イングランドのプレミアリーグ(ときどきチャンピオンズリーグ)専門ブログ。マンチェスター・ユナイテッド、アーセナル、リヴァプールetc.

偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

ペップの底力、アルテタの限界…勝負を分けたラスト30分の戦術。

前半のシュート数は7対4。マン・シティをエミレーツに迎えたアーセナルにとって、手応えありの45分でした。プレミアリーグ12節の延期試合は、首位を争うシックスポインター。オープニングシュートは左から上がったエンケティアで、リバウンドをとって左足を振り抜いたジャカは、闘志がみなぎっていました。

グーナーの多くは、ジョルジーニョの獲得は成功だったと確信したのではないでしょうか。2手先、3手先が読めるベテランMFは、チームメイトに頻繁に指示を飛ばし、ビルドアップを仕切っていました。デブライネのパスをカットして、すかさず出したエンケティアへのロングフィードは、彼の真骨頂。サンビ・ロコンガやエルネニーには望めないプレイです。

ジンチェンコのクロスをフリーで受けたエンケティアが、空いていた左に送り込んでいたら、結果は逆になっていたかもしれません。冨安健洋の信じられないミスで、デブライネに先制されてもなお、ガナーズは充分戦えていました。ジョルジーニョの縦パスから、ジャカ、ウーデゴーア、サカと右につないだチャンスは、7番が左足に持ち替えなければと悔やまれるシーンでした。

前半の終わりに、ジャカの浮き球を追ったエンケティアがエデルソンに倒され、PKをサカが決めて1-1。イーブンに戻してロッカールームに帰ってきた選手たちは、いいテンションで後半のキックオフを迎えたはずです。開始からしばらくは主導権を握られたものの、シュートを許さず、ガブリエウがハーランドと交錯して取られたPKは、オフサイドで取り消しとなりました。

60分までは、アルテタとペップは互角だったのです。

マン・シティでプレミアリーグを4回制覇した名将は、ガナーズのアグレッシブな戦い方に危機感を覚え、ルベン・ディアスをウーデゴーアに当てて消しにかかりました。この戦術は効果的だったのですが、自らもゴールに迫れず、1発を許したら一気に劣勢に傾く可能性があります。

勝負に出たのは、61分。切り札は、マフレズをアカンジです。

3-2-4-1から、4-3-3へ。何が何でも勝ちたかった指揮官は、守備を強化したかったわけではありません。カイル・ウォーカーとナタン・アケをSBにまわすことで、デブライネ、ベルナルド・シウヴァ、ギュンドアン、グリーリッシュのサイドアタックを強化したかったのです。真の狙いは、ジンチェンコが中に絞るサイド。刺客に選ばれたのは、ベルナルド・シウヴァです。

72分の勝ち越しゴールは、ガブリエウのパスをベルナルド・シウヴァがカットしたショートカウンター。20番がハーランドを走らせる縦パスを通した瞬間、最前線は3対2になっていました。ギュンドアンをケアするために中に入った冨安は、フリーになるグリーリッシュに通されるのはわかっていたのでしょう。10番に渡った瞬間、迅速にコースに入り、足を出したのですが…。

冨安のスパイクに当たってボールが跳ねたため、ラムズデールが差し出したグローブの上を通り抜けてしまいました。

82分の決定打も、SBのカイル・ウォーカーとベルナルド・シウヴァで囲い込んで奪ったショートカウンターです。ハーランドをチェックしていたガブリエウが、ジンチェンコをかわしたデブライネをに近づいたとき、勝負は決しました。一瞬でも前が空けばOKのモンスターにとって、遅れてきたサリバはいないも同然でした。

ペップの底力とアルテタの限界が露呈したラスト20分。用意周到なマン・シティのマネージャーは、ヴィラ戦で3-2-4-1を試したうえで、複数のオプションをもって戦況を見つめていました。対するガナーズの若き指揮官は、直前のブレントフォード戦で久々に冨安を起用せず、大一番でスタメンに抜擢しました。

アルテタ監督の最大の課題は、レギュラーをガチガチに固定してきたため、オプションが機能しない試合が多いことです。マルティネッリをトロサール、ジャカをファビオ・ヴィエイラ、富安をベン・ホワイトという交代策は、戦術をさほど変えておらず、マン・シティを慌てさせるには至りませんでした。

ペップが4バックにシフトしてから、最初の失点まで10分。ジャカをベン・ホワイトに代え、ジンチェンコをセントラル、富安を左にまわしてベルナルド・シウヴァをケアさせるというような打ち手はなかったのか。1-2から1-3まで10分。トロサールとともにティアニーを投入して、ニューフェイスをシュートレンジで活かすというプランもあったのではないか…。

最後に、ひとつだけ。ジョルジーニョは素晴らしいタレントで、獲得してよかったと思うものの、彼を活かすならパスコースが多くてCBと連携しやすいピンのアンカーか、守備が強い選手とのコンビがよさそうですね。チェルシーにカンテがいたのは、大きかったのではないでしょうか。夏にデクラン・ライスやカイセドが加われば、あのパスセンスはもっと活きるでしょう。

アルテタ監督のチームの次戦は、アストン・ヴィラ。何とか勝ち切り、もう一度連勝モードに突入するしかありません。終盤に入ると浮いてしまうファビオ・ヴィエイラや、出番が激減しているティアニーの活用法を見出し、プレミアリーグでも戦い方の幅を広げてもらえればと思います。それにしても、ペップは相変わらず、凄いですね…!


おもしろいと思っていただけた方は、お時間あれば、下のブログランキングバナーをクリックしていただけると大変うれしいです。所要時間は5秒です。何とぞよろしくお願いいたします!


“ペップの底力、アルテタの限界…勝負を分けたラスト30分の戦術。” への1件のコメント

  1. zvonimir3 より:

    > ペップの底力とアルテタの限界が露呈したラスト20分。用意周到なマン・シティのマネージャーは、ヴィラ戦で3-2-4-1を試したうえで、複数のオプションをもって戦況を見つめていました。対するガナーズの若き指揮官は、直前のブレントフォード戦で久々に冨安を起用せず、大一番でスタメンに抜擢しました。

    スカッドのボリューム差があるのでイコールでは考えられないですが、できる範囲での準備はできたのではないか?と思ってしまいます。アルテタの戦略はこれからも支持しますが、柔軟な思考で何かを変えるのか、それでもストロングポイントを強化し続けて押し込み続けるのか、今週末の戦い方に注目します。

コメントを残す