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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

解任危機の指揮官に策はあるのか?数字で見る「マンチェスター・ユナイテッドの得点力が低い理由」

「テン・ハフは、ユナイテッド史上25人めの監督だが、リーグ優勝を逃した22人めになるのはほぼ間違いなさそうだ。サー・ジム・ラトクリフが株式の1/4を買収する話がまとまれば、おそらく状況は目覚ましく好転し、テン・ハフはアーネスト・マングナル、サー・アレックス・ファーガソン、サー・マット・バスビーと並んでチャンピオンになれるだろう。しかしそんなことは、すぐには起こらない」

現地メディアの多くは、マンチェスター・ユナイテッドの指揮官は解任の危機に瀕していると報じる一方で、クラブが動く気配はないといっています。「ガーディアン」でコラムを執筆するジョナサン・ウィルソン氏も、イネオスのオーナーの支持を得られれば巻き返す可能性は充分としながらも、「ラトクリフは既に後任を探している兆候がある」とレポートしています。

クラブの未来は依然として不透明ですが、明確なことがひとつあります。テン・ハフがマンチェスターに残るためには、公式戦11勝2分12敗という不甲斐ない状況から抜け出さなければなりません。マン・ユナイテッドは、なぜ勝てないのか。なかなかゴールが決まらないのは、なぜなのか。今季のスタッツをあらためて検証し、巻き返しプランを考えてみましょう。

チャンピオンズリーグは、もう過去の話。改善策を検討するなら、プレミアリーグにフォーカスすべきです。9勝1分7敗で7位のチームのスタッツを見ると、最初に目に留まるのは17戦18ゴールという悲惨な数字です。彼らより少ないのは、15位クリスタル・パレスと17位以下の4クラブのみ。「テレグラフ」のジェームズ・ダッカー記者は「降格争いの数字」と表現しています。

総勢6人のストライカーとウインガーで4ゴールという貧攻ですが、シュート数249本は7位と、さほど悪くはありません。6位アストン・ヴィラは3本差の252本、しかしゴール数は37対18。決定率が低いのは、TOP20に入っているブルーノ、ラシュフォード、ガルナチョが個の力で強引に打つシーンが多いからです。

攻撃に関するスタッツで、もうひとつ気になるのは、クロスとCKの本数は上位なのに結果が出ていないことです。クロスは329本で、アーセナルの331本に2本差の4位。しかし90分あたりの成功本数を見ると、5.2本のアーセナルはリヴァプールと僅差の2位で、マン・ユナイテッドの3.7本は15位です。ちなみに成功率が20%を切っているのは、われわれとバーンリーだけです。

CKの本数も、プレミアリーグの首位チームと比べると精度の低さが際立ちます。アーセナルは139本で1位、マン・ユナイテッドは114本で3位。しかしセットピースからのゴールは、10発ゲットでTOPのガナーズに対して、たった3発で14位に沈んでいます。ニアに走り込んでも、ボールをもらえないホイルンドは未だノーゴールで、オンターゲットは7本しかありません。

3つめの注目すべき数字は、左からのアタックの比率が高いこと。40%はウェストハムに次ぐ2位で、左からのシュート比率22%はリーグTOPです。4月16日のノッティンガム・フォレスト戦で決めてから、26試合ノーゴール1アシストのアントニーは、チャンスクリエイトも14回しかなく、リーグ70位。クロスはたったの13本で、127本のトリッピアーの1/10です。

これらの数字からいえることを並べてみましょう。前線での連携がなく、左からのドリブル突破とカウンター頼みのマンチェスター・ユナイテッドは、右サイドのウインガーとSBからいいボールが出てこず、セットピースもノーアイデア。ブルーノからのピンポイントのラストパスと、マクトミネイの攻め上がりを封じられると打つ手なし…。

厳しい状況ではあるものの、解決策はシンプルなのかもしれません。例えば冬のマーケットで右サイドのスペシャリストを獲得すること。2021-22シーズンのニューカッスルは、21節まで2勝9分10敗で降格ゾーンに沈んでいたのですが、トリッピアーとブルーノ・ギマランイスが加わった2月以降は、11勝1分5敗と別なチームに生まれ変わっています。

あるいは、既存の戦力をうまく使うだけでも変われるかもしれません。オナナからのボールを冷静に受けてボールを散らせるメイヌーを中盤に定着させ、2列めの右にエリクセン。チームで唯一、精度の高いクロスを入れられるブルーノと稀代のプレーメイカーで右サイドからのアタックを強化できれば、ホイルンドが決めてくれるシーンを増やせるでしょう。

今回挙げた攻撃に関するスタッツを確認した人のなかには、明快な戦術なきテン・ハフの解任はやむなしと思う人もいるでしょう。最後に、負傷者続出でやりくりに追われている指揮官をフォローする数字を紹介します。クラブに来てから18ヵ月の戦績をアルテタやクロップと比べると、実はテン・ハフのほうが上なのです。

アルテタとテン・ハフは86試合、クロップは99試合。勝利が多い順に並べ直すと、テン・ハフ53勝、クロップ50勝、アルテタ47勝。1試合あたりの獲得ポイントも、テン・ハフは1.95、アルテタ1.83、クロップ1.80です。戦力が揃わないなかでよくやっていると見るか、選手との確執を報じられている監督に明日はないと見切るか。賛否両論、諸説ありのようですが…。


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