偏愛的プレミアリーグ見聞録

チャンピオンズリーグのグループAでアウトサイダーと目されていたコペンハーゲンに4失点を喫し、残り2試合で最下位。サー・アレックス・ファーガソンの勇退以来、最速で9敗となったのは2013-14シーズンのデヴィッド・モイーズだったのですが、テン・ハフの17試合は、ハマーズの指揮官が残した34試合の半分という怖ろしいレコードです。

マンチェスター・ユナイテッドサポーターの怒りは、自分たちの儲けしか考えていないグレイザーファミリーに向いていますが、「アスレティック」のダニエル・テイラー記者は「ジョン・マータフも責任を担うべき」と主張しています。エヴァートンで一緒に働いていたモイーズの推薦で、フットボール開発ディレクターとして加わった現FDは、来週で10周年を迎えるそうです。

記者の問題提起は、「2021年3月のSD就任以降、的確といえる補強はあるのか？」。なるほど。ではさっそく2021年の夏から、ジョン・マータフが承認した新戦力を振り返ってみましょう。最初に獲得したのは、クリスティアーノ・ロナウド、ラファエル・ヴァラン、ジェイドン・サンチョ。12年ぶりに復帰したレジェンドについて、記者はこう指摘しています。

「あの契約は、ユナイテッドのCEOだったエド・ウッドワードが、オーレ・グンナー・スールシャール監督の熱意を全面的に受け入れて実現した。そしてクラブ内外の多くの人々が、うまくいきそうなアイデアに浮かれた。しかしトップレベルのFDなら、ユナイテッドのような野心あるクラブが、センチメンタルなチョイスでチームを作るべきではないと忠告するだろう」

ヴァランは負傷が多く、昨季までのプレミアリーグ出場は46試合。サンチョはドルトムント時代の輝きを忘れてしまったようで、何も残さずマンチェスターに別れを告げようとしています。2022年の夏はカゼミーロ、エリクセン、リサンドロ・マルティネス、マラシア、アントニー。テン・ハフの初年度に関する記者の疑問は、クラブの意思決定のあり方です。

「2022年6月、ウェールズはオランダとネーションズリーグの2試合を行った。ウェールズの戦術は右サイドのブレナン・ジョンソンにボールを集めること。彼らは左WBのフィジカルの弱さに着目していた。問題の選手はタイレル・マラシア。数週間後、彼がアヤックスから1300万ポンドでマンチェスターにやってきたとき、ウェールズ陣営は驚きを隠せなかった」

「今どきのフットボール界はどこでも、忙しい監督に補強ターゲットの見極めという手間のかかることはさせない。ユナイテッドを含むエリートクラブは、獲得候補を詳細に調べ上げるリクルートチームの構築に何百万ポンドも費やしている。しかしユナイテッドの多くの契約は、テン・ハフの選択を上の人間が承認したものである」

ハリー・ケインやハーランドを獲り逃した5ヵ月後に、バーンリーからヴァウト・ウェグホルストをレンタルしたクラブは、アントニーに8200万ポンドもかけなければ前線を強化できたでしょう。今年の夏は、ホイルンド、メイソン・マウント、オナナ、ジョニー・エヴァンス、アムラバト、レギロン。開幕から3ヵ月を経ても、チェルシーのMFの活かし方はわかりません。

緊縮財政のなかでストライカーに7200万ポンドを投じたツケは、後方のポジションにまわってきました。コペンハーゲン戦で先発したジョニー・エヴァンスとマグワイアは、テン・ハフ監督の当初の構想に入っていなかったコンビです。最初の2年で獲得した選手が全員機能していないという現実について、責任者であるFDはどう思っているのでしょうか。

今回のレポートによると、サー・ジム・ラトクリフの株式取得が決まれば、リチャード・アーノルドCEOは辞任するという見方があるとのこと。オーナー、CEO、FDを全員チェンジしなければ、本質的なクラブ強化は進まないと考えたほうがよさそうです。負傷したキーマンが戻ってくれば、それなりに勝てるようになるはずと信じながら、淡い夢を見続けるしかないのでしょう。

本日のプレミアリーグはルートン。リヴァプール戦をドローに持ち込んだチームに勝てるのか…。