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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

埋まるはずのない溝。マンチェスター・ユナイテッドがダン・アシュワースSDを5ヵ月で解任。

「土曜日の朝、アシュワースはキャリントンでU-21チームのスパルタ・プラハ戦を観て、その後、オールド・トラフォードのディレクターズボックスでノッティンガム・フォレストとのゲームを観戦した。外からは、いつも通りに仕事しているように見えた」

「しかし、試合終了のホイッスルが鳴った20分後、彼はスタンド下のディレクターラウンジからプレスカンファレンスルームという珍しいルートを進んだ。コレット・ロッシュCOOとともに向かったのは、オマール・ベラダCEOのオフィスだった。彼はそこで、ユナイテッドでの短い任期が終了すると告げられた」

ホームで敗れた試合に家族を招待していたダン・アシュワースにとっては、青天の霹靂だったようです。「世界でもトップクラスのスポーツディレクターのひとりであるのは明らかだ。10点満点で10点」。サー・ジム・ラトクリフが入団を熱望し、5ヵ月待って引き入れたSDは、わずか159日で解任となりました。マンチェスター・ユナイテッドに、何が起こっているのでしょうか。

「アスレティック」のローリー・ウィットウェル記者とアダム・クラフトン記者が、衝撃的な解任の舞台裏をレポートしています。匿名を条件に複数の関係者から証言を得たという記事によると、新たなディレクターの手腕に疑念を抱いていたサー・ラトクリフが決断に至ったトリガーは、エリック・テン・ハフの解任だったそうです。

不振を理由に契約を打ち切られたオランダ人監督の後任を探す前に、ニューカッスルの強化を推進したクラブ運営のスペシャリストから意見を聞きたかった共同オーナーに対して、説得力がある意見を出せなかったとのこと。彼が提出したターゲットリストには、エディー・ハウ、マルコ・シルヴァ、トーマス・フランクといった現役監督の名前が並んでいたといいます。

唯一フリーだった候補はグレアム・ポッター。「世界最大クラスのクラブを率いる多大な責任に耐えられるカリスマ」を求めていたサー・ラトクリフは、暫定監督という提案に失望し、ルーベン・アモリムの招聘はオマール・ベラダCEOに託されました。スポルティングCPのフェデリコ・バランダス会長と交渉するためにリスボンに渡ったCEOは、スムーズに話をまとめています

テン・ハフの後任候補を評価するためにデータ分析の企業の導入を提案したのも、摩擦が生じた理由でした。「問題の発見は、アウトソーシングの会社に委ねることではなく、アシュワースがやるべき仕事」と突っぱねた共同オーナーは消極的な姿勢に落胆し、体制変更に傾いてしまったようです。

最初のつまずきは、キャリントンに赴任して2日めに家族のイベントという理由で休暇を取り、スタッフを困惑させたこと。それでもその後、うまくやれれば巻き返せていたはずですが…。総力取材を敢行した「テレグラフ」のジェームズ・ダッカー記者、ジェイソン・バート記者、サム・ウォレス記者は、最大の問題は人間関係だったと指摘しています。

「オマール・ベラダCEOとジェイソン・ウィルコックスTDは、マンチェスター・シティで一緒にいた頃からお互いをよく知っており、仕事における絆が強い。彼らは、INEOSのサー・デイヴ・ブレイルスフォードSDや最高経営責任者のジャン=クロード・ブランなど、ラトクリフの顧問たちともうまく連携を取っていた。しかしアシュワースは、チームに溶け込むのに苦労していた」

この悲劇は、優秀な監督や新戦力のスカウティング能力を期待したサー・ラトクリフと、補強ではなくクラブ運営のスペシャリストであるアシュワースのミスマッチに端を発しているようです。「アスレティック」の記者たちによると、キャリントンでともに働いたスタッフたちは、「正直でとても知的。いいリーダーだった」といっているそうです。

2月の「10点満点で10点」は、ガーデニング休暇中に仕事を始めなかったと批判されたり、250人の人員削減について「担当エリアのスリム化が進んでいない」と突っ込まれたりするなかで、目減りし続けたのでしょう。「プレッシャーがきつい」とこぼしながら、組織改革に意欲を見せていたSDにとっては、精一杯あがき続けた5ヵ月だったのかもしれません。

「アスレティック」「テレグラフ」の静かなレポートを読むと、「こうなるしかなかったのだな」とため息をつくのみです。足跡を残せなかったSDには、「おつかれさまでした」とひとこと。コストカットとリストラをフルスロットルで進めている共同オーナーには、「有能な人材を活かせるいい組織を作ってください」と申し上げる次第であります。


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