偏愛的プレミアリーグ見聞録

マーカス・ラシュフォード、アントニー・マルシアル、ブルーノ・フェルナンデス、ダニエル・ジェームズ、メイソン・グリーンウッド、オディオン・イガロ。若手、中堅、ベテランがバランスよく揃ったマンチェスター・ユナイテッドの前線において、彼が7番手の評価を覆す可能性は限りなくゼロに近いでしょう。2018年1月の入団以降、プレミアリーグ32試合3ゴール5アシスト。アーセナルの絶対的エースだった2016‐17シーズンに残した38試合24ゴール11アシストという出色のスタッツが嘘のような絶不調です。どうなる、アレクシス・サンチェス。インテルに貸し出されているアタッカーの年俸は、プレミアリーグNo.1の週給45万ポンド（約6120万円）といわれています。

ピッチで輝けなくても、若手からのリスペクトやチームの士気を高めるリーダーシップがあれば復活を期待できるのですが、負傷にも悩まされたアタッカーは、オールド・トラフォードのドレッシングルームで孤立し続けていました。彼にかかる人件費は年間2600万ポンド（約35億3000万円）と伝えられており、会計ベースではジェイドン・サンチョの移籍金として1億ポンドを支払うよりも厳しい負担となります。昨年の夏に、インテルがローンで獲得した際には、900万ポンド分のさらりーをを引き受けたと報じられました。このとき、セリエAのクラブには買い取りオプションを付けるという申し出を拒否されています。

セリエAで再起をめざしたアレクシス・サンチェスは、ミラノでも負傷で3ヵ月を棒に振ってしまい、公式戦15試合1ゴール3アシストに留まっています。シーズンの終わりとともに、契約終了となるかと思いきや、インテルは2021年の夏までのレンタル延長を検討しているようです。「スカイスポーツ」によると、ピエロ・アウシリオSDが直近のプレイを評価しているとのこと。「今いるメンバーでシーズンを終えたい」と語った編成の責任者は、しばらくはサンチェスに頼ることになるとまでいっています。

「負傷によって長い時間プレイできなかったこの選手に、決定的な評価を下すことができるようになる。ケガをする前までの彼は、とてもうまくやっていた。バルセロナ戦（CL）とサンプドリア戦を覚えている。ウディネーゼやアーセナルにいた頃のようで、ベストシーズンのサンチェスだった」
「負傷が癒えた後、ほんの少ししか時間がなく、この非常に不運な時期（コロナウイルス危機）に突入した。しかし今、セリエAが再開すると決まったので、彼には自らの価値を証明する機会がある。そこで私たちは、今後について決定する」

マンチェスター・ユナイテッドのテーマは「どこに売るか」「いくらで売るか」ではなく、2022年6月までの出費をいかに抑えるかに切り替わっています。インテルのステータスは、あくまでも「検討中」ですが、「スカイスポーツ」が伝える「レンタル料600万ポンド、サラリーの1/4を負担」という条件を渋る余裕はないはずです。

今、あらためて振り返ると、マンチェスター・ユナイテッドにとってアレクシス・サンチェスは必要な選手ではなかったということなのでしょう。獲得をめざしていたマン・シティに横槍を入れるのが目的だったかのようなムヒタリアンとのスワップは、史上最高額の授業料になろうとしています。左サイドを完全に制圧していたアーセナル時代の彼が大好きでした。「フットボリスタ」で、入団から3シーズンのすべてのゴールを解説させていただいたのを、昨日のことのように覚えています。寂しさが募る現状ではありますが、私にとってのアレクシス・サンチェスは、タッチライン際からドリブルを開始する自信たっぷりの表情のままで、止まっているような気がします。