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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

売上総額7億ポンド超えはプレミアリーグレコード!マン・シティの決算報告書を徹底チェック!

「130年に及ぶクラブの歴史を常に尊重し、継続的なアプローチを積み重ねてきた。キーポイントは3つある。エキサイティングで楽しく、トロフィーを勝ち取るフットボールチームを作るために必要なすべての要素を整えること。持続可能な商業的・財務的ポジションを絶え間なく強化すること。地域社会に貢献する力を最大化すること。われわれは、これらの要素は等しく重要であり、相互に関連していると考えている」

「トルコでチャンピオンズリーグを制し、トレブルを達成した後、最もよく聞かれたのは『これを超えるには、どうすればいいのか』だった。その答えは、成功をもたらした哲学とその実践にさらに磨きをかけること。フィールドの内外で新たなレベルのパフォーマンスを達成するためには、常に革新に挑戦し続けなければならない」(シェイク・マンスール)

マンチェスター・シティが2022-23シーズンの決算の報告書を公開しました。年間売上は、プレミアリーグレコードとなる7億1280万ポンド(約1333億円)。先月発表したマンチェスター・ユナイテッドは、6億484万ポンド(約1131億円)に留まっています。2020-21シーズンにリーグTOPの座を明け渡して以来、1億ポンドを超える差がついたのは初めてです。

フットボールクラブの収入源は、マッチデー、テレビ放映権料、コマーシャルの3本柱。マン・ユナイテッドが長年、世界でもトップレベルの収益を誇っていたのは、74000人を収容するオールド・トラフォードとファーガソン時代に築き上げたブランドパワーがあったからです。しかし近年は、強みだったコマーシャルでライバルの後塵を拝するようになってしまいました。

マンチェスター・シティのアニュアルレポートを見ると、最も大きいのはスポンサー開拓によるコマーシャル収入の増加です。3億4140万ポンド(約638億円)は、前年から3240万ポンドUP。日本のアサヒ飲料、ブックメーカーのレオヴェガス、オンラインカジノを運営する8Xbetとの新たなパートナーシップが売上を飛躍的に高める原動力となっています。

テレビ放映権料のほうは、チャンピオンズリーグ制覇によって5040万ポンドが乗っかり、2億9940万ポンド(約560億円)。53000人しか入らないエティハドではマッチデー収入は限界があり、前期より1740万ポンド増の7190万ポンド(約135億円)になったのは、ホームゲームが4試合増えたというシンプルな理由です。

3本柱の売上増加以外にも、特筆すべきポイントが2つあります。ひとつは、選手の売買。マンチェスター・シティは、トランスファーマーケットにおける立ち回りが最もうまいクラブといっていいでしょう。ガブリエウ・ジェズス、ジンチェンコ、スターリングを売却して得た1億2170万ポンド(約228億円)は、クラブレコードです。

もうひとつは選手とスタッフのサラリーで、総額4億2290万ポンド(約791億円)は、前年の3億5380万ポンドから大幅に増えています。過去のプレミアリーグ記録は、マン・ユナイテッドが2021-22シーズンに計上した3億8400万ポンド。トレブル達成による選手へのインセンティブの支払いが、総額を押し上げたようです。

ただし、売上に対する人件費比率は59%で、前期とさほど変わらず。70%を超えないというUEFAのガイドラインに収まっており、特段のリスクはありません。ここまでに紹介した数字を合算すると、利益は前年の4170万ポンドからほぼ倍増の8040万ポンド(約150億円)。こちらも、クラブにとって過去最高の数字です。

健全経営となったマン・シティが抱える最大のリスクは、プレミアリーグに告発された100件以上の財務規則違反です。経営ボードは無罪を主張しているものの、勝ち点剥奪や降格、追放などの重いペナルティを喰らえば、コマーシャル収入は激減し、損害賠償などの対応に追われるでしょう。こればかりは、「どうなるか、見てみましょう」としかいえません。

CEO在任時に、「フットボールの結果とクラブの収益は関係ない」とうそぶいていたエド・ウッドワードは、ライバルにまくられた古巣についてどう思っているのでしょうか。過去のグレーな振る舞いはあれど、今こうしてクラブ運営のモデルとなっているマン・シティの経営ボードの手腕に対して、静かに拍手を送りたいと思います。


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