あらためて考える「マンチェスター・ユナイテッドはなぜ、弱くなったのか!?」(後篇)
サー・アレックス・ファーガソンのサッカーは、「サイド攻撃を基本とする直線的なサッカー」でしたが、いつの時代にも「外と中をつなぎ、攻めるポイントを決める仕切り役」がいて、この選手は攻め上がりにも長けていました。古くはポール・インス、ロイ・キーン。あまり機能しなかったものの、ファン・セバスチャン・ベロンに担わせたかったのもこの役割でしょう。そして直近では、ポール・スコールズ。そう、今のマンチェスター・ユナイテッドは「スコールズの役割」が弱いのです。
サイドが詰まったら、逆サイドにスイッチする。一瞬フリーになったトップの選手に当てる。裏に走る選手にすかさずパスを通す。サイドからクロスが上がったときは、ワントップとセカンドストライカーの後ろでゴールを狙う「第3の男」となる。時折、中盤を攻め上がってミドルシュートを放つ。現在、プレミアリーグ最高の「スコールズ役」はヤヤ・トゥレでしょう。チェルシーのラミレスとランパード、マティッチは、全員この仕事ができます。アーセナルならアーロン・ラムジー、ジャック・ウィルシャー。先日のエヴァートン戦では、フラミニが後ろを締めてくれるので、いつもよりも明らかにアルテタのポジションが高かったですね。リヴァプールには、もちろんスティーブン・ジェラードがいます。
マンチェスター・ユナイテッドはマイケル・キャリックなのですが、今季、彼のミドルシュートを何回観たでしょうか。監督に「上がるな」といわれているのか、崩しの戦術がないのか。おそらく後者だと思われますが、センターMFの攻撃関与が極端に低いマンチェスター・ユナイテッドは、どちらかのサイドを攻めて詰まっても打開策がないので、やみくもにクロスを上げるか、DFラインまで戻してやり直すかどちらかになります。やり直しになれば、結局逆のサイドで同じことをするので、詰まるという結果は変わりません。外がダメなら中を攻める、2人でダメなら3人めが走る、時間をかけずに一発でサイドを変えるなどの工夫がないから、とりあえずサイドから確度の低いクロスを上げる。モイーズ監督のサッカーは攻撃の戦術に乏しく、「サイド攻撃中心のサッカー」ではなく「消去法でサイド偏重にならざるをえないサッカー」になっているのですね。
昨夏、セスクやチアゴ・アルカンタラを獲ろうとしたのは「次のスコールズを探せ!」ということだと理解していたので、私は大賛成でした。結果、獲得したのはフェライニひとりで、昨秋のプレミアリーグでは全く機能していなかったので、これではダメだと思いました。冬の補強はドタバタとできる範囲でするしかなかったとしても、やはりマタではなくて、センターMFだったと思います。センターMFの攻撃における役割を広げ、バイタルエリアを使う戦術を創っていかない限り、マタと香川真司はサイドから中に入って空回りし、60分でベンチに下がることを繰り返すでしょう。
このほか、「プレミアリーグ上位クラブでいちばん”パス&ゴー”をしない」「DFのカバーリングが弱い」「ミドルシュートを打たれる瞬間、足元に飛び込まずに止まる」など、プレミアリーグのトップ4に比べるとできていないことがいっぱいあり、これらは徹底させない監督の責任だと思いますが、さておき。ここからは、明るい話をしましょう。先日のチャンピオンズリーグで惨敗した後、選手同士でミーティングをしたという報道があり、モイーズ監督も「香川真司の出場機会が増えるだろう」と、風向きの変化を伺わせるコメントを残しました。前篇で、「プレミアリーグのWBA戦で希望が感じられるゴールは3点めだけ」といいましたが、逆にいえば、この3点めに、マンチェスター・ユナイテッドが復活するための希望が詰まっていたと思います。
ラスト15分で香川真司がピッチに入り、それまで選手間の距離が遠くてコンビネーションに乏しかった中盤に、短いパスが通るようになりました。もし、Youtubeかサッカー動画サイトかどこかに「香川真司のタッチ集」がUPされていたら、ぜひ観ていただきたいですね(自分で創りたいくらいですが、そこまでは…)。それまでの時間にはなかった「香川真司とルーニー、マタ、フェライニの中盤での連携」が始まり、香川やルーニーがバイタルエリアで前を向いてボールを持つシーンが増えました。フェライニは、ようやく「タイプの違うスコールズの後継者」への道を歩き始めましたね。前線に効果的なパスを出し、フィニッシュに絡むプレイが目立ってきています。
このサッカーに、うまくウェルベックやヤヌザイ、ファン・ペルシが絡めば、ゴールへの期待値が格段に上がると思います。私は、サー・アレックス・ファーガソンの遺産のような4-4-1-1を変えてもいいと思いますが、補強や戦略変更を話し出すとまた長くなるのでやめておきましょう。今のスタイルに当て込むなら、「ワントップにウェルベック。攻撃的MFに香川真司、マタ、ルーニーを並べて、センターMFに新生フェライニとキャリック」「あるいは、香川真司、マタ、ヤヌザイが前で、センターはルーニーとフェライニ」などいいのではないでしょうか。今のままなら、チームプレイに気がいかないファン・ペルシはベンチに置いたほうがいいと思います。
何はともあれ、「プレミアリーグだけでなく、ぜひ欧州で勝てる新しいサッカーを!」と願っておりますので、モイーズ監督、ぜひお願いします。いや、その前に「来季の監督続投を希望されているのなら、早くチームの戦略を固めてください!」ですね。とはいえ、マンチェスター・ユナイテッドの監督は、リーグ優勝の仕方と欧州での戦い方を知っている方におまかせしたほうがいいと思いますが…。
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更新おつかれさまです。
いつからロビンはあんなに利己的な選手になってしまったのでしょうか…
アーセナルにいた時はチームのアシスト王にもなったこともあったのに。
ストレス的な要素もあるんでしょうが、観てて悲しくなってきますね。
更新お疲れさまです
バイタルを守るのが上手いチェルシーはバイタルを使うのはあまり得意でない、逆にバイタルを使うのが得意なシティやアーセナルはバイタルを守るのはそこまで上手くないっていうのがまたサッカーの面白さであり難しいところでもありますね
現代サッカーではいかにバイタルを使えるか、守れるかが重要なので、その両方が出来るチームが欧州で勝てるチームに核当するって事ですかね
そう考えるとプレミアのチームは片方は得意でも片方が微妙なのでまだ成長の余地がありますね
点をとれなきゃ勝てませんが、僕はいい攻撃はいい守備から生まれるものだと思ってるので主さんの言う通りユナイテッドはまず明確な獲りどころで奪いきれる守備組織の構築が必要だと思います
ファーガソンも後継者を見つけられずに引退したスコールズを呼び戻したくらいですから後継者を獲ってくるよりはサッカーを変える方が手っ取り早いかもですね
せおさん チェルシーさん>
チェルシーさんのおっしゃるとおり、指揮官とサッカースタイルをリフレッシュしたほうが早いでしょうね。ファーガソンのサッカーのクローンを創ろうとして失敗するよりずっとマシだと思います。
ファン・ペルシが利己的になったのは、モイーズ監督にしこりがあるからではないでしょうか。もともとファーガソンに口説かれてきた選手で「話が違うぜ」という感覚もあり、ヴェンゲル時代に比べてチーム戦術がアバウトなこともあってイライラしているようにみえます。推測ですが。
チェルシーさん>
バイタルエリアを攻守ともに使える、という意味では、やはりバイエルン・ミュンヘンはバランスがいいですね。ドルトムントもなかなかなのですが、常識では考えられない運動量に、選手が壊れてしまうのが難点です。
問題点の指摘が具体的でとても面白い記事でした。いつもポチっとクリックしてますよ。
スコールズの代わりをフェライニが担っていくにはこれ以上怪我しないことと周囲の信頼をもう少し得ることが必要な感じがします。体の大きさの割に足下の技術はしっかりしているので、香川のように狭いスペースに飛び込む選手と合わせやすいのかもしれません。個人的にはマタや香川との凸凹コンビで点数を取るシーンを期待したいところです。
古くからのユナイテッドファンを自称する人の中には「ユナイテッドはビッグなクラブだからビッグネームの選手が必要なんだよ」と言って、現有戦力を馬鹿にする人もいるのですが、ボクなんかはユナイテッドって育成に定評があるクラブだと思うんですよね。結果を残しているウェルベックやヤヌザイだけでなく、嫌われ者と化したクレヴァリーなんかももう少し動き方を教えてやればいいのにと思うのですが。makotoさんが指摘するようにチームのお約束が徹底されていないのが気になります。モイーズ監督は選手に遠慮している場合じゃないでしょうに。ファン・ペルシをコントロールできない今の状況を見ると、依然として選手を掌握できていないのがまるわかりで情けない。
Uボマーさん>
「マンチェスター・ユナイテッドは育成に定評があるクラブ」というのはまさにそうですね。ホワイトサイド、マーク・ヒューズ、ベッカム、ギグス、バット、ネビル兄弟、ウェズ・ブラウン、スコールズ、スモーリング、ウェルベックはこのクラブで育った選手。ロイ・キーンやクリスティアーノ・ロナウドも、いい選手でしたが、一流になったのはマンチェスター・ユナイテッドで経験を積んでからです。「一流選手を買ってくるだけのクラブではなく、自ら育てられるクラブ」であることも、私がずっとマンチェスター・ユナイテッドを好きな理由のひとつでもあります。