救世主か悪魔か!? 私論・ファン・ハール監督「極上のシナリオVS崩壊のストーリー」
さて、今回は、「名監督だからチームを立て直してくれるはず」というご意見と、「過去に何度もチームを崩壊させている監督なので、やばいんじゃないか」という懸念が錯綜しているマンチェスター・ユナイテッドのお話です。普段は、できるだけ事実を下敷きに書こうと心がけているのですが、今回は多分に推測、妄想が入ることをお許しください。いや、むしろ、これは「妄想企画」です。題して、ファン・ハール監督「極上のシナリオVS崩壊のストーリー」。毀誉褒貶相半ばする名将あるいは迷将について、最高にうまくいった場合と、最悪の結果に終わった場合のシミュレーションをしてみたい、というのが趣旨でございます。では、さっそく。
あくまでも私論ではありますが、前提は、「ファン・ハール監督はこの夏のオランダ代表での成功を拠り所としている」ということです。マネジメントの用語に「直近化」という言葉があります。これは、部下の1年間の働きを査定する、となったときに、前半で活躍したAさんと後半いい仕事をしたBさんがいると、どうしても新しい記憶のほうが眩しく見えてしまいがち、ということ。ブラジルで3位となったオランダ代表にあったのは、チームの一体感、スペインを叩きのめした3CB、5バックといったフォーメーション。そして、ファン・ペルシとロッベンという、ワールドクラスの決定力でした。
■極上のシナリオ
チームの一体感を大事にするファン・ハール監督は、自分の意志で連れてきた新戦力を得て、自ら指名した主将ウエイン・ルーニーを中心にコンセプチュアルなチームづくりのスピードを上げる。基本フォーメーションは、3-4-1-2と4-3-3の両刀使い。3-4-1-2ではファルカオとファン・ペルシの後ろにルーニー。開幕以来パッとしなかったマタを「FAカップ専門のトップ下」に格下げして、ルーク・ショーとバレンシアの両サイド、ディマリアとブリント、エレーラをまわすセントラルMFで中盤を構成。ディ・マリアはサイドMFやトップ下としても起用され、DFにはロホ、エヴァンス、フィル・ジョーンズが入る形である。
4-3-3になると、前線には左からルーニー、ファルカオ、ファン・ペルシ。ファン・ペルシは縦に走るウインガーというより、ロッベンさながらの中への斬り込みを担い、ときにファルカオとポジションチェンジをしながらゴールを狙う。ルーニーは、左のインサイドハーフに入ったディ・マリアやSBルーク・ショーとともにサイドを崩し、中央で折り返しをもらって得点を重ねる。中盤は、3センターとトップ下が入る形の2つのオプションがあり、より攻撃を志向するケースでは、ルーニーがトップ下、ディ・マリアをウイングに置き、左サイドを主体に中央に入ってくる3人のFWにラストパスを供給。相手の出方やウイークポイントをみて姿を変えてくる自在のフォーメーションが機能し、マンチェスター・ユナイテッドは勝利を重ねる。
オランダ代表でキャプテンに選んだファン・ペルシ、同国人のダレイ・ブリント、チームの中心で無視できないルーニーを重用し、控え選手からは不満の声が挙がっているというゴシップを流されるものの、自分への賛同者多数のチームを「ひとつになっている」と自信たっぷりに語るファン・ハール監督。ケガ人が出始めたシーズン後半には、リース・ジェイムスやジェームズ・ウィルソンなどの若手を抜擢し、かつてのトマス・ミュラーのような新星が現われ、ファン・ハール監督への称賛が高まる。序盤の不調がたたってプレミアリーグ優勝には届かなかったものの、クラブはチェルシーに続く2位でフィニッシュ。2015-16シーズンに向けてラダメル・ファルカオ完全移籍が発表される。
■崩壊のストーリー
チームの一体感を大事にするファン・ハール監督だったが、プレシーズンにレギュラーと控えを完全にセパレートし、保持する戦力を十全に活かせず香川真司やウェルベックまで放出してしまったオランダ人指揮官の迷走は続く。ワールドカップで成功した3バックをベースに、ストライカーをやりたいルーニーに媚びてファン・ペルシと組ませた3-4-1-2に固執するが、ファルカオの入団でトップ下に入ったルーニーは、中盤と前線の分断のなかで空回り。サイド攻撃が主体のチームが多いプレミアリーグのなかで、サイドの選手がルーク・ショー、バレンシアとそれぞれ1枚しかいない3-4-1-2は、サバレタ、コラロフ、ヘスス・ナバス、アザール、アレクシス・サンチェス、スターリング、シャドリらにいいように崩され、プレミアリーグ上位対決をことごとく落としてクラブはボトム10に沈没する。
求心力を失ったチームのなかで、ファン・ペルシはセルフィッシュなプレイに終始し、ルーニーは移籍志願ともとれるような発言を繰り返す。ファン・ハール監督を擁護するのは、腹心のダレイ・ブリントと抜擢されたルーク・ショーら若手のみ。主力からネガティブなコメントが出たとき、ファーガソンやヴェンゲルのように個別に向き合えば解決の道もあったかもしれないが、ファン・ハール監督はマスコミを通じて一部選手を公然と非難し、ここにチームは瓦解する。
沈むチームのなかでそれなりに奮闘したファルカオは、それでも10ゴールに及ばなかった数字を非難され、「プレミアリーグ史上最低のくだらない買い物」という言葉を背にモナコへ帰還。ファン・ハール監督はわずか1年で解任となり、シーズンを通じて使われず「サブ組」のレッテルを貼られたマタは、「監督と会話したことは一度もなく、練習はつまらなかった」と、リベリーやクローゼさながらのネガティブなコメントを残す。2015-16シーズン、2季連続でチャンピオンズリーグ出場権を失ったマンチェスター・ユナイテッドは補強を抑え、若手主体のチーム作りにスイッチ。新監督はライアン・ギグス…。
…いかがでしょうか。「ここはこのほうがおもしろい」「これはさすがにない」などなど、プレミアリーグファンの数だけツッコミもあると思われますが、多少の不備は目こぼしていただきつつ、それなりに楽しんでいただけたなら幸いです。さあ、あなたは、ファン・ハール監督の未来はどちら方面にあると思いますか?
私が目下、この監督に対して気になっているのは「持てる戦力をちゃんと生かそうとせずに早く見切り過ぎ、適材適所が出来ていない」「今の3-4-1-2は、弱点はわかるが長所がわからない」「主力とサブ、放出要員を分けたため、チームに競争原理が働いておらず、選手は戦力外のレッテルを貼られないようにびくびくしているようにみえる」といったところ。昨季、F.トーレスとデンバ・バという、好みではなかったであろうFWを、1年使い続けてチャンピオンズリーグではいい仕事をさせた、モウリーニョ監督の手際のよさと起用のうまさを思い出します。
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どちらのシナリオもあり得そうな気がしますし、
楽しく読ませて頂きました。
マンUファンの方には申し訳ないですが、
ファンじゃないので、客観的に楽しめたというのもありますが…(^^;)
非常に面白い企画だと思います。
お時間に余裕があるようであれば
ぜひ、他のクラブのパターンも書いて頂きたいです。
—–
ペルシとルーニーはなんか常にちぐはぐなのでペルシサブのファルカオでいいと思うんですよね。
守備的選手が少なすぎて不安が多いですが最低でもELに出れるようにはしてほしいですね
ファルカオの加入でベンチに追いやられたファン ペルシは、古巣への復帰を希望するものの、我々にはウェルベックがいる、との恩師の返答を受け、間違いない仕事をこなし1年でクラブを去ったドログバの後釜を探していたモウ…
すみません、真似してみました笑
Van Gaalの直近の成功体験というお話はじめ、makotoさんのご意見と軌を一にしています。
極上と崩壊のちょうど間に収まるストーリーとしてありそうなのは、チームとしてはギクシャクしたまま、明らかな取りこぼしがあるものの、ときにVan Persie無双、Rooney無双、そしてFalcao無双(!)が発動し、ビッグゲーム含め、なまじ勝ち星を拾ううち越冬。中位をウロウロしているうちに、チーム全体の問題点がマスクされてしまうケースでしょうか。
それにしても、
> 「名監督だからチームを立て直してくれるはず」というご意見と、「過去に何度もチームを崩壊させている監督なので、やばいんじゃないか」という懸念
ホント両方とも説得力ありますね(笑)
いつも楽しく拝見させていただいてます。私見なんですが、モイーズによって壊されたのはチームだけではなく、選手の気持ちや自信までも壊されたと思います。
そういう意味では今回の衝撃の移籍劇は負のオーラを一蹴出来ると信じています。
システムでは433なら間違いなく機能しそうですし、CMFを今回とらなかったのは冬にストロートマンが来てくれると勝手に思い込んでます(笑)
今年は優勝は無理ですが3位には入れると信じてます。
あ、「凡庸な見立て」というのは、makotoさんのテキストではなく、極上と崩壊の間の中庸のシナリオである当方のアングルのみであります。言葉足らずだったと思い補足させていただきました。
黒猫屋さん>
ありがとうございます。チェルシーとアーセナルは、今すぐにでも書けそうですね。リヴァプールは、ロジャース監督がマジメ(他が違う、とはいいませんが)なので、崩壊編がおもしろくならないかもしれません。
プレミアリーグ大好き!さん>
ELは死守ですね。私も、ファルカオのほうがチームとしてうまくいく可能性もあると思いますが、ファン・ハール監督はやらないでしょうね。
プレミアリーグ大好き!さん>
おもしろい!こっちのほうがおもしろいです(笑)
ASAPさん>
お気遣いありがとうございます。趣旨理解してますので、大丈夫です。中間のストーリー、ありそうでこわいです。中途半端な着地だけは回避してほしいのですが…。「プレミアリーグ6位着地、欧州いけず、ファン・ハール続投」みたいな。
るーにーさん>
4-3-3、よさそうですよね。ストロートマン、私もそれを考えていました。
怪我人出ないで4-3-3がうまく機能すれば意外に爆発しそうですけどねー。
守備はペルシとファルカオ以外はルーニーもディ・マリアもよく戻って守備するので、何とかなるんじゃないですかね。甘いかな。
レッズサポなので、そこまで詳しい事は分かりませんが。
自分としては「トマス・ミュラーのような新星が現われ」←この部分に期待したいです。ユナイテッドに限らずどのチームでもいいので。
ヤヌザイはまだ何か信用できないというか引っかかるんですよね。
そんな訳で、もしお暇があれば、今シーズン期待の若手選手の特集をお願いします!
ASAPさんの中間シナリオが一番可能性高そうな感じもしますが、一気に崩壊シナリオへもあり得て怖いです。
ただ個人的には崩壊シナリオを経て地道に再建を目指すというのもアリだと思います。
お金が回らなくなって主力の放出、下位低迷があったとしても、サポーターは我慢して応援していくべきです。本来モイーズには6年の時間が与えられていた訳ですから、チーム再建のため時間を掛けて若手を育成していくのも良いのではないでしょうか。実際現在のファンハール体制下であっても若手が少しずつ経験を積んでいる状態ですし。
そのうえで更なる妄想が許されるのなら、香川選手がドルトムントで優勝and成長して、ユナイテッドに再加入なんてことがあればうれしいかも。あっ、でもこんなこと書くとドルトムントサポに怒られそうだな…。
どちらのシナリオも実際に起こりそうでとても面白い記事でした。
崩壊のストーリーの方には見切りした香川がMVP級の活躍、チチャリートがシーズン20ゴールの活躍なんてのはどうでしょう?
私も下位相手には個の能力で勝ち、上位にはきっちりと負け問題点をうやむやにしたままEL圏内辺りで終わる気がします。
やっぱり、ファンハールがワールドカップルの時につかった3-4-1-2は攻守分断が肝だったような気がします。ただ、プレミアリーグは殴りまくって勝つチーム(主にうちのところですが)が多いため、オランダ式のシステムの長所が薄れてしまいますね…
ただ、ユナイテッドまで4-3-3の殴り合い上等システムにすると、もうこのリーグについていけなさそう泣
ファンハールが直近の、すなわちW杯の成功体験を重視し過ぎた場合には
崩壊のみ待っていると思います
プレミアリーグとW杯では試合の本質が全く違います
ドルトムントみたいな攻守の切り替えが鬼みたいに早いチームがあるわけでは無いですが
それでも攻守分断ではついていけないのが目に見えています
ただ、柔軟に対応できた場合にはこの限りでは無いと考えます
今季とった大駒を、とりあえずポジションに当てはめたゲームのような布陣ではなく
スター選手をベンチに置いても泥臭いプレーができる選手を選択できるなら
上位進出も見えてくるのでは?
私的には中位での着地で中途半端になりそうな予感が・・・
それにしてもコメント欄で広告の売り込みとか(笑)
別な形で連絡取れなかったんですかね?
お茶を濁されたような気分になったのでついつい書き込んでしまいました(笑)
それに広告でも書き込むなら少しはマンユの予想でも書いてれば許せたかな?(笑)
私が面白いと思うシナリオは・・・・
今シーズンは個の力で点も取れ、DF陣の凡ミスから多少勝ち点を落としつつも、4位アーセナルに僅差の5位でフィニッシュ。そして、最低限の仕事をしたと認められファン・ハールの続投が決定。
次シーズンではさらに選手補強を進め、戦術も定着し、ファン・ペルシが怪我で後半戦を棒に振るも、ファルカオが大爆発の得点王。監督批判がちらほら聞こえてくるも、チームはギリギリでチェルシーをかわしてプレミア制覇。
しかし、シーズン終了後にはルーニーの移籍志願を匂わす発言、他、選手たちからの不満の声。
ほどなくファン・ハール解任発表。
陳腐なシナリオですが、勝っても選手やフロントやファンからの不満で解任されるのがファン・ハールという男だと思ってます。
そしてそこには戦術的に整備されて走れるチームが残される。
マンU復活への下地ができるわけです。
セブンスターさん>
ここは読んでいただいた方のご意見の場ですので、削除いたしました。せめてもう少し短ければ、まだよかったのですが。
hrpさん まひろさん Uボマーさん>
中間シナリオにリアリティあり、は間違いないですね。地に落ちてもサポーターはやめませんが、どうにか4位に入ってほしいのですが…。
ごさん リバサポさん スパース推しさん>
さすが、外からの目線にはサポーターにはないフラットさがあって発見があります。身内の熱さと、どっちも大事なんですけどね。おっしゃるとおり、ただポジションに選手を当て込んだだけでなく、どう連携構築していくのかがカギだと思います。若手特集、検討させていただきます。
ハトハトさん>
おもしろい!(泣き笑いですが)