偏愛的プレミアリーグ見聞録

コロナウイルスの世界的な広がりによるプレミアリーグの日程変更は、憧れのクラブに入団したストライカーにプラスに作用するのでしょうか。「デイリー・メール」が、「マンチェスター・ユナイテッドがオディオン・イガロを1500万ポンド（約19億7000万円）で買い取ろうとしている」と報じています。プレミアリーグでの4試合はいずれも途中出場で、31分ノーゴールと結果を出せていないものの、ヨーロッパリーグとFAカップで4試合4ゴール1アシストと得点力をアピール。先発した試合では、すべてゴールをゲットしている選手には合格のハンコを捺したくなります。

イガロとマンチェスター・ユナイテッドのローン契約は、5月31日で満了です。プレミアリーグとFAカップ、ヨーロッパリーグが予定通り行われ、ナイジェリア代表FWがまずまずの数字しか残せなければ、「子どもの頃から好きだったクラブで、自分の名前が入ったシャツを手に入れた」というおとぎ話は終わっていたでしょう。不慮の中断によって、レッド・デヴィルズはチェルシーと3ポイント差の5位という微妙なポジションで再開を待つことになりました。最初の8試合で4ゴールと早期にゴールを決め、オールド・トラフォードのサポーターの支持を得たイガロには、2019-20シーズンを全うしてCL出場権獲得に貢献してほしいという期待が高まっています。

「マンチェスター・イブニング・ニュース」は、「Odion Ighalo has overtaken Harry Kane for what Manchester United need in a striker（オディオン・イガロは、マンチェスター・ユナイテッドが必要としているストライカーとして、ハリー・ケインを凌駕した）」という刺激的な見出しを立て、30歳になったベテランの必要性を説いています。プレミアリーグ201試合136ゴール20アシスト、1試合あたりのゴール数0.68という驚異的なスタッツを誇示しているスパーズのエースには、ラシュフォードやブルーノ・フェルナンデスとともに次のシーズンを戦うという噂がありました。「マーカス・ラシュフォードは、ゴールスコアリングの責任の重さを非常にうまく処理してきたが、ゴールに背を向けてのプレイには適していない」。イガロの価値を端的に表現した地元メディアの解説を、さらに追いかけてみましょう。

「ハリー・ケインは欧州で最も完全なストライカー」。両足で決めることができ、ヘディングもうまいイングランド代表キャプテンについて、レヴァンドフスキに次ぐ存在とリスペクトするニキル・サグラニ記者は、2つの懸念材料を挙げています。ひとつは、ダニエル・レヴィ会長が要求してくるであろう1億5000万ポンド（約196億円）以上の高額移籍金。もうひとつは、最近増えてきた足首やハムストリングの負傷です。「彼は金額に見合うだろうか？クラブを愛するイガロは低リスクだ」と主張するレポートは、中国から来たニューフェイスのプラスポイントをこう表現しています。

「イガロの到着によって、ラシュフォード、マルシアル、メイソン・グリーンウッドがゴールを決めるうえでの負担が軽減された」「イングランドのキャプテンのクオリティには及ばないが、豊富な経験によってラシュフォード、マルシアル、グリーンウッドを成長させることができ、オプションとしても代役としても機能する。31歳の彼は、2年ぐらいはプレイできるだろう。その間、ユナイテッドは3人の若いストライカーがキャリアを積んで進化するためのアイデアを持つことができる。アーリング・ハーランドのような若いスーパースターを追いかける時間も与えられるだろう」

ハリー・ケインに投資して確実に強化するか、イガロの活用によって若いタレントたちが大ブレイクすると信じるか。前者はいわば大本命の単勝を大量購入、後者は穴馬券で一攫千金プランですが、「現在の4人＋ブルーノ・フェルナンデス＋クリバリ」といった足し算なら悪くないようにも思えます。マンチェスター・ユナイテッドに与えられた検討期間は2ヵ月。その成り行きに注目したいと思います。