イングランドのプレミアリーグ(ときどきチャンピオンズリーグ)専門ブログ。マンチェスター・ユナイテッド、アーセナル、リヴァプールetc.

偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

苦しい時代を支えたチームプレーのスペシャリスト…ありがとう、アンデル・エレーラ!

プレミアリーグ12試合10勝2分という快進撃で、29節には4位に食い込んでいたオーレ・グンナー・スールシャールにとって最大の誤算は、彼が負傷でリタイアしたことでしょう。2014年の夏に入団し、的確なポジショニングで攻守のつなぎ役として活躍したアンデル・エレーラ。以前からパリ・サンジェルマンへの移籍が噂されていた29歳のインサイドMFは、マンチェスター・ユナイテッドの公式サイトが行ったインタビューで、この夏にクラブを離れると明言しました。

「5年間、このクラブで毎日を楽しんできたけれど、移籍すると発表しなければならない。次のシーズンは、マンチェスター・ユナイテッドの選手ではない。とてもよくしてくれたファンに伝えたい。多くの愛情とサポートをくれたことを、本当に感謝している。…今日は楽しい日ではないね。簡単な決断ではなかった。でも、人生には、決断しなければならない時があるんだ」

パリの本拠地パルク・デ・プランスで開催されたチャンピオンズリーグを1-3で勝ち、逆転でベスト8進出を果たしたマンチェスター・ユナイテッドは、30節のアーセナル戦で2-0と完敗。ここからのプレミアリーグ8試合を2勝2分4敗と崩れてしまい、来季のCLのチケットを手に入れることはできませんでした。データを見ると、エレーラの存在がいかに大きかったかがよくわかります。スールシャール監督が就任してからのプレミアリーグ20試合で、彼がピッチにいた12試合は9勝3分けと負けておらず、すべて1失点以下。不在の8試合は3勝1分4敗と負け越しており、2点以上獲られた試合が6つもありました。

ポグバ、マティッチ、エレーラの絶妙な3センターが、新監督が率いるチームの躍進を支える原動力でした。ポグバを意図的に上がらせるためにマティッチが背後をカバーするため、右のインサイドハーフには的確な判断力とポジショニングのセンスが求められます。上下動をさぼらず、自分のところで時間をかけないエレーラのプレイが、モウリーニョ時代には空回りすることが多かった右サイドを活性化していました。

ウインガーやストライカーの侵入を粘り強いチェックで抑え、CBの負担を減らすのも彼の役割です。4-0で敗れた35節のエヴァートン戦は、スペイン人MFがいかに重要だったのかを示す一戦でした。マンチェスターから乗り込んだアウェイサポーターを沈黙させた2つのミドルシュートとカウンターは、21番が不在のエリアで危険な選手をフリーにしたために喰らった失点です。エレーラとともに巻き返し、エレーラを失って再び崩れた…苦しい時間ばかりが印象に残る2018-19シーズンは、彼の大切さを際立たせた1年でもありました。

プレミアリーグ5シーズンで132試合12ゴール17アシストというスタッツは、特段目を引くものではありません。カンテのような強固な守備力はなく、キャリックのように鋭い縦パスを通すわけでもなく、ジャカのシュート力もフェルナンジーニョのパスセンスも、ヘンダーソンのロングフィードも持ち合わせていなかったMFは、繊細なポジショニングによって後方からのパスを引き出し、前線の選手がいい体勢でプレイできるようにするのが真骨頂でした。「日曜日は感傷的な日になるのか」と問われたエレーラは、こんな言葉を残してインタビューを締めています。

「このクラブで、ファンのためにプレイできなくなるのはつらい。今までのどの瞬間も、みんなとの関係もスペシャルなものだった。絶対に忘れないよ。オールド・トラフォードで僕の名前が入ったチャントを聞くと、いつも最高の気分になれた。アウェイでも、素晴らしいファンが観に来てくれていた。誇らしく、穏やかな気持ちでクラブを離れることができる。クラブとファンのために、全力を尽くしてきたからね」

サー・アレックス・ファーガソンが去った後、補強で苦しんだクラブが誇れる数少ないキーマン。新契約のサラリーが折り合わず、フリーエージェントで移籍せざるをえなかったという経緯は残念ではありますが、本日は最後の勇姿を目に焼き付け、気持ちよく送り出したいと思っています。「(印象に残っている試合は)ストックホルムでアヤックスと対戦したヨーロッパリーグの決勝かな。あの勝利で、僕たちはシーズンで3つめのトロフィーを獲得した。アンフィールドで勝ったときのフィーリングも忘れられない。ファンにとってはトロフィーのようなものだね」。苦しい時代に、喜びを分かち合えたEL制覇を決して忘れることはないでしょう。

今後のキャリアに数多くの幸せあれ。そしていつの日か、マンチェスターに戻って素晴らしい選手を世に送り出していただければと思います。アンデル・エレーラは、そんな気分にさせられるプレーヤーのひとりでした。5年間、ありがとうございました!

おもしろいと思っていただけた方は、お時間あれば、下のブログランキングバナーをクリックしていただけると大変うれしいです。所要時間は5秒です。何とぞよろしくお願いいたします!


“苦しい時代を支えたチームプレーのスペシャリスト…ありがとう、アンデル・エレーラ!” への3件のフィードバック

  1. プレミアリーグ大好き! より:

    レッズファンですがエレーラはとても賢くサボらない嫌な選手でした。当時、最強だったコンテチェルシー戦でアザールを完封した試合が一番印象に残っています。こういった仕事ができる選手は本当に貴重なのでプレミアリーグで見れなくなるのは寂しいですね。

  2. B より:

    ブルーズからみてもホント良い選手
    アザールが押さえ込まれて死ぬほど鬱陶しかった
    パリでも達者で

  3. ルーニー より:

    今シーズン最悪のニュースですね

プレミアリーグ大好き! へ返信するコメントをキャンセル