偏愛的プレミアリーグ見聞録

アーセナルの公式サイトが、パブロ・マリとセドリク・ソアレスの完全移籍を正式に発表。返す刀で、スパーズの長身CBジョナサン・ディンゼイをU-23のチームに加えたとアナウンスしています。近日中に、リールのCBガブリエウ・マガリャンイスの写真も同じ場所に載ることになるでしょう。フリーエージェントでウィリアンを手に入れたクラブは、ここまで800万ポンド（約11億円）しか使っていないのですが、チェルシーやマンチェスター・シティと並んで夏の主役の一角を占めています。

コロナウイルスによるパンデミックに端を発した異例づくめの5ヵ月、激動の夏。アルテタ監督の感染がトリガーだったかのように、あまりにも多くの事件が起こりました。変則開催のプレミアリーグ2019-20シーズンは屈辱の8位フィニッシュ、しかし得意のFAカップを制覇してヨーロッパリーグ出場権獲得。メスト・エジルの謎の欠場と、マテオ・グエンドゥジの反逆。シーズンが終わると、プレミアリーグ22ゴールの絶対的エース、ピエール＝エメリク・オーバメヤンの契約にまつわるゴシップが現地メディアを賑わし、ラカゼットの去就も話題になりました。

8月7日には、スタッフ55人の解雇を発表。国際スカウトチーフのフランシス・カギガオ、英国担当スカウトのピーター・クラーク、ブライアン・マクダーモットといった重要な人材の離脱は、朝日新聞も取り上げる衝撃的なニュースでした。その1週間後、フットボール部門の責任者だったラウル・サンジェイが電撃辞任。ヴィナイ・ヴェンカテシャムMDが全体を統括する新体制が発表された後、22日にアシスタントコーチのフレディ・リュングベリが退団を発表しました。

メディアのTOPページから、アーセナルの名前が消える日はないといっていいほどの変化の季節。彼らの夏は、まだ終わっていません。次のテーマは、ダニ・セバージョスのローン移籍実現か、オーバメヤンの契約延長か。チアゴ・アルカンタラは、トーマス・パーティーを獲得できなかった時のセカンドチョイスなのでしょう。リヴァプールでもバルサでもなく、バイエルンでチャンピオンズリーグを制覇した直後はコメントを控えたフィリペ・コウチーニョも、プレミアリーグ復帰の希望を捨てていないと伝えられています。

緊縮財政のクラブは、「ひとり入れればひとり出す」が基本です。ガブリエウ・マガリャンイスを獲り損ねたナポリは、次善策としてパパスタソプーロスかムスタフィの獲得を検討しているといわれており、セドリク・ソアレスに押し出された感があるメートランド＝ナイルズは「4年契約の2000万ポンドをベースに、ウルヴスと交渉中」と報じられています。トーマス・パーティーを手に入れた際に出ていくのはラカゼットか、ルーカス・トレイラか。エミリアーノ・マルティネスは残ってくれるのか…。

最後に、ビッグネーム獲得の噂を紹介して、アーセナルの激動の夏を振り返る本稿を締めさせていただきます。アルテタ監督が、フレディ・リュングベリの後釜としてデニス・ベルカンプの招聘を希望しているという話は、「ザ・サン」の作文かと思いきや、「メトロ」「ミラー」も報じています。3年前までアヤックスのアシスタントマネージャーを務めていた51歳のレジェンドは、エールステ・ディヴィジ（オランダ2部）のアルメレ・シティでボランティアとして指導した後、どこのクラブにも所属していません。ギリシャやロシアに遠征する際も陸路を選ぶ「ノン・フライング・ダッチマン」は、ガナーズに戻ってくるのでしょうか。先月掲載された「FourFourTwo」の独占インタビューをチェックしてみると…。

「適切なタイミングで、どこかに戻って自分の役割を果たしたい」
「もちろん、アーセナルは理想的だ。私はあそこで11年間、気持ちよく過ごした」
「ミケル・アルテタのアーセナルでの振る舞いにとても興味がある。彼の哲学によって、変わる兆しが感じられるからね」
「しかし、私の未来は誰も知らない。サッカー界には、ある日起こったことが別の日には変わっており、同じ日などない」

そうですよね。アーセナルが短期間でこれほど変わるなんて、誰も想像できなかった…。（デニス・ベルカンプ　写真著作者/Kieran Clarke）