偏愛的プレミアリーグ見聞録

2013年8月30日に21歳でトッテナムに入団し、翌シーズンはプレミアリーグ38試合10ゴール、2015-16シーズンは6ゴール13アシスト。鋭いスルーパスと相手選手をあざ笑うかのようなプレースキックに魅せられ、いつしか天才と呼ぶようになっていました。2016-17シーズンに、公式戦48試合12ゴール23アシストという出色のスタッツを残してチームをプレミアリーグ2位に導くと、次のシーズンのプレミアリーグで2ケタゴール＆アシストを記録。クリスティアン・エリクセンは、ポチェッティーノ監督率いるスパーズの躍進のキーマンでした。

7シーズンめに入る前に、ノースロンドンを離れると決断したのは、キャリアのピークに差し掛かっていると感じたからか、2018-19シーズンのCL準優勝が区切りとなったからか。「何か新しいことがしたかった」と語ったプレーメイカーは、夏の移籍は叶わなかったものの、2020年1月に移籍金1800万ポンド（約24億5000万円）でインテルに入団しました。当時はマンチェスター・ユナイテッドに加わるという噂もあり、天才に惚れ込んでいた私としては、「何とかプレミアリーグに残ってくれないか…」と祈るような気持ちで日々のゴシップをむさぼったものでした。

ひと足先にミラノに活躍の場を求めたロメウ・ルカクが大暴れしていると聞いており、エリクセンを引き入れたインテルはさらに強くなるのだろうなと思いました。ところが…！プレミアリーグで類まれなる才能を見せつけたデンマーク代表のエースは、早くも放出候補となっているようです。セリエA17試合で1ゴール2アシスト、ヨーロッパリーグとコッパイタリアを足しても4ゴール3アシスト。「ガゼッタ・デッロ・スポルト」は、魔法のタッチは消えてしまったと嘆き、「カルチョメルカート」は、どうしてもエンゴロ・カンテがほしいコンテ監督がエリクセンを差し出そうとしていると報じています。

天才に、何が起こったのでしょうか。今、思えば、ポチェッティーノ監督が解任となるほどの混乱のなかで、プレミアリーグ2019-20シーズンの前半戦を20試合2ゴール2アシストという彼らしくない出来で終えたのは、不振の予兆だったのかもしれません。「イングランドでは、契約の残り期間が短くなると黒い羊になる。チームを去らなければならなくなるんだ」。インテルに入団した直後に「BBC」のインタビューを受けて、「退団したいと明言してからは精神的に厳しかった」「悪者にされ、多くの非難を浴び、あることないことを散々書かれた」と吐露していた28歳のMFは、気持ちの整理がつかないままでカルチャーが異なるリーグに飛び込んでしまったのでしょう。

エリクセンのゴシップを聞くと、反射的に「それならマンチェスター・ユナイテッドへ！」といいたくなるのですが、ドニー・ファン・デ・ベークという「次世代のエリクセン候補」を得た今、さすがに本家も押さえてくれとはいえません。いやー、やっぱりプレミアリーグで観たいですね。退団の経緯を考えると、スパーズ出戻りは厳しそうなので、あるとすれば「コウチーニョを獲りたがっていたノースロンドンのライバル」「中盤の得点力が課題のマージーサイド」でしょうか。アルテタ監督、コウチーニョのレンタル料より安く収まりそうです。いかがでしょうか。クロップ監督、デヤン・ロブレンの移籍金プラスアルファで獲れるみたいですが、どうでしょう？

「ダヴィド・シルヴァの後継者」という言葉が頭をよぎったのですが、エリクセンマニアとしては、「それだけは勘弁してください」と声を大にしていわなければなりません。お隣のライバルのシャツに袖を通された日には、「さすがエリクセン！」と絶叫できなくなります。デブライネとエリクセンを揃えたら、即FFP違反ということでいいのではないでしょうか。「ファンタジスタ×2＝ペナルティでFFP」でお願いします。

アンフィールドで開催されるプレミアリーグ3節のリヴァプールVSアーセナルを見ながら「ナビ・ケイタより彼のほうが」「アーノルドがいないときもFKで決められるやん」「オーバメヤンのゴールは絶対増えるはず」などとつぶやいてしまいそうです。もうしばらく、プレミアリーグ226試合51ゴール62アシストの魔術師があそこに加わったら…という妄想を愉しみたいと思います。エリクセンが2000万ポンド以下なら、絶対買いですよね⁉