イングランドのプレミアリーグ(ときどきチャンピオンズリーグ)専門ブログ。マンチェスター・ユナイテッド、アーセナル、リヴァプールetc.

偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

グッズ販売と移籍金だけで30億円以上!想像以上に大きい、ドルトムントにおける香川真司の経済効果

香川真司がドルトムント、宮市亮がトゥエンテと、数日の間にふたりの日本人選手がプレミアリーグを去ることが決まり、今シーズンのプレミアリーグ所属の日の丸プレイヤーは吉田麻也ひとりになってしまいました。「プレミアリーグで活躍するニッポンの選手が観たい!」というファンには寂しい状況ですが、視点を変えて「欧州で活躍する日本人選手」を見てみると、今季は盛り上がりそうですね。

ドイツ2部の「ゼヒツィヒ」1860ミュンヘンに移籍していた大迫勇也は、ケルンに移籍してブンデスリーガデビューを果たすと、2試合めにはさっそくゴール。不遇だったシュツットガルトを出て、マインツでトップのポジションを目指した岡崎慎司は、昨季の活躍ですっかり最前線に定着し、開幕戦ゴールをゲット。開幕戦といえば、昨季は酷評されていたACミランの10番・本田圭祐は、新監督のフィリッポ・インザーギの信頼が厚く、2014-15シーズンでチーム最初のゴールを決めてからは右FWのレギュラー間違いなしという評価。イタリアの新聞は、彼ららしい手のひら返しで大げさに本田をリスペクトする特集まで組んでいます。

プレミアリーグの吉田麻也は、移籍市場最終日のアルデルヴァイレルト加入でレギュラー争いにさらされているものの、セインツCBとしてここまで3試合フル出場。バーゼルに入った柿谷曜一朗も既に2ゴールで、フランクフルトの乾貴士は復活の兆し。長谷部誠とともに、チームの中心として活躍しています。コルドバのハーフナー・マイクもレギュラー奪取。気になるのは、評価の上がらない清武弘嗣と、完全に出遅れた内田篤人ぐらいでしょうか。そしていよいよ、インターナショナルマッチウィークが開ければ、うまくいかなかったプレミアリーグを離れた香川真司が、ドルトムントの熱狂的なサポーターの前に2年3ヵ月ぶりの勇姿を披露します。

香川真司の帰還は、ドルトムントサポーターはもちろん、ドイツじゅうを巻き込んだトピックスとなっています。ライバルであるバイエルン・ミュンヘンのルンメニゲCEOまで、「ブンデスリーガからプレミアリーグへの移籍はいつもうまくいかない。香川真司も間違いなくそのひとつだ。われわれは、香川が戻ってきたことを歓迎すべきだよ」とコメント。ドルトムントのバツケCEOは、プレミアリーグをはじめ、欧州のビッグクラブへ移籍すると噂のエースMFマルコ・ロイスについて、「香川真司の復帰を見れば、彼も移籍を思いとどまるかもしれない」という趣旨の話をしていました。これだけ話題になる状況なら、ユニフォームも売れるでしょうね。

移籍決定前からフライングで販売されていたシャツは、当初「KAGAWA」の文字しか入っていなかったのですが、9月1日に背番号が「7」に決まると、ホームとアウェイのユニフォームがすぐに揃えられました。初日の売り上げは、何とユニフォームが5000枚で、関連グッズを併せて42万5000ユーロ(約5823万円)なり。移籍金の20分の1を、1日に満たない時間で回収したことになります。

これを知って、あらためて「ドルトムントが享受した香川真司絡みの金銭的なベネフィット」について、ざっくり試算してみました。セレッソに払った移籍金はたったの4000万円、マンチェスター・ユナイテッドに売却した金額は1600万ユーロ。現在のレートに置き換えれば、約21億8000万円となります。今回、プレミアリーグから取り戻した際の移籍金は800万ユーロ(約10億9000万円、安すぎる…)といわれており、これらの差額だけで10億円程度の利益が発生している計算です。ドルトムントは、香川真司の売却益で、チケットが高額のビジネスシート増築をしたといわれているので、経済的な効果という意味では、さらに金額は膨れ上がるでしょう。

さて、直接的な利益は、これだけではありません。香川真司のユニフォームは、ドルトムント移籍初年度で16万枚売れたそうです。ファンショップをのぞくと、ユニフォームの価格は、日本円で8000円~1万円程度。安いほうを買うファンもいると思われますが、わかりやすくここは1万円でいってしまいましょう。売上にすると16億円ですね。一般的なスーツの原価は3000円、アパレル業界においては原価30%は相場ということなので、どちらをとっても1万円のシャツの原価は3000円程度でいけそうです。16万枚を粗利にすると、11億2000万円。これが2年間、同じ水準だったとすれば、22億4000万円。移籍金と香川ブランドだけで、ドルトムントは30億円以上の利益を得ているわけですね。これは、すごい。売上だとしてもなかなかの数字ですが、利益で30億とは…。

ちなみに、ドルトムントは、今季の香川真司のユニフォーム売り上げ見込みを「初年度の16万枚はクリアしそう」と見ているそうです。先ほど、「移籍金が安すぎる」といったのはここで、ドルトムントが1年足らずのグッズ販売で回収できる金額なら、マンチェスター・ユナイテッドがもっと高値で指しても、OKをもらえたのではないかと思います。こんな数字をみても、どちらが商売上手かは明白ですね。

中田英寿が、ユヴェントスとの天王山の一戦で2本のミドルシュートをゴールにつなげ、アウェイでドローに持ち込んだASローマをセリエA優勝に導いてから、10年以上経ってもローマのファンは中田英寿への感謝の気持ちを忘れていないそうです。控え選手のたった1試合の活躍ですら、これだけの影響があるのですから、バイエルン・ミュンヘンに負けなかった2年間を輝き続けた香川真司は、このクラブにとってはヒーローなのですね。日本企業がスポンサーに入るかどうかなどは二の次で、クラブが純粋に、戦力としても経済的にも価値が高いと評価する選手が、われわれの母国から出てきたというのはうれしいものです。ましてやドルトムントは、1年4ヵ月前にチャンピオンズリーグのファイナリストだった、欧州トップクラスのクラブなのですから。(香川真司 写真著作者/Axel Schwenke)

おもしろいと思っていただけた方は、お時間あれば、下のブログランキングバナーをクリックしていただけると大変うれしいです。所要時間は5秒です。何とぞよろしくお願いいたします!


コメントを残す