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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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ラシュフォード対策は空転…アウェイのバルサ戦をドローで終えたテン・ハフの秀逸な采配を振り返る。

敵地カンプ・ノウで2-2。マンチェスター・ユナイテッドにとって、最高の着地といっても過言ではないでしょう。何しろ相手は、ラ・リーガで独走を続けるバルセロナ。チャンピオンズリーグでバイエルンとインテルに勝てず、あっさり敗退したとはいえ、国内リーグで21試合7失点と欧州N0.1の堅守を誇るチームです。

一方、テン・ハフ監督のスカッドは、勝ちにいける状態ではありませんでした。アントニー、マルシアル、エリクセン、マクトミネイ、ファン・デ・ベークが負傷欠場で、リサンドロ・マルティネスとザビッツァーはサスペンデッド。3枚欠いた中盤センターはカゼミーロ&フレッジの一択で、前線のオプションはエランガ、ガルナチョ、ペリストリの若手トリオのみでした。

それでも、強敵との激突をドローで終えられたのは、テン・ハフ采配が秀逸だったからです。決戦に向かう準備は、4日前に開催されたプレミアリーグ23節のリーズ戦から始まっていました。直前のオールド・トラフォードでドローに持ち込まれた相手に対して、CBにマグワイアとルーク・ショー。レギュラー2人をベンチという決断は、胆力がなければできません。

リサンドロ・マルティネスを外したのは、バルサ戦のためにCBルーク・ショーを試しておきたかったから。ヴァランを休ませたのは、フレッシュな状態でカンプ・ノウのキックオフを迎えたかったからでしょう。首位の背中が見えるプレミアリーグは必勝、ELも勝ちたい…失敗が許されない状況のなかで、リーズ戦は終盤に2発ゲット。指揮官は最初のハードルをクリアしました。

そして迎えたバルサとのファーストレグ。守備を優先させたかった右サイドはワン=ビサカ、左SBはマラシアです。最前線にヴェグホルスト、2列めにブルーノ・フェルナンデス、ジェイドン・サンチョ、ラシュフォードは予想通り。ワールドカップ明けの公式戦15試合で13ゴールのエースは、主戦場の左サイドをまかせられています。

ホームで負けるわけにはいかないシャビ監督は、ラシュフォード対策を施してきました。いつもなら右サイドのジュール・クンデがCBで、マン・ユナイテッドの10番の前に、普段はCBのロナウド・アラウージョ。1月に開催されたスーペル・コパのレアル・マドリード戦で、ヴィニシウスを止めて3-1で勝ったときと同じ戦い方です。

これを見たテン・ハフ監督は、様子見することなく、布陣を変えてしまいました。ラシュフォードはセンター、その後ろにヴェグホルスト、右にブルーノ、左はサンチョ。オランダ代表をトップ下に置いたのは、ポストとプレスの役割を2センターに近いところに置きたかったからで、10番を最前線にしたのは、スピードがないCBマルコス・アロンソと勝負させたかったからでしょう。

テン・ハフの采配は、28分に実を結ぶかと思われました。右にいたラシュフォードがパスをもらえず、ラインの手前に戻ると、入れ替わるようにヴェグホルストがブルーノのパスで裏に抜けました。左足のシュートは、飛び出したシュテーゲンがセーブ。2人のストライカーが中央にいれば、どちらかがおとりになって、もう片方がチャンスを得る形も創れます。

シャビ監督が、後半に入っても最終ラインをいじらなかったのは、右サイドのハフィーニャが好調で守備的なSBでも問題がなく、左利きのマルコス・アロンソとアラウージョのスイッチは具合が悪かったからでしょう。50分のCKをマルコス・アロンソがヘッドで決めたときは、策を空回りさせられたスペイン人指揮官が結局は勝つのかと思わされました。しかし…!

テン・ハフのプランが当たるのは、ここからです。フレッジのスルーパスを受けたラシュフォードがマルコス・アロンソをちぎり、シュテーゲンとニアポストの間を射抜いて同点。59分には、右からのショートコーナーをキープした10番がハフィーニャを抜き去り、ニアのブルーノのヒールキックがジュール・クンデのオウンゴールを誘いました。

先制ゴールから7分で逆転。シャビ監督が、67分にマルコス・アロンソとアルバをクリステンセンとバルデに代えたのは、あっさり外されたラシュフォード対策を見直す必要に迫られたからでしょう。残り10分手前でハフィーニャのクロスがゴールに飛び込み、2-2にされたものの、マン・ユナイテッドの指揮官は交代カードを1枚しか使わず、悪くないスコアで試合を畳みました。

ドローでよければ、前を1枚外してCBを入れるという選択肢がありました。しかし、テン・ハフ監督は勝ちにいったのです。ところが、バルサ相手に使える攻めのカードはガルナチョだけ…!

タイムアップの笛が鳴った瞬間、勝利に似た感覚を覚えました。素晴らしい采配でした。スールシャール監督に、左右中央とポジションを変えられたラシュフォードは、自分の強みを見失ってスランプに陥りました。しかしテン・ハフ監督に同じように起用されると、むしろモチベーションは上がっています

その違いは、戦術の有無にあるのではないかと思います。無双状態を続けるエースは、自分は便利屋ではなく、指揮官の戦術のキーマンなのだと心得ているのでしょう。サー・アレックス・ファーガソンが去ってから10年。ようやく、ビッグタイトルの期待感をもって応援できるようになりました。

プレミアリーグは、首位マン・シティと5ポイント差。カラバオカップはファイナルに進出し、ヨーロッパリーグもバルサを撃破できれば、戦えない相手はいません。次の木曜日、オールド・トラフォードのセカンドレグは、リサンドロ・マルティネス、ザビッツァー、アントニー、マルシアルが戻ってきます。初戦を大成功だったと振り返ることができるよう、ぜひ勝利を!


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