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サッカークラブの概念が変わる!? マンチェスター・シティと日産自動車がグローバルパートナー契約締結!

5月に「FFPのペナルティを無力にしたいマンチェスター・シティの逆襲!」という記事のなかで、横浜F.マリノスとのパートナーシップ締結について紹介し、「イギリスにおける日産自動車のスポンサードなどが展開されていくのでしょう」と書いたのですが、ついにきました。7月17日、シティ・フットボールグループ(CFG)と日産自動車株式会社がグローバルパートナーシップ契約の締結を発表。契約期間は5年、総額は非公表です。いや、おもしろくなってきました。もはや、これはプレミアリーグのニュースではありません。

この話のキモは、日産自動車が「CFGと」「グローバルな」パートナーとなったというところにあります。CFGの傘下には、マンチェスター・シティだけでなく、資本提携した横浜F.マリノス、MLBのニューヨーク・ヤンキースと「異業種タッグ」で共同経営するニューヨーク・シティFC、株式の80%を持つメルボルン・シティといった複数のサッカークラブがあります。プレミアリーグのクラブの運営会社という枠を超えた「多国籍サッカークラブチェーン」となったCFGとの契約なので、今後の日産自動車の広告には、セルヒオ・アグエロやヴァンサン・コンパニはもちろん、ダヴィドはダヴィドでもシルヴァだけでなく、ニューヨーク・シティに入団したダヴィド・ビジャが登場する可能性もあるわけです。

日本、イギリス、オーストラリア、アメリカと、世界にまたがってCFGの持つネットワークで日産のブランディング展開が図られる。それが「グローバル」という言葉の意味です。日産自動車社長のカルロス・ゴーン氏のメッセージがキャッチ―です。「日産は、世界で最も売れている電気自動車を、世界で最も速く成長しているサッカーチームに提供いたします」。CFGにとっても、グローバルパートナーは日産自動車が初めてとなります。manchestercity.jpには、CFG会長のカルドゥーン・アル・ムバラク氏より、こんなコメントが寄せられています。「今回の新たなパートナーシップによって、日本と世界各地で、サッカーを通して非常にエキサイティングな両社の協力機会が生まれるでしょう」。

こうなると、今後、CFGとUEFAは徹底的にぶつかる可能性があります。たとえばFFP(ファイナンシャル・フェアプレー)をみても、UEFAが前提としているのは、「1経営母体=1クラブ」。彼らは会社単位で審査しているのですが、既にサッカークラブチェーンを展開しているCFGは「1経営母体で多数のクラブ運営」をさらに推進しようとしています。CFGからすれば、UEFAには、企業全体の審査ではなく「何でそこだけ!?」という事業部あるいは関連会社の経営状態についてケチをつけられている感覚でしょう。両者には、既に大きなギャップがあるものと思われます。

現状は、プレミアリーグでもUEFAでも、いち人格の複数クラブ経営に関しては一定の制限があり、プレミアリーグは「オーナー、大株主、会長になる人物もしくは法人格は、ほかのクラブの運営に関与していてはならない」と規定。UEFAのほうは、「1企業が2つ以上のクラブを所有するのはいいが、1企業によって所有されている複数のクラブが同一の大会には出場できない」としています。仮にCFGがレアル・マドリードを買ったとすると、マン・シティと同時にチャンピオンズリーグ出場権を獲得した場合は、両チームともチャンピオンズリーグに出られなくなるのです。

しかし、CFGは、このまま成長すればいずれヨーロッパのクラブを買いたくなるでしょう。そうなると、現行ルールの見直しを要求してくるはずです。対してUEFAが、頑としてルール変更を受け付けないのは目に見えています。ダービーに同じオーナーの馬が複数出ることが許されている競馬の世界や、1チームから2人のドライバーが出場し、暗黙の了解でチームオーダーが存在するF1に比べて八百長のリスクが高いサッカー界で、「チャンピオンズリーグ2頭出し」が認められる可能性はないに等しいと思います。UEFAが拒否したそのとき、CFGがパリあたりと結託して「独自の大会を主催する」と言い出したら…。

いや、失礼。話が飛躍しましたね。UEFAとの決裂まで一気にいかなくても、CFGのような経営母体の出現で、選手の移籍については今までのサッカークラブの概念とは変わるかもしれません。公式サイトにおいて、彼らがダヴィド・ビジャを紹介するくだりで、こんな記述がありました。「ニューヨーク・シティFCやゲスト選手としてプレーするメルボルン・シティFCの試合で、スペイン人選手の国際的なプレーを…」。うーむ、ビジャは、隣の事業部の催しに派遣されるわけですね。こうなると、マンチェスター・シティは、「売上優秀な一事業部」であり、グループ内の選手の移籍は、会社の人事異動のようなもの。「アメリカに異動っていわれて、ショックでF.マリノスやめようと思っちゃった…」「そんなこといわずにがんばれよ。上もオマエを買ってるんだよ」「えー、出世コースはイギリスでしょ!」などという会話が横浜の居酒屋で展開されれば、ニッポンのサラリーマンそのものです。…すみません。またもや飛びました。いいたかったのは「サッカービジネスは従来の枠からはみ出そうとしており、どこかで歴史的な価値観とのバトルが生じる可能性がある」ということです。

「マンチェスターのみなさんも大変です。片やNISSAN、もう一方はNISSIN。ややこしや」「ヨコハマもシティが付く名前にしようかと、”シティ・フットボールグループ”がクラブ名変更を打診してくる可能性もありそう。ヨコハマ.F.シティFCなどと、Fは残ったのにマリノスが消えようものなら、提案があっただけでも地元は大混乱必至!?」などなど、本稿は、いろいろ想像力が膨らむ要素が多過ぎて、とっ散らかったまま終わらざるをえません。このうえは、あまりお騒がせしないうちにお開きとさせていただきます。続報や新展開あれば、また紹介しますね。ではでは。(カルロス・ゴーン 写真著作者/World Economic Forum from Cologny, Switzerland)

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“サッカークラブの概念が変わる!? マンチェスター・シティと日産自動車がグローバルパートナー契約締結!” への1件のコメント

  1. makoto より:

    CLの他に別の大会なんて作れるかな?
    各国リーグがUEFAから独立しないと無理だと思います

    —–
    プレミアリーグ大好き!さん>
    ありえるとすれば、「有志が各国リーグとUEFAから脱退して集まる」形しかないでしょう。昔、日本の伝統あるプロ野球チームが、これを言い出したことがありました。現状の欧州の枠組みを無視した、まったく別物の発想です。可能性は低いと思いますし、これを支持したいとも思いませんが…。

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