣の象徴となって批判が集中したジョー・ハートをあえてスタメンから外し、本人の自信回復とともにそっと戻したペジェグリーニ監督の辛抱がポルトガル人監督にあれば、最終順位は逆転していたかもしれません。

ヴェンゲル監督は、最終的には彼らしくシーズンを終えたと思いますが、年末にマン・シティに大敗したチームを修正しきれず、上位対決で同じ失敗を繰り返したところがマイナスポイントです。あれだけケガ人が出ても、プレミアリーグ4位を死守したやりくり力を評価して9位とさせていただきましたが、来季こそは戦力を活かしきって、最後まで優勝を争うアーセナルを観たいと思います。

というわけで、「プレミアリーグ監督ランキング」でございました。いかがでしょうか。来季は、上位の監督が変わらず、今季失敗したマンチェスター・ユナイテッドとトッテナムが新監督で巻き返してくるので、より激しいプレミアリーグになりそうです。チャンピオンズリーグでも、今季以上の成果が期待できるでしょう。モウリーニョ監督は、くれぐれもおしゃべりし過ぎにご注意を。いい加減にしないと、そのうちいくところがなくなりますよ!?

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“戦略家の台頭と、解任ラッシュ…「2013-14 偏愛的プレミアリーグ最優秀監督」発表!” への2件のフィードバック

  1. 通りすがり より:

    プレミアのチームがCl勝てないのは監督によるところもあると思います。
    2年目のモウとペジェには期待してます
    リバプールは久しぶりのCLでリーグと両立は難しいと思いますがいい戦いを期待してます!

  2. makoto より:

    通りすがりさん>
    マンチェスター・シティは、FFP違反の結末と、DFの補強次第ですね。リヴァプールは、選手層を厚くしないと、体力的に厳しいでしょうね。

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